「宇田川源流」【お盆特別:日本人と戦争】(2) ウクライナ・ロシア情勢と日本

「宇田川源流」【お盆特別:日本人と戦争】(2) ウクライナ・ロシア情勢と日本


 今年のお盆休みは、戦後80年ということで、日本人と戦争についてゆっくりと考えてみたいと思います。このお盆特別連載は、日曜日も土曜日もなくそのまま継続しようと思っていますので、よろしくお願いいたします。なお、「戦争」という特集をこの時期にしますが、大東亜戦争に関する内容は参考にしながらもその内容を書こうとは思っていないので、あくまでも現代人として戦争をどのように見るかということを考えましょう。

さて、個人的なことですが、今回の連載に関しては「生成型AI」を使ってみたいと思います。私としては初めての試みですが、「生成型AIによる下書きを、私が改定する」というやり方で実験的に使ってみたいと思っております。なお、生成型AIは本格的に使っているわけではないので無料で勝手に入ってきた(と言っては失礼ですが)Copilotを使ってみようと思っております。何か普段との違いがあると思った方は、そのような事情と拝察いただければありがたいです。

さて、2回目は「ウクライナ・ロシア情勢と日本」として、2025年日本が置かれた世界情勢を見てみましょう。

★ 戦争の状況

2022年2月24日に始まったロシアの全面侵攻は、北部(ベラルーシ方面)から首都キーウを狙う主攻、東部(ハルキウ方面)からの進撃、南部(クリミア方面)からの突破という三正面作戦で展開された。初動の狙いはウクライナ政府の中枢を迅速に制圧する“デカピテーション”作戦だったものの、ウクライナ軍の激しい抵抗と西側の軍事支援により主要都市は防衛され、ロシア軍は東部ドンバス地域への戦線集中を余儀なくされた。

 2022年半ば以降、ロシア軍はドンバス(ドネツィク・ルハンシク州)や南部ザポリージャ州などをめぐって総力戦を継続し、ウクライナ領土の約20%を占領下に置いた。一方、ウクライナ軍は夏季反攻を通じ、東部や南部の後退を強いたうえで、延べ4万7500平方キロメートルを奪還するに至った。

 2023年からは両軍ともに大規模な地上戦というより、長距離火砲や無人機(ドローン)、電子戦を駆使した消耗戦・ハイブリッド戦へと推移した。このハイブリッド戦争については次章にて解説をする。ウクライナ軍は米製HIMARSや各種ドローンでロシア軍の補給路を断つ「間接打撃」を強化し、ロシア軍は大口径砲と無人機攻撃で市街地を含む後方施設を標的とした。

 2025年初頭、戦線はドンバスからヘルソン─ザポリージャ─クリミア北部にかけて固定化し、いずれの側も大規模突破を果たせていない。ロシア軍は1月から3月にかけてドネツク州やクルスク州境界付近で限定的な前進を試みたが、ウクライナ軍の構築した防衛陣地と部分的な反撃により押し返され、膠着状態が続いている。

 現在も両軍の損耗戦は激化の一途をたどり、非正規戦・情報戦を含む複合的なハイブリッド戦の形態を強めている。戦線固定化に伴い、和平交渉や停戦合意の動きはあるものの、実質的な停戦ラインの合意は得られておらず、民間被害と人道危機は継続している。今後も欧米からの軍事支援やロシア国内の政治動向が戦闘の帰趨を左右するとみられる。

★ ハイブリッド戦争の展開

 ウクライナに対するロシアのハイブリッド戦争は、2022年2月の本格的な軍事侵攻よりもはるか前から始まっていました。このハイブリッド戦争とは、従来の軍事力だけではなく、サイバー攻撃、情報操作、経済的圧力、政治的工作など、複数の分野を組み合わせて相手国を弱体化させる現代的な戦争形態です。本稿では、ロシアがウクライナに対して侵攻前から展開してきたハイブリッド戦の戦術、その背景、そしてウクライナ社会や国際社会に与えた影響について詳しく解説します。

 ハイブリッド戦争(Hybrid Warfare)は、軍事的手段と非軍事的手段を組み合わせ、相手国の弱点を突いて社会全体を揺るがす手法です。具体的には次のような要素が含まれます。

