「宇田川源流的ニュース解説」 米中貿易戦争の行く末はどうなるのか?

「宇田川源流的ニュース解説」 米中貿易戦争の行く末はどうなるのか?

 アメリカと中国の貿易戦争に関する内容がかなり悪化している。あまり日本では報道されなかったが、今まで何回も繰り返し、中国との間において担当者会議や閣僚級会議が繰り返されてきた。もちろん、貿易戦争いわゆる両国の関税問題に関してである。

しかし、多くの日本人が知っているように、中国という国家は、交渉の最中に前回の合意を全く無視して自分勝手な条件を突き付けてくる。基本的に、前提条件を毎回崩してくる身勝手な交渉しかしないのであって、交渉の最中はいらいらすることが少なくない。まあ、そのような交渉を許してきた、いままでに日本を含む多くの国が最も良くないのであるが、実際にアメリカは今回そのような交渉を許さないというような状況にしている。本来交渉というのは、お互いが歩み寄り、あての譲歩を引き出して合意をするものであるが、中国人のように、相手の情報を引き出すためにその場で適当な条件を出し、そのうえで、相手の合意を取った後で自分の条件を何らかの理由をつけて反故にするのである。

だいたいよく使うのが「自分には決定の権限がなく、本国に戻ったら許可が出なかった」などというもの。そのような話を真に受けていては、交渉などはうまくゆかない。

アメリカは、脅しながら強引に相手の譲歩を迫るスタイル。ある意味で、アウトローの人々が強引に押し売りをしているような感じだ。これに対して中国人は、その場限りの嘘をついて相手をだますというやり方。ある意味で詐欺師の集団で、何か文句を言うと開き直る。

押し売りと詐欺師の交渉だからうまくゆくはずがない。

その結果、アメリカは5月10日に一部の関税を25%に引き上げた。トランプ大統領は「中国が交渉の前提を台無しにした」ということを言っているが、中国と仕事をしたり、交渉をしたことがある人ならば、何が起きたか容易に想像がつくことではないだろうか。

米中「関税戦争」は世界経済に重し 米企業も負担増、消費に冷や水

 【ワシントン=塩原永久】米国が10日に中国に対する制裁関税を強化し、米中両国による貿易摩擦の解消は遠のいた。米中は貿易協議を続ける方針だが、両国の対立がさらに激化すれば、企業が投資を手控えたり、輸入品の価格上昇で消費が減退して、世界経済の重しになる恐れがある。

 トランプ米大統領は9日、米政府が中国からの全輸入品に25%の追加関税を課す準備に入ったと表明。米国はすでに計2500億ドル(約27兆円)分の中国輸入品に関税を上乗せしているが、輸入品すべてに高関税が適用されれば景気への影響も大きくなる。

 国際通貨基金(IMF)の試算では、米国と中国が互いに相手国から輸入する物品すべてに25%の追加関税を課した場合、米国の実質国内総生産(GDP)を0・6%下押しし、中国のGDPが1・5%下がる。

 IMFは世界全体のGDPを0・2%引き下げると予測。企業が設備投資に慎重になるといった悪影響が広がれば、さらに景気減速を招く恐れもある。

 トランプ政権下で発動された追加関税は、米国の企業や消費者にも重くのしかかる。米プリンストン大学などの調査によると、商品を輸入する米事業者に毎月30億ドル(約3300億円)の負担増が発生している。米国内の輸入品価格が上昇し、好調な消費にも冷や水を浴びせかねない。

 中国は米国の農畜産業を主な対象に、報復関税を課している。特に大豆は中国が最大の輸出先となっており、中国の対抗措置で狙い撃ちにされている。

 米政府による10日の対中制裁強化について、米大豆協会のスティーブンス会長は声明を発表。長引く米中の貿易摩擦に不満を表明した上で、「大豆農家は(中国の報復の打撃に)耐えてきたが、我慢の限界だ」と怒りをあらわにした。

 農業が盛んな米中西部には、トランプ氏が再選をかける来年の大統領選で、勝敗を左右する重要な地域が少なくない。中国との対立が長期化すれば農業関係者などの支持層が離反し、トランプ氏の再選戦略に逆風となる可能性もある。

2019年05月10日 20時24分 産経新聞

https://news.nifty.com/article/economy/economyall/12274-271264/

 報道にあるように、間違いなく関税を上げることは、アメリカから中国に対して輸出を行っているアメリカの業者においては経済的なマイナスであるといえる。しかし、そのマイナスよりも、そのまま取引を継続している方が問題が大きいという判断がトランプ政権の中にはあったのであろう。トランプ大統領に不満を持っていたり批判的な見方をしているマスコミは、その取引がうまくゆかなくなる業者や業界にだけ取材に行き、いかにトランプ大統領の決断が間違えているかということを報道する。上記のように「大豆農家」しか取材しないということは、まさにそのような状態でしかないのである。

「貿易戦争」である。つまり「戦争」なのだから、ある程度自国にも被害があることは間違いがない。その被害の部分だけをクローズアップすれば大きな問題になるが、しかしそのまま放置すれば、より一層大きな問題になることは間違いがない。アメリカの赤字分をもってそのまま中国が軍備を整え、そのうちアメリカの権益を侵そうとしているのであるが、そのことをマスコミは全く報じないのである。そのようなことで「国家」を考えることができるのか、アメリカのマスコミの報道が問われている。これだけ批判の報道をしながらもトランプ大統領の支持率が微増という結果が、まさにその状態を物語っているのではないか。

さて、何度も言っているように、アメリカは「貿易戦争」だけではなく、「チベット・ウイグルの人権問題」「南シナ海の航行の自由」「北極海正常化」「宇宙の軍事利用の反対」「南極における軍事的実験の中止」を求めている。実際に、貿易戦争も経済活動の一部に見えるかもしれないが、本来はアメリカの赤字分を収入として中国が軍事拡大を行っていること、そのことからインド洋などに進出し債務の罠ということを仕掛けていることの実質的な経済制裁であるということが言える。日本の場合は、このことを「経済産業省」「財務省」「外務省」「防衛省」宇宙などに関しては「文部科学省」などが入って縦割りに評価してしまい、日本の国家としての統一の対応が取れていないのであるが、そのような状況であるために、片方で日米同盟といいながら片方で中国の一帯一路に協力するというようなちぐはぐな対応になってしまっている。経済界の一部では「中国が困っているから、今助ければ利益が得られる」などという誤った判断をしてしまっている人も少なくなく、そのうちアメリカの制裁を受けることになるのではないかと考えられる。

  日本はこのような状況を「マスコミの報道に惑わされることなく、全体の国際関係を見ながら判断すべき」であり、そのための情報をしっかりと考える必要があるのではないかという気がしてならないのである。そしてそのようなことができない企業は、徐々に淘汰されるのではないかという気がしてならないのである。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

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