「宇田川源流」 5月病という病と「人材育成」について私見

「宇田川源流」 5月病という病と「人材育成」について私見

 ニュース解説という意味ではなく、「宇田川源流」として、現代の日本人ということを考えてみたい。

ところで、「五月病」ということに経験があるだろうか。まずはその「五月病」の定義を見てみよう。ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説を出してみる。

五月病

新しい環境に適応できず,焦り,ストレスを感じ,気持ちが落ち込むうつ状態。医学用語ではなく通称。もとは大学新入生が5月の連休明け頃から急激に無気力,無関心になることから名づけられたが,時期は5月にかぎらず,また中学・高校生や新入社員にもみられる。おもな原因として,受験など極度の緊張からの解放,新しい学校・職場の実態に対する失望,新たな目標の喪失などがあげられる。

<ブリタニカ国際大百科より抜粋>

さて、ここにあるように「五月病」というのは「自分の実力」や「自分の考えていた理想の姿」と「現実の自分の置かれた客観的評価」という事のあまりの落差に、自分の心がそれに対応できなくなってしまって「うつ病」になることを言うとある。

さてこの現象。読売新聞の2002年5月13日東京朝刊「様変わりする五月病 昔は学生今は新社員」という記事によると「五月病という言葉が最初に使われたのは一九六八年ごろだ。」とある。まあ、それ以前から一部で言われていたのではないかと思うが、実際に、ネットなどがない時代であり、その確認は難しい。当時は、今と比べ物にならないくらいの「大学受験戦争」であり、大学進学率もかなり低かった。「大学は出たけれど」などと、大学で多にも関わらず就職できない人の話などがあった。その受験勉強から解放された虚脱感を「五月病」と表現していたのであるが、それがいつの間にか社会人の言葉になっているのである。

それだけ「自分で自分のことを見えていない社会人が増えた」ということになる。

5月病が遅れて来る「6月病」になる新入社員が増加? 「人材育成」に課題抱える会社も6割

 メガネブランド「Zoff」を運営するインターメスティックは5月9日、「新入社員の6月病に関するアンケート」の結果を発表した。調査は4月上旬に実施。新卒採用を行っている企業の人事担当者400人から回答を得た。

 過去3年間で、入社後3か月以内に辞める新入社員がいたという企業は51.3%にのぼった。さらに、51.2%が「入社後3か月以内に辞める新卒の新入社員は近年増加傾向にある」と回答した。

   「地元に戻りたい人やゆっくり仕事をしたい人が増えている」という声も

 「直近での新卒新入社員の退職割合」を聞くと、最も多かったのは「1割未満」(71.1%)、次いで「約2割」(15.6%)、「約3割」(10.2%)、「約5割」(1.5%)と続く。

「人事担当者から見て、新卒の新入社員の精神状態が最も不安定になる時期」については、「5月」(42.8%)が最多で、以降、「6月」(38.8%)、「4月」(12.3%)だった。

 「不安定になる新卒の新入社員の状態」については、同率1位で「会社に来なくなる」「周囲とのコミュニケーションをとらなくなる」(46.5%)、次いで、「物事に集中できなくなる」(21.3%)「睡眠不足による不調」(15.8%)という結果だった。

 「最近は、5月病の症状が6月に現れる6月病が増えていると言われているが、実際に最近の新卒の新入社員を見ていてそう思う」と46.8%が回答していた。また、「新卒社員の業務中の1日あたりの平均パソコン利用時間」は、「3~5時間未満」(31%)が最多で、「8時間以上」は5.5%だった。学生から社会人になり、パソコンの利用時間が増えていそうではある。

 「会社が抱えている人事の課題」を聞くと、1位は「人材育成」(63.5%)、2位は「新卒採用」(54.8%)、3位は「中途採用」(51.5%)だった。

 「過去と比べて、新卒新入社員の入社から3か月以内に見られる傾向・変化」については、「対応力が高い」という意見がある一方、「地元に戻りたい人やゆっくり仕事をしたい人が増えている」、「SNSによる会社・上司への不満や誹謗中傷の投稿」という意見が挙がり、SNSへの依存も問題視されている。

