「宇田川源流」 全く見えない米中貿易戦争の終焉と中国の焦り

「宇田川源流」 全く見えない米中貿易戦争の終焉と中国の焦り

 米中貿易戦争がなかなか面白いことになっている。

簡単に解説すれば、香港のデモと、中東での異変(現在有料メルマガで説明しているが、バグダディの死から中国がISに狙われるようになった、またパキスタンやスリランカなどが中国から徐々に離れている)などから、かなりさまざまな焦りが出てきている。

実際に、中国共産党という組織は、独裁組織である。もちろん共産党の中で様々な派閥があるが、しかし、共産党が中華人民共和国の中で独裁政治を行っていることには変わりなはい。共産党内部の派閥を言う人は「国家」と「政党」を同一視している政治のわからない人であるといえる。一党独裁でなおかつ批判勢力が存在しない場合、当然に上下関係しかない序列ができる。つまり、上部の方の人が決定したことが間違いであった場合、当然にそれに対する批判が出てきて、上下関係の一つの内容の最下層に叩き落されることになる。共産党において、あの毛沢東でさえ、大躍進政策に失敗された時は一度失脚している。その後の文化大革命を「文化といっているが政治的な革命」とみれば、革命以外に失脚した人が復活する道がないのが中国なのである。

さて、今回2014年に共産党は一帯一路を標榜した。また経済成長率8%の維持を習近平は就任当初は言っていたのである。しかし、経済成長率は現在6%前後になっている状態だ。これで一帯一路が崩壊すれば、習近平は失脚する可能性が一気に高まることになる。

その状況の時に、香港の民主化デモと中東での異変、それはそのまま一帯一路の崩壊を意味する言葉であるが、一方で、それは多額な金銭が必要なものであり、AIIBも上手くゆかず、米中貿易戦争で経済的に締め付けられていては、手も足も出ないということになる。

もともと、「アメリカに対抗する経済枠組みである一帯一路」を「アメリカとの貿易とアメリカから盗んだ知的財産権で生み出した技術で実現する」というモデル自体がおかしいのであるが、まあ、そのへんの矛盾に気が付かないところが、まさに中国共産党の信じられない稚拙な違和感である。

そのような状況であるから、中国はアメリカとの貿易戦争を何とかしようとすることになる。その動きがなかなか面白い。


トランプ氏が中国発表を否定

 【ワシントン時事】トランプ米大統領は8日、米中両国が互いの輸入品に課している追加関税を段階的に撤回することで一致したとする中国政府の見解に対し、現時点で「何も合意していない」と否定した。貿易協議の「第1段階」合意をめぐる認識の違いが表面化した形で、年内の実現を目指す首脳会談を米国で開催したい意向を改めて示した。ホワイトハウスで記者団に語った。

 トランプ氏は、既に導入した対中関税全ての撤回には応じないとする自身の考えを、中国は理解していると主張。「中国はいくらかの関税の引き下げを望んでいる。完全撤廃ではない」と述べたが、部分的な撤回を受け入れるかは明らかにしなかった。安易な関税取り消しに反対する米政権関係者や議会に配慮したためとみられる。

 中国商務省の高峰報道官は7日の記者会見で「協議の進展に合わせ、追加関税を段階的に撤回することに合意した」と述べていた。トランプ氏が否定したことを受け、中国共産党機関紙・人民日報系の環球時報編集長はツイッターに「確かなことは、関税を撤回しないなら第1段階の合意はないということだ」と投稿、米国をけん制した。 【時事通信社】

2019年11月09日 08時55分 時事通信

https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12145-461263/


米中署名 来月にずれ込みも

2019年11月07日 08時54分 産経新聞

 【ワシントン=塩原永久】米中両国による貿易協議で、11月中旬を目指した部分合意の署名が、12月に遅れる可能性が出てきた。複数の欧米メディアによると、署名式を兼ねた両国首脳の会談場所選定や、米国の対中制裁関税の扱いで交渉が難航しているためだ。会談場所に挙がった米アイオワ州が候補地から外れ、ロンドンをはじめとする欧州やアジアが、新たな選択肢に浮上しているという。

