「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 新之助の「作家特有のもっともカッコイイ」死に方

「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 新之助の「作家特有のもっともカッコイイ」死に方

 毎週水曜日はMHK大河ドラマ「べらぼう」について本当に好き勝手に感想を書いている。しかし、ドラマに関してなので史実とかけ離れている部分もあるので、一応史実とされている伝わってきている内容を確認する。何がどのように脚色されたかわかるようにしていることが、ドラマを倍以上面白く見るコツである。

 さて今回は冨永愛さん演じる高岳についてちょっと見てみたいと思います。

高岳)は、江戸時代後期の大奥女中(上臈御年寄)。江戸幕府10代将軍・徳川家治、11代将軍・徳川家斉の時代には大奥で筆頭老女を務めた。

 高岳は生没年および出生地に関する史料がほとんど残されておらず、その生い立ちは不詳とされる。江戸城大奥に登用される以前の家柄や家族構成も明らかではない。

 宝暦期(1751年~1764年)の大奥において、高岳は「御年寄寄」の一人として松島局ら上位老女を補佐し、内勤全般の統括に深く関与していた。将軍家治や家斉の側近からの意向を取り次ぎ、女中の配置や物資の管理、儀礼準備など、表には出ない大奥運営の根幹を支える役割を担っていた。

 明和期(1764年~1772年)に筆頭老女へ昇格した高岳は、若手女中の育成から大奥の人事決定に至るまで、名実ともに最高位の女中として権勢を振るった。将軍の婚礼や年中行事の運営責任者となり、幕府の内政動向にも大奥ルートで影響を及ぼす存在となった。将軍からの命を受け、大奥内の女中配置・物資管理・儀礼準備を統括すると同時に、将軍の意向を女中たちに伝達する役割を担った。特に家斉は老中人事について高岳の意見を直接求め、彼女は御年寄寄の滝川とともに松平定信(老中就任)に反対の意見を表明するなど、政策面でも重用されたことが知られている。

 このように高岳は将軍の最側近として大奥運営の中枢に位置し、権威だけでなく実務と意思決定に対する影響力も兼ね備えていました。将軍家からの信頼が厚かったゆえにこそ、大奥制度の中でも強固な立場を維持し得たと言えるでしょう。

 明和2年(1765年)、仙台藩主・伊達重村が自身の官位昇進を図るため、高岳を含む筆頭老女や老中、側用人ら四人に賄賂を贈った事件が知られる。高岳はこの賄賂を契機に桜田御用屋敷内に自身の居宅を増築させ、私的利益の追求を図ったと伝わる。

 天明7年(1787年)、老中に就任した松平定信の人事について将軍家斉から意見を求められた際、高岳は御年寄寄の滝川とともに反対姿勢を示した。この対立を受けて滝川は退任し、高岳も筆頭老女の座を退くことを余儀なくされた。

 退任後の高岳については直接的な記録が乏しく、その後の消息や没年も未詳とされる。それでも大奥全盛期における隠然たる実力者としての足跡は、後世の大奥研究や江戸時代権力構造の考察において重要な位置を占め続けている。

<参考記事>

<べらぼう>治済が大崎に渡した“あの箱”の中身に驚き! 出てきたのは「特級呪物」 まさかこのタイミングで? 怒りに震える高岳

8/31(日) MANTANWEB

https://news.yahoo.co.jp/articles/1096459505d408f4e01eb903d912fc083b5544c1

<以上参考記事>

 今回は、また二人が死ぬ。一人は一橋治済(生田斗真さん)の影で様々な工作を行っていた丈右衛門だった男(矢野聖人さん)。そして蔦屋重三郎(横浜流星さん)と苦楽を共にした新之助(井之脇海さん)である。

ある意味で一橋治済が、様々な市民工作を行って田沼意次の引き落としを行っていた人物が、長谷川平蔵(中村隼人さん)によって成敗されることになる。このことは二つの意味を持つということになる。一つは、一橋の陰謀をすべて知る男が死ぬということで、口を封じられたということになろう。それも田沼意次が江戸市中を収めるために遣わせた長谷川平蔵が一橋の陰謀の商人を殺してしまうというのは、ある意味で皮肉としか言いようがない状態ではないか。そしてもう一つは、一橋治済が、新たな陰謀をやりにくくなるということになる。あまりわからない人は「他の侍を使えばよい」ということになるが、そんなに汚れ仕事をする人が多いならば、平賀源内を殺すのと、蔦屋を殺す(未遂だが)のは別な人に行わせるであろう。そう考えれば、他に駒がなかったと考えるべきであろう。

さて、その丈右衛門だった男に狙われた蔦屋重三郎をかばって死んだのが新之助である。この新之助の死に関しては、作家の森下佳子さんの「確信的な殺人」と言っては失礼だが、まさに作家特有の「殺すキャラクター」を、計画通りに殺したということではないか。なんだか変な言い方だが、私の作品でも、例えば「庄内藩幕末秘話」では、架空の人物三人を主人公にして、その主人公のうちの一人を殺すことによって、物語を盛り上げるという手法を使う。無名の登場人物で、主人公などにうまく取り入った、そのうえでキャラクターが鮮明で印象に残る人物を、最も格好良い状態に持ってゆき、その中で頂点の時の殺すというのは、策人の中で最も印象に残る。

この新之助については、常に「二番手」にいた人物であろう。平賀源内の助手として現れ、そして恋焦がれたうつせみ(ふく:小野花梨さん)と足抜けし、逃げた中で浅間山の噴火に会い、そして江戸に出てきて蔦屋重三郎の下についてやはり二番手となる。そしていつの間にか庶民目線になり蔦屋に頼りながらも蔦屋とは違う道に行って、打ちこわしをはじめ、そして蔦屋をかばって死ぬ。打ちこわしが始まる前に「田沼の犬」として多少対立した後に、命を盾にした和解をして死んでゆくという、最も格好の良い死に方である。正直に言って作家としては、悔しいくらいにうまくいった架空の人物の殺し方であろう。

この新之助の死に方にはいろいろな意味がある。一つは妻のふくのところに行くということ、そしてもう一つは蔦屋との和解。それに、打ちこわしを終わらせるというような意味も含まれる。しかし、ある意味で「屋っと田沼様の偉大さが江戸市中に伝わった」ということでもあるのではないか。同時に「一橋の陰謀を封じた」という意味合いもあるのではないか。その様にドラマの中ではあまり目立たないが様々な意味を持つ「死」を、本当にうまく書いたと思う。

この新之助の死の意味が、松平定信の寛政の改革の時代になって蔦屋たちが「市民のために書物で世の中を明るくする」ということを行う動機につながるのではないか。

一方田沼意次(渡辺謙さん)のことは「わすれておった。江戸城中の魔物」という言い方でわかるように、大奥の中での高岳と大崎のやり取りで、徳川家基を死に追いやった手袋が出てくることで、場面が変わる。つまり、庶民の動きではなくまた城中伏魔殿の動きになる。ある意味で、今の政治の世界において、国民の話と永田町の話が全く異なる論理であるかのように、違う話がうまく風刺的に描かれているのではないか。

そのような意味で、今回のドラマは「寛政の改革前夜」として、伏線を改修いつつ、新たな後半に向けての伏線を作った回ではなかったか。

宇田川源流

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