 「不調を訴える新卒の新入社員への対応・対策」を聞くと、「休養させる」「専門家(産業医・カウンセラーなど)への相談」、「メンター制度の導入」といった回答もある中、「媚びない・引き留めない」という意見も挙がった。

2019年05月10日 17時17分 キャリコネ

https://news.nifty.com/article/economy/business/12117-11136/

 ちょうど「五月病」という言葉は流行していたころの学生たちは、その後「新人類」と呼ばれるようになる。新人類とは「従来の社会人とは全く違う感性によって生きている人々」ということになる。

しかし、その後「キレる若者」「ゆとり世代」「悟り世代」というように徐々に変わってゆき、今では「新人類」といわれた人々も現代の若者を理解できないというような状況になってきている。実際に、まるでニュータウンがいつの間にかオールドタウンになってしまうように、新人類が徐々に大人になり、支持を出す側になり、自分たちと異なった個性を持つ若者にどのように対処してよいかわからなくなってきてしまっているのである。

この「新人類」と呼ばれる人々から、現代の「六月病世代」までの間、何が変わったのかといえば、単純に教育制度と人々の権利意識、そして、親が家にいるかいないかの差である。ちょうど「新人類」は私の世代であったが、私の世代はまだ「両親共働き」というのは「かぎっ子」といわれ、自宅の鍵を持って学校に通学し、一人で家の中に入って過ごすという。現代の家庭の多くはそのような感じなのであるが、まだ少数であったのでそのような言い方がされていた。

しかし、徐々に「かぎっ子」が普通になり、というか両親共働きが普通になって、「子供」は「誰かと比較して自分を客観的に見ることができない」という状態になってしまっている。単純に、耳学問とヴァーチャルなネット社会での実職で、実際に何もやっていない状態での自分の頭の中の実力であり、実際の社会の挫折などを経験していないので、「社会」に出てから「挫折」というか「自分の実力を知らされる」ということになる。そのことが自分の思い描いていた理想とは異なるのはある程度当然のことだ。毎年入ってくる新入社員がトップと同じなどというような話は絶対にない。しかし、多くの新入社員が社長や部長や管理職というような感覚でいても、下の人の経験をしていない人が人を使えるはずがないのである。

 そのような教育がなく、なおかつ「傷つくことを知らない」世代が、現実に直面すると「五月病」になる。

「最近は、5月病の症状が6月に現れる6月病が増えていると言われているが、実際に最近の新卒の新入社員を見ていてそう思う」と46.8%が回答していた<上記より抜粋>

これをどのように見るのか。単純に「我慢する力が増えた」と喜ぶのは早計であり、実際は「気づくのが遅くなった」ということかもしれないし「誰かが助けてくれるという依存心が強くて待っていた」というようなことかもしれない。「退職通知代行」などというような職業もあるらしく、結局「誰かにやってもらう」という依存心の塊のようになってしまっているのではないか。

私自身、これは「権利意識と義務や責任感のバランスの欠如」であると考えている。実際に今の若者と話していると「何がそんなに偉いのか」と感じる人が少なくない。「あいつはできる」と大人に言われたとして、そもそも「評価されている立場でしかない」ということに気づけないような状況のようである。これは核家族化、そして両親共働きの一人っ子で、「核個人化」が進んでしまい、自分を客観的に見ることができないし、他人とのコミュニケーション能力が少なくなってしまっている。同時に、偏差値教育と、権利教育ばかりで責任感や義務感を教えない学校教育の最大の問題が表れていると考える。

多くのマスコミや社会は「この状態を受け入れろ」「時代は変わった」というが、本当にこれでよいのであろうか。

宇田川源流

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