「宇田川源流」【日本報道検証】 ドイツが徴兵制を復活させるほど緊迫した欧州の「世界大戦危機」

「宇田川源流」【日本報道検証】 ドイツが徴兵制を復活させるほど緊迫した欧州の「世界大戦危機」


 毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。

 さて、今回は、ドイツが調整性を復活できるようにするという動きと、そのことを許すだけの国民の持っている危機感ということに関してみてみたい。

第二次世界大戦終結後、1955年に発足した西ドイツ連邦共和国(BRD)は、翌1956年に自衛のために徴兵制を導入した。この辺は敗戦国ドイツであっても日本とは全く異なる。逆に言えばそれだけ旧ソ連、または東欧諸国の軍事的なプレッシャーが大きかったということになるし、特に当時の旧東ドイツはベルリンの壁一枚隔てて向こう側が敵国ということになっているのであるから、このようになるのも当然であろう。男性18歳以上が最長18か月の兵役義務を負い、冷戦期にはNATOの主力戦力として位置づけられていた。東西統一後の1990年代以降も継続されたが、志願兵による人員補充が可能になったことなどを背景に、2011年に徴兵制は廃止され、完全志願制へと移行した。

 徴兵制廃止後もドイツ連邦軍(Bundeswehr)は現役兵と予備役の両輪で構成を維持している。現在、陸海空を合わせた現役兵力は約18万人、訓練を受けた予備役は約10万人にのぼるとされている。

 2022年のロシアによるウクライナ侵攻を契機に、ドイツ国内では自衛力強化の機運が高まってきている。2025年8月27日、ドイツ政府は新たな兵役制度導入法案を閣議決定し、翌28日に連邦議会(連邦議会)で承認された。法案には自衛的軍備拡充の一環として、志願者数が不足した場合に限り徴兵制を条件付きで「再開」する枠組みが盛り込まれているということになる。

<参考記事>

独で"徴兵制復活"の可能性も

2025年08月28日 05時49分TBS NEWS DIG

> https://news.nifty.com/article/world/worldall/12198-4437734/

<以上参考記事>

 ロシアのウクライナ侵攻がもたらした衝撃は、ヨーロッパの安全保障観を根底から揺さぶった。中でもドイツは、従来の志願制だけでは増大する脅威に対応できないと判断し、2025年をメドに徴兵制の再導入を閣議決定した。これにより18歳以上の男女に予備役登録を義務づけ、志願者数が規定に満たない場合には実際の召集も辞さない体制を整えている。冷戦終結以来、止揚されていた大規模動員への備えが“緊急時限定”とはいえ復活するのは、まさに戦後欧州のパラダイムが大きく逆戻りした証左と言える。

 イギリスでも同様に、正規兵の補充に加え、王立予備役部隊(Army Reserve)や義勇軍(Volunteer Force)の大規模拡充が進んでいる。2024年末の国防白書では、現役兵約10万人を15万人規模まで増員し、予備役にも新たに10万人を追加募る計画が打ち出された。さらに、学業や民間仕事と並行して半年程度の軍事訓練を行う「国民兵(National Service)」構想が一部野党から提案され、議論を呼んでいる。

 フランスでは、マクロン大統領が再選直後に「国防課徴プログラム」を発表し、予備役登録の義務化と防衛教育の強化を命じた。18から25歳の若者すべてに1ヵ月間の基礎訓練を課し、その後5年間は半年以内の予備役招集に応じる義務を課すことで、2030年までに国家総動員能力を倍増させる狙いである。これによりフランス軍は、海外作戦と同時に国内防衛体制を飽和させる“多層的抑止”を維持しようとしている。

 こうした動きは北欧のスウェーデン・フィンランド両国のNATO加盟とも相まって、「通常戦」「ハイブリッド戦」「サイバー攻撃」すべてを念頭に置いた総力戦への備えとしてヨーロッパ全域で広がっている。各国の徴兵制度や予備役強化は、単なる人員確保にとどまらず、国民一人ひとりに「戦争の可能性」を日常化させる心理的・社会的インパクトをもたらしている。かつての「欧州の平和神話」は遠く、今や第三次世界大戦への危機感が、あらゆる政策決定の前提条件となっている。

ヨーロッパを中心に、ロシアのウクライナ侵攻以降、「第三次世界大戦」のシナリオが現実味を帯びて議論されています。米国がイラン核施設攻撃を検討したとする報道や、イスラエルの核施設への空爆想定がSNSで拡散される中、住民が地下シェルターに退避する準備を余儀なくされる国も出てきた。

一方で、日本では核シェルターや避難タワーの普及状況は依然として限定的です。欧州の危機感が深まる一方で、日本国内では「戦争の可能性」に対する自覚が十分に高まっていないとの指摘がある。

 世界が直面している危機は、単なる国境紛争ではありません。以下の3つの領域が複合的に交錯し、「総力戦」に近い状況を生み出している。

 第三次世界大戦という言葉は遠い未来の幻想ではなく、現代の地政学的緊張が高まる中で現実味を帯びてきた。大国同士の対立、ハイブリッド戦争、テクノロジー競争が入り混じり、従来の戦争像は劇的に変容してる。日本も安全保障環境の激変に直面しており、平和国家としての立ち位置と自衛力の在り方を再検討する必要に迫られている。

