「宇田川源流的ニュース解説」 北朝鮮はなぜ今ミサイルを飛ばしたのか?
「宇田川源流的ニュース解説」 北朝鮮はなぜ今ミサイルを飛ばしたのか?
「宇田川源流」になってから初めてのニュース解説である。今回からはニュース解説に関してはタイトルにそのように入れてゆこうと思う。ニュース解説ではない記事も様々なに入れていきたいと思うからだ。その記念すべき第一回は、北朝鮮のミサイルについてである。
令和になってすぐ、5月4日に、北朝鮮が一年半ぶりくらいにミサイルの発射実験を行った。
各マスコミは、米朝首脳会談が不調に終わり、なおかつ露朝首脳会談も思ったほどの成果が上げられなかったことから、ある意味で自暴自棄になって防衛力を挙げたのではないかというようなことを書いている。
まずそのような状況で簡単に自暴自棄になるのであれば、初めから交渉をおかしくするようなことはないであろう。交渉というのは双方の腹の探り合いから行っているので、当然に決裂することは想定内になっているはずなのである。それにもかかわらず、うまくいかなかったから自暴自棄になるというような報道は、そもそも交渉を知らないとしか言いようがない。
まあ日本のマスコミがそのようなシリアスな交渉の場に立ち会ったこともなければ、そのような経験もないので、簡単に訳のわからないことを書くんであるが、実際にかなりシリアスな交渉の場を体験したことのある人ならば、交渉が決裂して自暴自棄というこの日本のマスコミの報道がいかにおかしなものか分かるのではないか。
では、なぜ金正恩はミサイルをいきなり撃ったのか。その理由を解説してみよう。
北朝鮮の飛翔体、中国側「対話による問題解決を」
中国共産党序列4位の汪洋氏は、北京を訪れている日中友好議員連盟との会談で、北朝鮮から発射された飛翔体について「確認を急いでいる」と述べ、「対話による問題解決が重要だ」と強調しました。
「(汪洋氏からは)政治的対話を通じて問題を解決していくことが重要であり中国は朝鮮半島の平和を強く望んでいるということでした」(日中友好議員連盟会長・林芳正 前文部科学相)
超党派の日中友好議員連盟は5日、人民政治協商会議の汪洋主席や次の駐日大使に内定している孔鉉佑外務次官と会談を行いました。
会談の中で汪氏は、北朝鮮が4日に発射した飛翔体について「確認を急いでいる」とした上で、「政治的対話を通じて問題を解決することが重要だ」と訴え、「中国は朝鮮半島の平和を望んでいる」と述べたということです。また、習近平国家主席の今後の訪日の調整についても、当局間での意思疎通の重要性を共有したということです。(05日23:05)
2019年05月06日 00時49分 TBS
https://news.nifty.com/article/world/other/12198-266636/
北朝鮮国民への人道支援呼び掛け 国連、加盟国に130億円要請
【ニューヨーク共同】北朝鮮に常駐する国連諸機関は6日、北朝鮮国民のうち人道支援が必要な約377万人に向け、約1億2千万ドル(約134億円)の緊急援助を拠出するよう加盟国に呼び掛ける報告書を発表した。
ミシュラ北朝鮮常駐調整官は声明で「人道支援活動は安全保障理事会の制裁対象から明確に除外されている」が「制裁の意図せぬ結果」として支援事業が大幅に遅延していることを指摘。資金不足も深刻で「今こそ行動する時だ」と訴えた。
報告書によると、人口の約43%に当たる推定1090万人が十分な食料や清潔な飲料水、基本的な保健・衛生サービスを得られていない。
2019/3/7 10:003/7共同通信社
https://this.kiji.is/476192892978480225
まずは交渉は何のために行ったのかということを考えなければならない。単純に、北朝鮮が本当に非核化をするつもりであるならば、交渉などをせずに勝手に核兵器を放棄すればよいだけのことである。なぜそれを行わないのかといえば、当然に核兵器をなくしてしまったら、アメリカや韓国が攻めてくるかもしれないからの他ならない。
何度も書いているように、現在北朝鮮と韓国は「戦争中」であり「休戦中」である。文在寅大統領がどれほど北朝鮮寄りであるといえど、それは「南北統一の交渉に前向き」ということでしかなく、戦争が終わったわけではない。もちろん文在寅大統領の場合は、かなり前向きで共産主義的な考え方が強いので、韓国という国家というか政府というか、そのものを売ってしまいかねない勢いであることは間違いがないのである。
逆に言えば、北朝鮮がちょっと弱くなれば、そのバランスが崩れ、そのことによって韓国やアメリカがいつ攻めてきてもおかしくない状態にある。北朝鮮が核兵器を持っているのも、間違いなく自衛のためであるというのが建前であり、相手の攻撃用であるならば、すでに使っているということになる。もちろん、現在核兵器を持っている国々もすべて自衛用でしかなく、また軍隊に関しても、公然と他国侵略用の軍隊であるというようなことを言っているのは、テロリストを含めてどこも存在しないのである。
ではその核兵器をなくすことができる環境とは一体何であろうか。単純に、「他国が絶対に攻めてこない保証」である。その内容には二つ存在する。一つは恒久的な軍事同盟と多国間による侵略をしないことの保障である。日本の場合はこちらに属しているということになる。このパターンの外交を行う場合は、さらに二つのパターンがあり、一つは日本の法に一つの陣営に完全に入り、その陣営の保護の下に国家を運営するパターン。しかし、この場合は、その国の外交の独自性が失われ、陣営のトップの意向においては逆らうことができなくなってしまうということを意味する。現在の日本国内においてアメリカのいいなりであるというような日本政府に対する批判は、まさに自衛に関するこの考え方そのものを批判するということになる。そしてもう一つが、多国間外交においてそのバランスの中において独自性を保つというような方法である。スイスなどがまさにその内容であり、永世中立国といいながらも国民皆兵であるが、同時に、各国との外交において中立を守り、その独自性を維持するというような感じになる。しかし、この場合いざとなったときにどこも守ってくれない恐れがあり、そのために、常に自国の軍事の強化と、多国間がすべて敵になったときのための覚悟が必要ということになる。