・ サイバー攻撃によるインフラや政府機関の混乱

・ 偽情報(ディスインフォメーション)やプロパガンダの拡散

・ 経済制裁やエネルギー供給の操作

・ 政治的な分断工作や選挙介入

・ 「グレーゾーン」と呼ばれる、武力衝突に至らない範囲での様々な圧力

 この戦争形態は、標的国の混乱や不安をあおり、直接的な軍事行動に訴えることなく自国の利益を最大化しようとするものです。

 ロシアは、2014年のクリミア危機および東部ウクライナ(ドンバス)での紛争以降、本格的にハイブリッド戦術をウクライナに対して展開し始めました。その戦いは、さまざまな形でウクライナ社会へ浸透し、侵攻前から深刻な社会的・経済的・政治的影響を及ぼしてきました。

 ロシアはウクライナの政府機関、電力網、金融機関などに対する大規模なサイバー攻撃を複数回実施しました。代表的な事例として、2015年と2016年に起きたウクライナの電力網へのサイバー攻撃が挙げられます。これにより数十万世帯が停電し、社会インフラへの脆弱性が明らかとなりました。

 また、SNSやニュースメディアを活用した偽情報の拡散も盛んに行われました。「ウクライナ政府の腐敗」や「西側諸国の陰謀」といったプロパガンダにより、ウクライナ国内の世論を分断し、混乱を誘いました。こうした情報戦は、国内の親ロシア派勢力を強化し、社会的対立を激化させる要因となりました。

 ウクライナは天然ガスをロシアから多く輸入しており、ロシアはこのエネルギー依存を巧みに利用してきました。料金の値上げや供給の停止という経済的圧力が、ウクライナ経済の安定を脅かしました。さらに、貿易制限やウクライナ産品への追加関税などの経済制裁も行われ、ウクライナの経済的独立と発展を妨害しました。

 ウクライナの国家機関や政党、メディアには、ロシアの支援を受けた勢力が多く存在していました。こうした勢力を通じて、ロシアはウクライナ国内の政策形成や世論操作に間接的に影響を及ぼしました。特に選挙のタイミングでは、親ロシア派候補の支援や対立候補へのネガティブキャンペーンが展開され、民主主義の根幹を揺るがす事態となりました。

 2014年のクリミア併合およびドンバス地域での紛争では、「リトルグリーンメン」と称された正規軍とは異なる武装集団が登場しました。彼らは身元や所属を隠しながら武力を行使し、直接的なロシア軍の関与を曖昧にすることで、国際社会からの非難や制裁を回避しようとしました。このような非正規戦術は、ウクライナの治安や領土保全に深刻な脅威を与えました。

 ロシアのハイブリッド戦争は、ウクライナ社会にさまざまな影響を及ぼしました。サイバー攻撃や情報戦による政府機能の混乱、エネルギー危機による国民生活への打撃、そして社会的分断の深化などが具体例です。また、これらの事態はウクライナの国際的信用や経済成長にも影響を与え、欧米諸国との関係性を一層強固にする要因ともなりました。

国際社会もロシアのハイブリッド戦術に強い懸念を示し、NATOやEUはウクライナ支援を強化しました。また、各国はサイバー防衛や偽情報対策の重要性に改めて気づかされ、新たな安全保障戦略の必要性が浮き彫りとなりました。

 このような逆境の中で、ウクライナ国民は情報リテラシーの向上や自国主体のメディア育成、エネルギー多角化の推進など、自主的な防御策を打ち出してきました。市民はSNSや独立系メディアを活用し、偽情報の拡散を防ぐ活動も盛んに行っています。

★ NATOの対応と防衛費増加の動き

 2023年以降、NATO諸国はウクライナ支援の強化とともに、自国防衛力の増強にも動き出した。ドイツやポーランド、バルト三国などは防衛費を大幅に引き上げ、新たな装備や部隊の配備を進めている。アメリカもウクライナへの軍事・経済支援を継続しつつ、欧州防衛のための軍備増強を推進している。

 また、フィンランドとスウェーデンがNATOに加盟し、同盟拡大が実現。ウクライナの加盟については慎重論も根強いが、連携強化や訓練・装備供与を通じて関係深化が図られている。NATO全体としては、ロシアの脅威に対抗するため、集団防衛の枠組み強化と加盟国間の結束が重視されている。

