「宇田川源流」 ドイツとフランスの考え方にズレが生じてきた今後のEUは?

「宇田川源流」 ドイツとフランスの考え方にズレが生じてきた今後のEUは?

 最近イギリスのブレグジットがかなり話題になっている。実際に、ブレグジットをめぐって、10月31日の期限を延期し、そのうえで、12月12日に総選挙を行うという状況になっている。イギリスのこのような混乱に関しては、すでに、先月までの「有料メルマガ」に書いた。「宇田川敬介の日本の裏側の見えない世界の話」(https://www.mag2.com/m/0001647155.html)では、バックナンバーも読めるように設定してあるので、詳細はそちらを参照していただきたい。いずれにせよ、その内容によってイギリスが様々に混乱していることはよくわかるし、そのような内容を見てイギリス王室は今後どのように動くのかということがかなり興味があるところである。

さて、欧州連合(EU)の話を見てみよう。実際に、ブレグジットといっているもののイギリスだけの問題ではなく、その離脱する相手であるEUが存在するのであるそれに対応するEU上層部の指導力不足であるといえる。まさにそのことを考えれば、EUそのものの「失政」も原因の一つであるが、残念ながら社会主義的な思想のの持ち主は、そのようなことに対する反省は存在しない。社会主義思想は「権利論」を中心に物事を構成し、そのうえで、「責任転嫁」という行為を行うことによって自己の正当化を図るということが常套化している。この場合、ドイツのメルケル首相も、また、フランスのオランド前大統領・マクロン大統領もいずれもこの社会主義思想(程度の差はあるが)にかぶれている人々であり、基本的には「自国の権利論」と「他国への責任転嫁」ということが基本に物事が構成されている。

EUにおける許認可などは、当然にドイツとフランスに集中し、そのことから企業などのすべてのインフラがドイツとフランスに一極集中することになる。シェンゲン協定から、人災も自由に国境を越えられることから、当然に優秀な人災もドイツとフランスに集中することになり、そのために、他の国が完全に「過疎化」「富の収奪による枯草化」してゆくことになるのである。

それでも、今まではイギリスのような「刈り取り場」があったので、フランスとドイツが同じような歩調をとっていたが、イギリスのブレグジットの話が進むようになると、当然に、フランスとドイツというEUの指導的立場の先進国の二つの不協和音が生じることになるのである。

NATO巡り独仏のズレあらわに

 【パリ=三井美奈】フランスのマクロン大統領は7日発売の英誌エコノミストで、「われわれは北大西洋条約機構(NATO)の脳死を経験している」と述べ、欧州独自の安全保障の必要性を訴えた。ドイツのメルケル首相は即座に反論。来月3~4日にロンドンで予定されるNATO首脳会議を前に、独仏のズレがあらわになった。

 マクロン氏は、NATOを主導する米国について「われわれ(欧州)に背を向けた」と発言。「米国の対応を考慮し、NATOの現状を再評価すべきだ」とも述べた。米中二極化が進行し、トルコやシリアでは強権政治が続く中、「欧州は例外的に脆弱(ぜいじゃく)な存在になった」と指摘し、欧州は自律的な軍事力を持つべきだと強調した。

 マクロン氏の発言について、メルケル氏は7日、ベルリンで行った記者会見で「過激な言葉の表現だ。私はそう見ない」と距離を置いた。その上で、「NATOは現在、将来においてもわれわれの安全保障の礎石」だと強調した。訪独中のポンペオ米国務長官も同日、「NATOは史上、最も重要な同盟の一つ」だと述べた。NATOは今年、創設70年の節目にあたる。

2019年11月08日 19時24分 産経新聞

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12274-460874/

 EUの基本姿勢は、旧冷戦時代に「アメリカ・ソ連という二大大国時代に小国では相手にならないので結束して対応する」ということが基本にあった。その形式は別にして、その内容はまずは資源の輸入、次に経済連携、そして現在のEUのような状況になっていったのである。

しかし、いつの間にかEUはそのような目標を忘れてしまい、なぜかEU内の問題が続出するようになる。主にそれが主導権争いであることは言うまでもあるまい。基本的に「国家という枠組みを超えて連合する」ということは、その現象だけを考えれば「世界共産主義革命」と全く変わらないわけであり、国家を否定して共産主義・社会主義とは異なるということの性格付けが今一つできていないということになるのである。

そして、その「共産主義との違い」に関して言えば、当然に、「NATO(北太平洋条約機構)の取り扱い」と「アメリカ・ロシアとの関係性」ということが大きな問題になるということになる。そして、NATOもアメリカも、そこの根源は同じになるということになるのではないか。そして、もう一つが「安全保障」の考え方である。

国家を否定するのであれば、当然に、「各国の国軍」というのは存在する必要がなく「EU軍」のみが存在するという形になる。当然にEUが一つの塊となるのであれば、その国内における軍隊の対立は存在しない。EUの秩序を乱すものは「軍事」ではなく「警察」で対処すべきものであるということになる。軍が出るのは、治安出動以外にはなくなるのである。逆に言えば、例えばドイツの人が、EU軍になって、なぜかハンガリーやスペインの危機を救うためにEU軍として、命を危険にさらさなければならない。もちろん、その軍隊の動きは、EUとしての動きになるので、それが自然災害でも同じことになる。また、ドイツ人のEU軍の人が、ドイツの国内の内乱に治安出動をしたら、同じドイツ人と多々わかなければならなくなるのである。

各国軍ということになれば、そのような「軍人の精神状態の矛盾」は出て来る可能性が少ないことになる。そのように考えれば、EUは「各国の軍隊を残すのか、あるいはEUとしてまとめた軍隊一つにするのか」ということになってくる。

その軍隊に関する考え方は、「NATO」つまり「東ヨーロッパの入っていない軍事同盟とアメリカとの関係」にそのまま反映されることになるのである。

この状態に対してフランスは危惧を示し「脳死状態」というような感覚が出てきているのであるが、ドイツは「安全保障の礎石」という表現をしているのである。もちろんドイツの場合は、そもそもNATOに旧東ドイツが入っているのかというようなことも議題になるであろう。

さて、そもそも「根本的な問題」があり、「国家連合か?連合国家か?」ということが全くコンセンサスが撮れていない。そのようなことは「棚上げ」にしてきたツケがこのように出てきてしまっているのではないか。

当然にこのようなズレはすべてのところに出てきて、様々な不協和音を生むことになる。その不協和音をどのようにするのか。そしてその時にブレグジットはどうなるのか。イギリスばかりではないという感じが日本にうまく伝われば面白いのかもしれない。

宇田川源流

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