「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 黒幕一橋治済とすれ違い始めた松平定信

「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 黒幕一橋治済とすれ違い始めた松平定信


 毎週水曜日は、NHK大河ドラマ「べらぼう」に関して感想を書いている。本当に一般の視聴者が書いている感想と全く変わらないのであるが、毎週書いていると、それなりに話の先が見えてきたり、伏線と思われる場所を感じたり、または森下先生の癖が見えてくるところが面白い。

さて、その前にまた歴史的なうんちくを見てみよう。今回は古川雄大さんが熱演している北尾正演、山東京伝について見てみよう。

 山東京伝は宝暦11年8月15日(1761年9月13日)、江戸深川の材木問屋・岩淵伝左衛門の三男として生まれ、本名を岩淵醒といった。幼少期より町人文化に親しみ、安永2年(1773年)から京都や江戸の画師に学び、安永4年(1775年)に北尾重政に入門して浮世絵や狂歌に才能を示した。13歳で「京伝」の号を賜り、後に住んだ銀座一丁目で「京屋」という小物店を開き、自作の絵入り紙煙草入れを販売するなど画師としても活躍した。

文学者としての台頭

 天明年間(1781~1789年)に入ると、狂歌や洒落本、黄表紙などを次々と世に送り出し、江戸の町人の暮らしや風俗を軽妙な筆致で描いた。蔦屋重三郎ら版元との協力により、夜を楽しむ町人たちの笑いと風刺を融合させた作品群は江戸中に評判を呼び、彼自身が「浮世の風刺家」として名を上げるきっかけとなった。

 松平定信が主導した寛政の改革(1787~1793年)は、風紀粛正と幕府権威の維持を目的に出版物への統制を強化した。山東京伝の黄表紙や狂歌本はしばしば幕府の風紀監視に触れ、天明7年(1787年)以降は出版統制の対象となった。特に天明8年(1788年)には、出版主任者として50日の手鎖刑を科せられ、複数の作品が版元ともども発禁処分を受けるなど、厳しい弾圧を経験した。

 一時は弾圧により創作が制約されながらも、山東京伝は読本や道徳物語、忠義譚など幕府の検閲を回避できるジャンルへ執筆の幅を移し、倫理的要素を取り入れた作品も発表した。寛政改革が終息する1793年頃には、再び洒落本や黄表紙の執筆へと復帰し、江戸町人文化に鋭い観察眼を持ち込んだ作品を生涯にわたり発表し続けた。文化13年9月7日(1816年10月27日)、江戸で胸痛のため没し、享年56とされた。

<参考記事>

『べらぼう』蔦重と松平定信の“勝利”はどこにあるのか? “悲劇”を生んだ両者の読み違い

9/28(日) リアルサウンド

https://news.yahoo.co.jp/articles/929265e99fbdcefc732ff34aeff278017b2df0d1

<以上参考記事>

 さて今週はなかなか面白かった。一つはネット上で話題になった喜多川歌麿(染谷将太さん)の妻きよ(藤間爽子さん)の足の「発疹」であろう。当時は不治の病であった梅毒や何かそのような感じの病気であると考える。この後、史実では歌麿と蔦屋重三郎(横浜流星さん)が別れてしまうようになってゆく。その何らかの景気を作らなければならない。物語というのは、基本的には「気まぐれの心変わり」はできないようになっていて、キャラクターが変わるときというのは大きな事件が発生するように書かなければ、読者(思潮社)が混乱してしまう。そこで大きな事件、大事な人の死とか、大きな災害であるとか、人生の転機になるような話になってないと、性格やキャラクターを変えられない。新之助(井之脇海さん)のキャラクターが変わったのも、妻のふく(小野花梨さん)の死であり、それでもキャラクターを変えきれずに、蔦屋をかばって死ぬことになる。それと同じような歌麿のキャラクター変更の契機として妻の死を使うのではないか。そんな予想をついついしてしまうのである。この答え合わせは来週以降出てくることになるのであろう。

一方、キャラクターがずっと重くのしかかってくるのが松平定信(井上裕貴さん)であろう。このキャラクターは、本人は黄表紙好きの、文学好き、しかし老中になるにあたって、田沼意次(渡辺謙さん)を追いやり、なおかつ、将軍の血筋は老中になれないという禁を破っての特例で老中に就任したということから考えれば、意地でも田沼路線とは逆の方向に進まなければならない。そのことが「質素倹約」「華美瀟洒の禁止」という方向に向かうようになる。

そしてもう一人、終始黒幕的な動きをするのが徳川治済(生田斗真さん)であろう。もともとは反田沼意次で一致していたこの二人が、今回大奥の大崎(映見くららさん)を排斥し、また皇室のことに関しても、徳川治済の意見とは異なる動きをした。ここで対立ができることになるのである。

一方で蔦屋重三郎も田沼路線の維持や娯楽を残すということで、質素倹約に対抗し、吉原などの「遊興街」、もっと言えば「底辺の住民の利益を代表した声を上げる」ということをいつまでもあきらめない状態になっている。

ここで、「質素倹約の松平定信」「裏で政治を操りたい徳川治済」「庶民の声の代表で娯楽精神を残す蔦屋重三郎」という三つ巴の争いが出来上がってくるという構図を作っている。片方で歌麿の伏線を作り、そしてもう一方で質素倹約の松平定信側に寝返ってしまう山東京伝=北尾政演や、裏で本や業界を仕切る鶴屋(風間俊介さん)など、庶民の中にも三つ巴を作るというような、凝った作りになっている。大河ドラマのような長期ターンの物語なので、幕府と庶民(江戸の町)の双方に蔦屋重三郎を中心にした二つの三角関係を作ったというようなつくりになっているのである。

そしてこの山東京伝などの動きは、恋川春町(岡山天音さん)の自害ということを、今回も大きく印象付ける(物語冒頭に自殺ではないかというような噂が江戸の中で評判になっているということを印象付ける演技をひと差し入れている)ことによって、北尾政演などの心変わりなどキャラクター変更をうまく作り出しているというつくりになっている。

人の性格が変わるということは、かなり大きな衝撃がなければならないが、その衝撃で「完全に変わってしまい正反対の方向に向かう人」と「今までの路線を維持でも完遂する人」というように分かれてしまう。そしてそのことが人間関係を大きく変えていってしまうということになる。その「人間関係」を本当にうまく描いているという感じではないか。

宇田川源流

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