 ロイター通信は米政府高官の話をもとに、トランプ米大統領が12月上旬の欧州訪問に際して、ロンドンで中国の習近平国家主席と会談する可能性があると伝えた。欧州ではスウェーデンやスイスも名前が挙がっているという。

 トランプ氏が言及した米中西部アイオワ州は選択肢から外れたもようだ。ただアジアを含む多数の候補地も検討されているという。

 米中両国は10月、「第1段階」の貿易協定に暫定合意。合意文書を詰め、今月中旬にチリで開催予定だったアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて署名し、正式合意する段取りを描いていた。

 米中協議では、中国が米国に求めている制裁関税の扱いが焦点となっている。中国はまず、米国が「第4弾」制裁の一部として12月に発動予定の中国産品1600億ドル(約17兆円)分の見送りを要求。さらに9月に発動済みの第4弾の一部1120億ドル分や、1~3弾の計2500億ドル分についても撤廃を迫っている。

 トランプ政権は制裁関税について、中国に知的財産権保護などの合意を順守させる手段として、維持すべきだとの立場だ。中国は反発しており、署名に向けた交渉が遅れる大きな要因になっている。中国による米農産品の大量購入や金融サービスの市場開放なども話し合われている。

2019年11月07日 08時54分 産経新聞

https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12274-458920/


 上記のように、「アメリカに対抗する経済枠組みである一帯一路」を「アメリカとの貿易とアメリカから盗んだ知的財産権で生み出した技術で実現する」というモデルである。つまり、アメリカに依存してアメリカに対抗するという矛盾がその中に存在している。しかし、矛盾しながらもそれができると思っているのである。

ではなぜ中国共産党の人々は、そのような矛盾した外交ができると思っているのであろうか。それはアメリカの政治がトランプという「異常者」一人がかき回していて、民主党政権になれば、数名を買収しアメリカ国家を裏切らせることで、可能となると判断しているのである。またその動きをするために、アメリカのマスコミをうごかせばなんとかなると思っているのである。

基本的に民主主義の最も大きな弱点は「有権者が無知である」ということである。もちろん優秀ではないというのではなく、有権者の多くは日々の生活がありまた趣味があり、そして仕事がある中で、その方に知識や興味が取られてしまい、そのために、政治や外交に注意を割く必要がなく深く考える人が少ないということになる。

まさに、その状況の時に、マスコミ数人を買収し、サブリミナル的に外交に関する内容や国家の印象を操作すれば、実際のところ、民衆の多くをだますことができ、当然に、その民衆の多くの指示を欲しい「政権与党ではない方」は、その操作された民意の獲得のために動くことになってしまう。共産党のような独裁では少しの愛国者がいればよく、そこがブレなければ国が傾くことはないが、民主主義の場合はマスコミとそれに呼応する政治家が少数動けばよいだけなのである。

さて、そのことがよくわかっているトランプ大統領は、どうしたか。そもそもトランプ大統領は何故そんなことをわかっているのであろうか。当然に、不動産事業などをやっているということから中国人の手口やその労働組合などの「マス(集団)」の使い方を熟知しているのであるから、知っていて当然といえる。そのトランプ大統領は、「官僚に前向きに発表させ」たうえで、中国のこれらの民主主義工作を少し手を抜かせ、そのうえで、自らひっくり返して「中国との途中までの合意を反故にする」という方法を使う。中国は自分たちはこれをよく行うのであるが、自分たちがやられる側になるとかなり弱い。これは私の中国の経験でもよくわかっている。紙で書いたことしか守らない彼らは、口約束をしたのちに、その口約束を反故にすると、かなり慌てることになる。そして慌てたのちに、力で何とかしようとする。しかし、その力が全く通用しない状況の場合、当然に、彼らは路線を変更せざるを得なくなるということになるのである。

さて、トランプはたぶんビジネスの中でそのことをよく知っていると思う。そのうえで、その内容を使い、中国を翻弄しているということになるのではないか。同時に、そのように手を緩めさせて、また慌てて工作をするということから、中国の動揺を誘い、工作の端緒をつかみ、同時に民主党の来年の大統領選挙候補者の戦争に使うということになるのではないか。

現在の票の読みから考えるとそのような選挙になる。つまり、米中貿易戦争も来年の大統領選挙の一つであり民主党の印象工作の一つであるといえるのである。

宇田川源流

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