 ロシア・ウクライナ戦争に端を発した米露対立の激化は、次に米中間の覇権争いへと拡大する可能性が高い。台湾海峡や南シナ海での偶発的衝突が、NATOと中国の代理戦争を誘発しうるシナリオが現実味を帯びている。さらには中東やアフリカでの限定紛争が大国の思惑を巻き込み、一気に世界的規模の戦闘へと連鎖するリスクがある。

 未来の戦争は通常兵力のぶつかり合いだけでなく、サイバー攻撃や偽情報の拡散、宇宙空間での衛星攻撃、AI兵器の自律行動といった多次元的戦闘が主流となるでしょう。ドローン群による飽和攻撃、電磁波兵器による通信網の麻痺、量子暗号を駆使した情報戦が、物理戦力以上に戦局を左右することになる。すなわち「総力戦」の概念が情報・技術領域へと拡大し、国家全体のインフラや高度産業が戦場化する。

 展開地域の想定をすれば、戦線は欧州とアジア太平洋に二極化し、欧州ではバルト三国や北極圏でのNATO―ロシア衝突が激化する。アジアでは台湾海峡と南シナ海が火種となり、米中の正規・非正規戦力が激しく交錯する。中東も引き続き不安定要素が残り、エネルギー資源を巡る大国の介入が新たな戦線を生み出す可能性がある。

 日本の想定される状況はどのようなものであろうか。

 地政学的リスクと国土防衛としては、日本列島は海上交通の要衝であると同時に、対岸の台湾有事や北方領土を巡るロシアの動静にも厳しく晒される。南西諸島の離島防衛や海洋監視体制の高度化が急務となり、従来以上の自衛隊部隊の展開と3次元防衛システムが求められます。さらに同盟国との共同運用が円滑に進まなければ、島嶼部の早期奪還は困難を極めることになる。

 サプライチェーンの寸断やエネルギー価格の高騰は、日本経済を直撃することになる。半導体や重要部材の輸入停止は生産停止を招き、生活必需品の品薄とインフレ圧力が国民生活を圧迫する。緊急時には食料・医薬品・燃料の戦略備蓄を迅速に放出し、地方自治体と連携した配給網の構築が生命線となる。

 重要インフラへの大規模サイバー攻撃は停電や通信麻痺を引き起こし、混乱した隙をついて実力行使を伴う攻撃が発生しやすくなる。AIを活用した偽情報キャンペーンは国民の分断を狙い、防御と同時にデジタル・リテラシーの底上げが不可欠である。宇宙空間の衛星ネットワークも武力対象となるため、防衛用・商業用ともに軌道上資産の多重化が必要となる。

 では日本はどのような役割をすべきであろうか。

 日米同盟を基軸としつつ、オーストラリア・インドとのクアッドや欧州諸国との多国間演習を拡大するべきです。共同運用インフラの標準化、通信・指揮系統の統合、物資輸送路の確保を通じて、地域全体の抑止力を底上げする。さらに ASEAN やインド洋諸国との安全保障対話を深化させ、幅広い協調枠組みを構築する必要がある。

 防衛装備の増強だけでなく、民間と連携した避難訓練やシェルター整備を推進し、市民の防衛意識を高めることが重要である。予備自衛官制度の拡充や地方自治体ごとの防衛タスクフォース設置を行い、有事に即応できる「全国版非常体制」を日常化することになる。これにより自衛隊への負担分散と地域防衛力の底上げを同時に実現する。

 国内外にまたがるサプライチェーンの分散化と二重調達体制の構築が急務である。重要部材や医薬品の国内回帰、生産拠点の「ファブライト化」を推進し、有事の際の生産停止リスクを抑制する。政府、企業、研究機関による「戦略物資フォーラム」を設置し、リスク対応の共通プラットフォームを整備するべきであろう。

 国家サイバー司令部の強化と同時に、民間企業との情報共有をリアルタイム化する必要がある。偽情報への対策として、AIによるリアルタイム検証システムや公的ファクトチェック機関を立ち上げ、社会的信頼を維持します。教育現場にもカリキュラムとして「デジタル安全保障科」を導入し、次世代のリスク認知を高めるべきである。

 平和構築と紛争予防の分野で日本が果たす役割は依然として大きく、その伝統を戦時環境にも活かすべきであろう。開発援助や技術協力を継続しつつ、有事には人道支援や医療支援を迅速展開できる「ピース・レスポンス部隊」を設置する。戦後処理や復興支援では日本の災害支援経験を適用し、「平和のインフラ整備国」として国際的責任を果たすべきである。

 第三次世界大戦の確率を下げるためには、抑止力を高めつつ外交的対話を絶やさないバランス感覚が重要である。日本は同盟国との結束を強固にし、国内では市民の安全意識と経済基盤のレジリエンスを同時に高める必要がある。情報、技術、そして人的ネットワークを駆使し、「平和国家としての矜持」を国際社会に示し続けることが、日本の役割と言えるであろう。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

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