「宇田川源流」【日本報道検証】 タイ・カンボジアで戦争勃発の背景とは

「宇田川源流」【日本報道検証】 タイ・カンボジアで戦争勃発の背景とは


 毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。

 さて、今回は、先日から突然始まったタイ・カンボジア国境における武力衝突に関してその背景を探ってみたい。

そもそも、タイとカンボジアの関係が全くわからないという人が多いのではないか。まずはこのようにわからないことがある場合は民族と宗教を調べるということをしてみると良い。そのうえで歴史を見てみればよいというのが問題解決の手法である。

タイは、タイ族75%、華人14%、その他マレー系、インド系、モン族のほか、カレン族を始めとする山岳民族などがいる。タイの宗教は基本的には仏教で、ゾウがご神体となっている。この宗教に関してはタイに遊びに行った人にはよくわかるのではないか。

一方カンボジアは、クメール人が86%、ベトナム人が5%、華人が5%、その他4%がチャム族などの少数民族である。クメール語が公用語に使われることが多い。宗教に関してはやはり仏教が多いのであるが宗教の自由が決められているためには中にはイスラム教も存在する。

このように見てみれば、中東のように宗教による対立が存在しないということがわかるのではないか。

では歴史的に見てみよう。すると、フランスが1863年にカンボジアを保護領化し、翌19世紀末から20世紀初頭にかけてシャム(現タイ)との間で国境線を画定した。1904年と1907年のフランス・シャム間条約では、ダンレック山脈(プレアヴィヒア寺院周辺)などが確定されたが、当時の地図解釈の相違が後の紛争の火種となったという歴史が見えてくる。その前も王朝が事なり民族も異なる二つの国が、地図の解釈の総意で大きな火種ができているということになる。1953年にカンボジアがフランスから独立した後も、プリアヴィヒア寺院周辺の帰属問題は未解決のままだった。1962年、国際司法裁判所(ICJ)は同寺院をカンボジア領と認める判決を下し、タイ側の主張を退けた。これにより一時は緊張が緩和されたが、境界全域の最終画定には至らなかったのである。

<参考記事>

タイ・カンボジアの対立激化、相手が先に攻撃したと両国が主張…背景には「お互いの内政事情」

7/25(金)読売新聞オンライン

https://news.yahoo.co.jp/articles/c87db5d25c93ff3c643cfc5542282ea8c4462a20

<以上参考記事>

 1994年、武力衝突後の国境管理に関する二国間協議が再開された。2000年には陸上国境の現状維持を定めるMOU43、2001年には海上共同資源開発を規定するMOU44が署名され、技術協議を行うJBC(Joint Boundary Commission)が設置された。しかしタイ国内の政情不安を背景に協議は断続的に中断と再開を繰り返した。そのような中、2008年初、カンボジアがプレアビヒア寺院遺跡を世界遺産に登録するように、ユネスコの世界遺産委員会に申請した。ユネスコの世界遺産委員会が、プレアビヒア寺院遺跡をカンボジアの世界遺産に登録することにした。それに対して、タイ国内の政治団体や市民団体がこの合意に激しく反発した。

 このユネスコの世界遺産では、歴史的な遺産であると同時にその内容が政治的に利用される場合があり、日本の通称軍艦島などでも様々な政治的な利用がされてしまっている。このプレアビヒア寺院も同じで、2008年7月、タイ軍兵士が国境を越えてカンボジア領に侵入し集結した。同時に、カンボジア軍もタイとの国境地帯に数百人規模の部隊を配備した。同年10月、両軍間はプレアビヒア寺院から数キロしか離れていない国境地帯で銃撃戦を進め、カンボジア兵2人が死亡、タイ兵7人が負傷する衝突に発展することになる。

2011年末の衝突後、ICJは2013年に改めてカンボジア側を支持し、プリアヴィヒア寺院周辺の領有権問題を法的に決着させた。2012年7月、両軍は国境の紛争地域から撤兵し、2013年11月、カンボジアの提訴を受けた国際司法裁判所は寺院周辺の土地もカンボジアに帰属すると判断し、懸案の領有権問題は一旦終結した。

 しかし、2023年以降、タイ国内の与野党対立激化や政権交代の混乱を背景に、JBC協議は長期停滞している。そして今回2025年7月24日、両軍は未画定地帯で小火器と迫撃砲による砲撃戦を再開し、タイ軍12人が死亡・負傷、カンボジア軍1人が戦死する衝突に至った。タイ空軍はF-16戦闘機6機を投入し、カンボジア軍拠点を空爆したと報告される一方、カンボジア側は「タイ軍が先制砲撃を行った」と主張している。両国は国境通過制限や電力・物資輸入停止などの経済制裁を相次いで発動し、国際社会(ASEAN、国連)の即時停戦要請が相次いでいるという事態に陥っているのである。

さて、ここで見てみればわかるように、また両国に中華系民族の流入がありまた、タイの政治的な混乱も中国の経済的な介入なども見られる。また、そこにある観光ブームなどでの経済効果もあるのではないか。ある意味で世界の紛争にすべて「経済的な問題」や「外国からの介入」が見られる。その内容をしっかりと精査しなければ真の平和はあり得ないのではないか。

宇田川源流

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