「宇田川源流」【現代陰謀説】 ロシアにおける体制派と反体制派の認知戦

「宇田川源流」【現代陰謀説】 ロシアにおける体制派と反体制派の認知戦


 毎週金曜日は「現代陰謀説」をお届けしている。現在このように普通に生きている中で、今まさに動いている陰謀ということを、現在公開されているニュースの中からその内容が見いだせるニュースをピックアップし、そしてその中にある「陰謀」を暴きだしてみたい、という内容である。もちろんニュースだけでは完全に不足していることから、それ以上の知識などが総動員されなければならないが、このブログではそこまでしようとは思っていない。それよりも「このような読み方をすれば、陰謀を読み分けることができる」ということをこの場で示したいと思っている。実際に、完全に見分けることは難しくても、ニュースの読み方を見てゆけばよいのではないかということとを考えている連載である。

 さて、陰謀というのは基本的には「戦争」に直結することが少なくない。結果論ではそのように物事がみえる。実際は「相手の国を、自国の思い通りにコントロールする」ということがあり、その場合、相手の国の事を考えて行うのではなく、自国の利益のために相手の国を使う、場合によっては相手国の政権を崩壊させるというようなことにつながるので、そのことが露見した場合に両国の関係は悪化し、その結果、「戦争」に繋がってしまうということがある。

 もちろん、善意による他国の介入というものがあるが、だいたいの場合、国の価値観が異なるのであるから、その価値観そのものを押し付けた結果を求められた場合、その内容が大きな問題として出てくることになるのではないか。またそのように外部からコントロールされていたことが明らかになれば、その外部勢力は当然に反発を覚えるということになる。

 そしてそのような陰謀の前には、相手国を観察するということが必要になる。その上で「戦争を覚悟した観察」を最後に行う必要がある。秘密兵器や、隠れた何かがあった場合は、戦争になって被害を被る可能性があるからだ。そのように考えれば、「陰謀を仕掛ける前」と「陰謀の終盤」には、よく相手国を観察する必要があることは間違いがない。

<参考記事>

ロシアに戦いを挑むベラルーシの反体制派「サイバーパルチザン」

6/25(木) 12:30配信 Forbes JAPAN

https://news.yahoo.co.jp/articles/dbb331dea34212ff2ba6ccd7f0c034ee8c8d9d3e

<以上参考記事>

 フォーブス・ジャパンの報道にあるベラルーシの反体制派ハッカー集団「サイバーパルチザン」とロシアを巡る動きは、現代の戦争が単に兵器を交えるだけでなく、人間の認識や心理を標的にした「認知戦」の舞台になっていることを如実に示しています。

 この認知戦の本質は、偽情報や盗み出した機密データを意図的に流布することで、人々の現実認識を歪め、社会を分断し、自国に有利な行動をとらせる、あるいは敵の戦意を喪失させることにあります。

 ロシア側は伝統的に、サイバー攻撃そのものよりも、それによって得た情報や偽のナラティブをメディアやSNSで拡散する情報工作を重視してきました。既存の社会的な対立や民族的な分断につけ込み、標的となる国々の世論を誘導して政治的な混乱を引き起こすことで、実力行使に頼らずに戦略的な優位に立とうとしています。ウクライナ侵攻の際にも、ベラルーシを足場として軍事展開を進める一方で、国際社会の足並みを乱すための洗練された世論工作を展開してきました。

 これに対抗する形で、サイバーパルチザンなどの反体制側も認知戦を展開しています。彼らはもともとベラルーシの独裁政権への抵抗として結成されましたが、ウクライナ侵攻を機にロシアを直接的な標的に加えるようになりました。彼らの戦術は、大規模なネットワーク停止を狙うウクライナのIT軍などとは異なり、システム内部に深く潜入して機密情報を抜き取る点に特徴があります。