一方、もう一つのパターンがある。これが、すべての世界を統一し敵がいない状態にする」ということである、ある意味で戦中の日本の陸軍上層部がこのような考え方を持っていたと思われる。強固に精神論的な状況が多く、現実論としてはかなり難しいところがあるが、最近までの北朝鮮がこの考え方にあったことは間違いがない。少なくとも旧ソ連も中国も「共産主義革命」ということを言っている以上、その考え方、つまり共産主義革命を世界全土に広げて平和な世界を作るということを標榜している。そのための戦いであると考えているのである。
金正恩体制の北朝鮮は、この「共産主義世界革命論」から「スイス型中立国」への標榜をするというような感じになってきているのではないかという気がする。そのために武装解除に対しては国際社会の理解と攻めてこないという保証が必要であり、そのことを大国であり当面の敵であるアメリカ、そして歴史的に侵略を繰り返してきた中国、そして、北の峡谷であり東アジアを虎視眈々と狙っているロシアとの交渉を行ってるということになるのである。
もちろん、そのような存在を認める必要はなく、その交渉は難航している。特にそのことが祖父金日成、父金正日双方が目指したものと違い、また父と祖父のイメージが強すぎるために、難航するのは当たり前である。またそのことを金正恩自身が理解していれば、自暴自棄になるはずがない。もちろん、祖の威光を正確に伝えることができない部下を粛清することはあっても、そのことをもってアメリカと戦争をするというようなことではないことは明らかである。
ではなぜミサイルを飛ばしたのであろうか。
これは二つの問題がある。
一つは、北朝鮮の経済状態である。上記記事にあるように北朝鮮そのものの経済状態はアメリカの経済制裁によってかなり悪化しており、実際に食べるものがないくらいに、悪化している。もちろん、武器の開発などをなくせばそれで済む話であるが、一方で、それをなくせば国内でクーデターの心配もある。つまり、片方で経済制裁に対する対抗祖と地という名目で国内を安定させながら、クーデターの芽を摘まなければならない。典型的な排外主義外交であるということが言える。その「排外主義外交」とは、国内の矛盾を海外に持ってゆき、そのために国外を悪者にしながら片方で国内の国威発揚を考えるというものであり、フランスのルイ十四世やナポレオン三世が行った典型的な政治手法である。
北朝鮮は、国内経済の矛盾と国内の貧困を片方でアメリカの経済制裁に責任転嫁しながら、一方でアメリカと本気で戦争をする気がないので、韓国をその代理国として刺激することを考えた。単距離多弾頭ミサイルを発射したということは、まさに「アメリカまでは届かない自衛用の武器を発射した」ということであり、当然に、韓国や日本を刺激したものであるということができる。
ではなぜ5月4日であったのか。
これはまさに、「令和になって初めての日本の天皇の一般参賀の日」であったということに他ならない。つまり、韓国を刺激した割には。日本の韓国が何を言っても宣伝効果はない。酢でい韓国の文在寅政権が何を言っても世界的な注目を集めることができないことを北朝鮮は知っている。何しろ2017年、金正恩の兄金正男と見られる男をクアラルンプールで暗殺したことも、北朝鮮が考えたいたような効果のある歩道をしていなかった。つまり、韓国はそのことをもって海外に対する訴求力が少ないということになる。一方でアメリカをあまり刺激してしまうと、本当に線戦争になってしまう。食料がなく経済的にひっ迫している状態で戦争などはできるはずがない。
そこで日本の「令和」を利用したということになるのだ。つまり、日本が最もお祝いでムードが高まっているときに、ミサイルを打つことによって、日本からの報道を期待したということになるのである。
ある意味で、日本が最も大事にしているものを汚すことによって、ことの大きさから注目を集めるという手法である。ある意味で「番町皿屋敷のお菊」的な状況であるといえる。もちろんお菊の場合は、わざと皿を壊したわけではないとされているが、最も大事なものを壊してしまい、そのうえで、後世まで語り継がれる状況になるというのはよくある話である。
さて、日本はこのことを受けてアメリカのトランプ大統領と電話会談をするが、その結果は「前提条件なしでの交渉」ということになる。単純に言えば、「トランプ大統領は北朝鮮を助けてやれ」といっているわけであるが、日本としては非核化も進んでいないし、拉致問題も解決していない状態で、助けてやる必要はない。一方北朝鮮としては「交渉に出てゆくのにお土産がなければ出てゆく徒歩がない」ということになる。
まさにこの状態こそ、現在の置かれた状況なのである。そのことがわかっていない中国はとぼけたコメントを出しているということになるのだが、一方日本はどのような決断をするのか。
戦争というのは、基本として国力の矛盾から、絶対に勝てない不合理な戦争でも起こしてしまうというような状況があり、まさに「不合理の合理」という戦争形態になってしまう。そのことで国内が安定するということが最も問題になるのだが、それは国内に正確な海外の情報が入っていない、だから不合理であっても合理的に見えてしまうということになるのだ。かつての日本もそうであったと考えるべきであろう。
では、北朝鮮が「不合理の合理」の戦争を仕掛ける相手はどこか、そして日本はその時にどのような外交を行うのか。
今が大きな分岐点てある。
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