★ 日本の対応と関連動向

 日本はウクライナへの人道支援や復興支援、非軍事物資の供与を拡大し、G7をはじめとする国際会議で主導的役割を果たしている。また、対ロシア制裁への参加、エネルギー・経済安全保障の強化、サイバー防衛やインフラの強靭化にも注力。国内では、防衛費のGDP比2%への引き上げや、防衛装備移転の枠組み見直しが議論され、国防体制の強化と国際連携の深化が進んでいる。

 また、日本企業のウクライナ復興支援への参画や、難民受け入れ、食糧・医療支援など多角的な取り組みも目立つ。アジア太平洋地域においては、中国・北朝鮮の動きと連動した安全保障戦略の一環として、ウクライナ支援が位置づけられている。

一方日本がウクライナ侵攻をめぐる国際危機から受ける影響と、今後日本が気をつけるべきポイントもあります

・ 外交・安全保障面

 日本政府は侵攻直後からG7や欧州連合と歩調を合わせ、強力な非軍事化・非核化要求と経済・金融制裁を発動。対露ビザ発給停止や、在日ロシア大使館員の国外退去要求など厳格措置を継続している。

 同時に、米欧が打ち出す軍事支援や制裁回避の動きを踏まえつつ、「アジア太平洋における安定」の視点から中国・北朝鮮、台湾情勢との連動にも警戒しなければならない。

・ サイバー・情報安全保障

 ロシアは侵攻以降、WhisperGateなどのマルウェアやDDoS攻撃を併用し、欧米インフラへのサイバー攻撃を激化させている。日本も標的となる危険性が高く、政府・企業の防御体制は依然として脆弱だ。

 同時に、偽情報・プロパガンダがSNSを通じて国内世論に波及しており、「多元的視点」を持ったメディアリテラシー教育と公的なファクトチェック体制の整備が急がれる。

・ 防衛協力と国内体制

 北大西洋条約機構(NATO)の拡大や米欧の軍事支援動向を注視しつつ、日米同盟・オーストラリア・インドとの安全保障協力を深化させる必要がある。

 国内では、防衛費の適切な増額と共に、重要インフラ(エネルギー・通信・金融)への物理・サイバー両面のレジリエンス強化が欠かせない。

 まとめると、日本はウクライナ情勢に伴う「制裁や非制裁措置の遵守」だけでなく、エネルギー・食料の安定調達、サイバー防衛、情報空間の健全化、そしてアジア太平洋全域の安全保障環境を見据えた総合対応力の向上を図る必要があります。これらを怠れば、外部ショックが国内経済や国民生活を直撃する「見えない脆弱点」を露呈しかねません。

今後も欧米との連携を維持しつつ、地政学リスクを踏まえた自立的体制をいかに確立するかが、日本の国家的課題となるでしょう。

★ 世界的な和平に関する動き

 国際社会は、ウクライナ危機の早期収束と恒久的な平和構築に向けて、さまざまな外交努力を重ねている。国連や欧州諸機関を中心に停戦交渉や人道回廊の設置が試みられてきたが、領土問題や安全保障体制を巡る溝は依然として深い。

2 024年以降、トルコや中国、ブラジルなど非欧米諸国が仲介を試み、複数国による和平提案や「グローバルサミット」の開催も議論された。紛争当事国の意見対立や信頼欠如が交渉進展を難しくしているものの、停戦監視や民間人保護、復興支援などを軸に、新たな国際的枠組みの模索が続いている。

★ 今後の展望と課題

 2025年現在、ウクライナ情勢は依然流動的であり、軍事的解決と外交的解決の間で揺れ動いている。ハイブリッド戦争の脅威が続くなか、関係国・国際機関の協調と対話が不可欠である。ウクライナの主権と領土一体性、ロシアとの安定的関係、NATOや日本を含む国際社会の役割、そして恒久的な平和体制の構築に向けて、今後も粘り強い努力が求められる。

 混迷を極める中で、グローバルな視点からの調整と協力が、ウクライナと世界の安定、さらには新たな国際秩序の形成に向けた鍵となるだろう。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

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