 彼らが奪取したロシア軍の兵站データ、無人機メーカーの機密、さらには政府高官の個人情報などは、単なる軍事インテリジェンスとして使われるだけでなく、ネット上で暴露されることでロシア側の嘘を暴き、その統治能力や軍事的な信頼性を失墜させる強力な武器となります。つまり、隠された真実をあえて白日の下に晒すことによって、ロシアが構築しようとする偽りの現実に揺さぶりをかけているのです。

 日本に生きる私たちにとって、これらの応酬は遠い異国の出来事に見えるかもしれません。しかし、ネット工作や認知戦には国境がなく、SNSやデジタルメディアを通じて私たちの日常の情報空間にも容易に紛れ込んできます。私たちが気づかないうちに、どちらかの陣営が意図的に流した情報に触れ、特定のものの見方を植え付けられている可能性があるという点において、この見えない戦争はすでに世界規模で展開されていると言えます。

 この問題を「すべてがロシアや中国による背後からの操り人形(プロパガンダ)である」という陰謀論的な視点、あるいは「仕掛けられた陰謀である」という仮説から読み解くと、現代の日本社会で見られる世論の分断は、非常にクリアなパズルとして説明がつきます。

 陰謀論的なアプローチにおいて最も重視されるのは、全く異なる立場にあるはずのグループが、なぜか全く同じロジックや特定のキーワードを使って特定の政治勢力を攻撃しているという奇妙な一致です。例えば、特定の政権や特定の政治家を非難する言説において、隣国の国営メディアが発信する批判のロジックと、日本国内の特定の活動家やデモ隊が掲げる主張が、翻訳したかのように一致することがあります。この視点に立てば、これは偶然ではなく、背後で情報工作のシナリオを書いている司令塔が同一であることの決定的な証拠(スモーキング・ガン)として解釈されます。

 この論理では、日本国内でロシアの行動を擁護する声や、逆に過剰に危機感を煽って国内の団結を乱そうとする声も、すべては日本人の防衛意識を削ぎ落とし、社会を内側から崩壊させるためにあらかじめ設計されたプログラムであると考えます。ネット上で一見すると自発的に議論しているように見える一般のユーザーも、実はその多くが工作員によって作られた大量のアカウント(ボットネットワーク)によって流行を捏造された情報に躍らされているか、あるいは無自覚に敵国の「便利な存在」として利用されているに過ぎない、という結論に至ります。

 しかし、この事態を国家安全保障や情報戦の専門家が分析する場合、すべてを「一から十まで仕組まれた陰謀」と切り捨てるのではなく、もう一歩踏み込んだ現実的な「認知戦の技術」として捉えます。専門的な知見から見ると、ロシアや中国の工作の本質は、全く無の状態から新しい思想を日本人に植え付けることではありません。そうではなく、日本社会がもともと抱えている「保守と革新の対立」「政権への不満」「将来への不安」といった既存のヒビ割れを見つけ出し、そこにピンポイントで油を注ぎ込んで溝を深める手法をとります。

 つまり、デモを行っている人々やネットで発信している日本人の多くは、誰かに直接お金で雇われた工作員ではなく、本当に自分の信念に基づいて行動しているケースが大半です。認知戦を仕掛ける側は、彼らが喜びそうな情報や、敵対陣営への憎しみを煽るようなニュースをネット上にそっと配置するだけで済みます。人間は自分の信じたい情報を自ら進んで拡散する習性があるため、工作員が最前線に立たずとも、日本人が日本人を攻撃し合う「自給自足の分断」が自然発生的に完成します。

 このように考えると、すべてを巨大な悪の陰謀と捉える視点は、一見すると敵の邪悪さを浮き彫りにするように見えて、実は「日本人は簡単に騙される愚かな存在である」という極端な人間観に陥りかねない側面を持っています。今、日本が直面している本当の脅威は、誰かが裏で糸を引いていることそのものよりも、他国からの情報的な揺さぶりに対して、私たちが過剰に反応し合い、お互いを「敵の工作員だ」「陰謀論者だ」とレッテルを貼り合って社会の信頼関係を自ら壊してしまう、その脆さにあると言えます。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

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