「宇田川源流」【日本万歳!】 落語からできた「目黒のサンマ祭り」

「宇田川源流」【日本万歳!】 落語からできた「目黒のサンマ祭り」


 毎週月曜日は「日本万歳!」をお届けしている。日本人のすばらしさや、日本人を称賛している記事などを見つけ、その内容を皆さんに紹介し、そのうえで、皆さんの毎日の行動に、日本人としての誇りを持っていただくということを目的にして、記事の連載を行っている。

 日本人のすばらしさというのはいったい何であろうかということを考えたことがあるだろうか。実際に、様々なところがあげられると思うであろう。「規律の正しさ」や「まじめさ」「勤勉さ」などから「やさしさ」なども挙げられる。もちろんこのようなことを書くと、「そうはない」という例を挙げて反論する人がいるが、逆に、わざわざ希少な例を挙げて反論しなければならないほど、そのような特性がしっかりと日本人の中に根付いているということになるのではないか。ここに書いたような中で「箸にも棒にも掛からぬ」というような特性を挙げているとすれば、そのような例を挙げるまでもなく、特性の中にはないというようなことになり、多くの人から反論が来るに違いないのであるが、そのようなことにはなっていないのである。

 さて、そのような特性もあるが、あえて今回は「日本の話芸と面白さ」ということと「話芸から発した文化」ということで物事を見てゆきたいと思う。実際に、日本の話芸というのは、ある意味で「皮肉を込めながら面白く」ということがある。そこには「しっかりとしたちしきが日本人の根底にある」ということがあり、また「共通認識がある」ということになる。その共通認識や文化、そのようなことが共通しているから話芸が成立する部分があるのではないだろうか。

その様に考えると、実は日本の話芸というのは本当によくできているところが大きい。そもそも「話芸」が成立するというのは、言語が標準化しておりなおかつ同じ文化性で統一されているだけではなく、生活水準なども同じでなければ笑えるところも変わってくる。その様に考えれば「笑い」の「ツボ」が同じということは、かなり様々な共通性がなければならない。

その共通性から「お祭り」ができてしまうのであるから、日本のすばらしさはやはり群を抜いているのではないか。

<参考記事>

目黒"さんま祭"秋の味覚堪能

2025年10月12日 15時22分TBS NEWS DIG

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12198-4582436/

<以上参考記事>

 落語「目黒のサンマ」は、殿様が庶民の食べ物であるサンマの美味しさに目覚めるという滑稽噺である。

ある秋の日、殿様が目黒へ遠乗りに出かけた際、家来が弁当を忘れてしまい空腹に。そんな折、近くの農家から香ばしい匂いが漂ってきます。家来によれば、それは庶民が食べる「下魚(げうお)」のサンマ。殿様は「戦場で食べ物を選んでいては命を落とす」と言い張り、強引にサンマを食べると、その脂の乗った焼きたての味に感動する。後日、殿様は親戚の屋敷で「目黒で食べたサンマが食べたい」と所望する。親戚は気を利かせて魚河岸から高級なサンマを取り寄せ、脂を抜いて骨を取り除き、上品に蒸して供することになる。しかし殿様は「これは違う、サンマは目黒に限る」と言い放ってしまう。ここがオチであり、地理や流通を理解していない殿様の無知が笑いを誘います。

 この噺の面白さは、身分の高い殿様が庶民の食べ物に魅了されるという逆転の構図にある。サンマの味そのものではなく、「目黒で食べた」という体験が美味しさの記憶と結びついている点が、人間の感覚の曖昧さや思い込みを巧みに描いている。また、殿様の無邪気さと世間知らずぶりが、庶民の視点から見た権力者の滑稽さを際立たせ、風刺としても秀逸である。そもそも「海のない場所」である「目黒」で「海の魚のサンマを美味しいという」ということに非常に面白さがある。今でこそ物流は完璧である目黒でも新鮮なサンマを食べることができるが、江戸時代の話であるから、市場でサンマを取引した後、馬や荷車で運んでくるので、新鮮な魚ではない。そのサンマを「目黒に限る」と言ってしまう面白さが殿さまの無知と生活の違いが見えてくる。食文化の違いや、地理感覚のズレを笑いに昇華させたこの作品は、落語の中でも特に親しみやすく、時代を超えて愛される理由である。同時に、ある意味で、庶民が「殿様」という、普段は批判などはできない立場の人を「笑いのネタにする」という文化性も面白い。他の封建社会で王様をバカにして笑ったら処罰をされることになるが、日本の場合、このような笑いのネタにしても処罰されない「日本のおおらかさ」もこの話の中に入っているのではないか。

さて、落語のこのネタから、現代に移る。

現代は、この「目黒のサンマ」から、目黒でサンマ祭りが行われているのである。何と、江戸時代の「日本橋の魚市場」ではなく、宮城県気仙沼から直送された新鮮なサンマが2000匹あり、無料でふるまわれるという。気仙沼と目黒区は友好都市で結ばれており、そのような関係も大きい駆役に立っているのではないか。もちろん、この目黒のサンマに出てくる「笑いのネタにされた殿さまが気仙沼の領主(要するに伊達家)」ということではない。

さて、その「目黒のサンマ」から、現代にいたるまでお祭りがなされているというのが日本のすばらしさだ。この「目黒のサンマ」が、実話なのかフィクションなのかは、今となっては確かめるのは難しい。しかし、実際に日本では「アニメの聖地巡り」で、スラムダンクの場面である江ノ島電鉄の踏切が観光名所になったりする。まさに目黒のサンマは「聖地巡り」の元祖のような感じではないか。

このように考えれば、日本の「創作物」や「話芸」「作品」の実際の土地とのリンクのすばらしさも、また面白いのではないか。それが日本の豊かな文化を創り出しているのである。

宇田川源流

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