「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 人と人の関係が変わる「打ちこわしの陰謀」

「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 人と人の関係が変わる「打ちこわしの陰謀」


 毎週水曜日は、NHK大河ドラマ「べらぼう」について、思いついた感想などを書いている。実際に、この内容に関して言えば、本当に感想でしかないが、いつも一応「歴史小説作家」であるということから、「歴史」について少し見てみようと思う。

今回は、先週老中を罷免されてしまった渡辺謙さん演じる田沼意次について、その内容を見てみようと思う。何か「現代の政治を重ねて、田沼意次を見ると非常に似通った部分がある」ということがわかるのではないか。とくに「政治とカネか、政策的な実行力か」という選択が、日本ン庶民といわれる人々がどのように考えているのかということが、強く風刺されているのは興味深い

 田沼意次は1719年、下総国相馬郡田沼村(現在の千葉県成田市)に旗本・田沼意行の子として生まれまた。家は小禄の旗本だが、意次は若年から聡明で、時の将軍・徳川家重、家治に仕えることで頭角を現す。将軍家治からは特に厚遇され、側用人、若年寄、そして老中へと異例の昇進を遂げた。

 田沼意次の政治の特徴は、従来の朱子学的な「農本主義」から脱却し、商業や流通を重視した「重商主義政策」を積極的に導入した点にある。江戸幕府の財政再建を目指し、経済成長を促すさまざまな政策を断行した。

 専売制の拡大・株仲間の奨励・新田開発と殖産興業・貨幣政策ということを通して、一気に重商主義、もっと言えば「米本位制」から「貨幣経済」に改革した政治家であるといえる。また意次は人材登用にも積極的で、平賀源内など学問や技術に優れた人材を取り立て、蘭学・実学の振興に寄与した。その中の一人が平賀源内でいうことは間違いがないが、それ以外にも杉田玄白などがその例に挙げられる。一方で、これまでの幕府支配層とは異なる新興勢力を登用したことで、伝統的な譜代大名や旗本からの反発を招くことになった。また、株仲間や特権商人による賄賂や不正、腐敗が横行し、庶民や下層階級からの不満も高まった。

 田沼時代の後半には、天明期(1781年~1789年)の大飢饉が発生し、各地で農民の困窮や打ち壊しが頻発した。こうした自然災害に対して幕府の対応は後手に回り、田沼政治の効果が十分に発揮されなかった。また、飢饉によって「貨幣よりも米」という価値観で一気に米本位制に戻されたという部分が出てきた。これも田沼意次にとっては運が悪かったとしか言いようがない。

 そのうえ1786年、最大の後ろ盾である将軍・徳川家治が没する。田沼意次の失脚は急速に進無ことになる。家治の死後、田沼派の勢力は急速に失われ、反田沼派(特に松平定信ら)による巻き返しが本格化する。天明の大飢饉や経済混乱による民衆の不満、そして田沼政権下で顕在化した賄賂や汚職、保守派からの猛反発も、失脚の大きな要因となった。意次は老中職を罷免され、子の田沼意知も江戸城内で刺客に襲われるなど、田沼一門は急速に没落することになる。なお、意次はその後しばらく存命だったが、幕政への復帰はなかった。

 田沼意次の政治は、近年再評価が進んでいます。従来は賄賂政治、腐敗の象徴とされ否定的に語られることが多かったですが、現代では重商主義的な経済政策や人材登用の先進性、合理的な政務運営の面が高く評価されている。

 肯定的評価としては商業・流通の発展や財政再建、実学重視の政策が、後の近代日本の礎を築いたとの見方が強まりつつある。現実主義的で、時代の変化に柔軟に対応した政治家として評価されることも言われる。

 一方否定的評価としては、一方で、賄賂・汚職の横行や、庶民層の困窮、新興勢力への依存による伝統的支配層との対立など、政策運営上の課題や限界も多く、実際に飢饉や混乱に有効な対策を打てなかったことも批判されている。

ある意味で、現在の「政治とカネ」か「政治的実行力」かという選択肢が、今の政治とものすごく似ている感じがする。どの政党の誰とは言わないが、「裏金」などといわれながらお実行力があった議員、そのうえ米騒動、まさに、今の政治と今の日本の世の中にそっくりではないか。この田沼意次は、そのような現代の政治にも共通の何かを持った人であり、同時に、日本という国が、この天明年間から250年近く経過しているのに、まったく成長していないということの表れではないかとも思えるのである。

<参考記事>

一橋が渡した黒箱は何?「べらぼう」行方不明になってるアレか 大崎→次は高岳様を抹殺か 「どっちが女狐だ!」「箱の中、絶対アカンやつ」「何するつもりだ」

8/24(日) デイリースポーツ

https://news.yahoo.co.jp/articles/eaedde83e25d8466fc4f67a20762e210c5d96fa0

<以上参考記事>

今回からは将軍家治(眞島秀和さん)もいないし、田沼意次(渡辺謙さん)は老中の座を去ってしまった。そして今回第11代将軍徳川家斉(城桧吏さん)が就任している。このことによって時代が一気に変わった。

今回は、ふく(小野花梨さん)もその子供も失った新之助(井之脇海さん)が打ちこわしを始めるまでが描かれており、一方で、幕閣でも、また庶民の間でも田沼意次が「ヒール役」にされてしまったということ、そしてそのために一橋治済(生田斗真さん)がその中で陰謀を仕組んでいるということがうまく描かれている。

その一橋の陰謀が「大奥」「幕府」「庶民」と三つの階級で炸裂している。その中ですべて陰謀が行われているということになるのである。そしてその陰謀の対象は「田沼派」ということになるのである。そして幕閣は様々な意味で陰謀がうまくゆかない状態になっているが、一方で、民衆は簡単に陰謀にすっかり簡単に引っかかってしまう。その陰謀を見破っている蔦屋重三郎(横浜流星さん)は、その陰謀によって田沼意次が被害が少なくなるようにし、そのうえで、民衆が困らないように工夫しているということになるのである。

さて、今回で今まで一枚岩と思っていた内容が、時代と環境の変化で皆が違う動きになる。現代でいえば「一緒に仕事をした」とか「友達である」お言うような共通項があって「仲間」「戦友」というよう様になっていながら、環境が変われば、自我が出てきたり周囲の目があったりということで、仲間が徐々に変わってきてしまう。このドラマが森下佳子先生の作品である「大奥」や「JIN」や「義母と娘のブルース」のように、人の成長や時代の変化などによって、人と人の関係が変わっていってしまうということや、恋愛ものの内容のように、彼氏ができて女性の友人関係にひびが入るというような「定番の物語」ということのもう少し規模の大きな内容になっているのではないか。

そして、それが江戸というか日本全体に広がってしまって、打ちこわしが起きてしまった。そして、その打ちこわしが、様々な運命が変わってしまうということになるのだ。

来週以降が徐々に今までのような痛快な内容ではなくなってしまうのではないか。でもやはり学ぶことが見えるものが大きなところになるのであろう。

宇田川源流

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