「宇田川源流」【日本報道検証】 トランプ外交が作り出した英仏核連携の歴史的合意

「宇田川源流」【日本報道検証】 トランプ外交が作り出した英仏核連携の歴史的合意


 毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。

 さて、今回は、先週発表されたイギリスとフランスが連携して核兵器の防衛を行うということです。

イギリスとフランスの関係は、ガリア侵攻以前のケルト人同士の交流に始まり、古代ローマ時代を通じて互いに接触が続いた。その後、中世にはノルマン・コンクエスト(1066年)など王朝間の覇権争いを契機に激しい戦闘と対立を繰り返している。第一次世界大戦では同盟国として中央同盟国に対抗し、共に勝利を収めた。また第二次世界大戦でも連合国として枢軸国に立ち向かい、戦後の国際秩序構築に協力している。ちなみに第二次世界大戦時は、フランスは早々にンナチスドイツに占領されてしまったので、連携するというよりはイギリスとアメリカがフランスを助けたというような感じであったかもしれない。

 NATOやEUを舞台に安全保障・経済統合で協調。フランスの対英EU加盟見送り(1963年)や英仏のEU離脱をめぐる駆け引きなど、戦略的自主性を巡る意見の相違も見られる。21世紀に入り、最新鋭軍事技術の共同開発や情報共有、気候変動・テロ対策など多岐にわたる分野で戦略的パートナーシップを強化している。

 このようなことから、両国の基本的な外交スタンスは、「最も親愛なる敵」から「戦略的パートナー」へ:長年の対立を乗り越え、いまや欧州安全保障やグローバル課題での共同歩調を重視する。また、自主的協調と選択的連携:欧州統合や国際連合、安全保障同盟では協力しつつも、植民地史や産業保護など歴史的背景を踏まえた自主的立場の保持にこだわる。そのうえで歴史を踏まえた相互理解:1000年以上にわたる交流と対立の歴史を共通認識とし、対話を重ねることで「信頼できる協力相手」として互いの利益を調整している。このように「歴史的な敵対から戦略的な友好へ」という長い変遷を経て確立されていると言える。

<参考記事>

英仏、核抑止力で「歴史的」連携 首脳が合意

7/11(金) ロイター

https://news.yahoo.co.jp/articles/70bab9138a6bd2f81c46662a04b195e9eb9271a1

<以上参考記事>

 今回のニュースでわかることは、NATO、少なくともイギリスとフランスは、「戦争中」という感覚であるという事であろう。フランスからキーウまでは約2400キロメートル。つまり東京にいて台北で戦争が起きている、まさに「台湾有事」と同じ状況が、今のウクライナ戦争であるということになる。当然にいつこちらに飛び火してくるかわからない状態である。6月のNATOの会議で、岩屋外務大臣が石破首相の代理で出席したが、その中で関税交渉なども全く無視してNATO各国がトランプ大統領を抱き込みにかかったのは「戦時中である」という共通認識から生まれたものである。要するに「関税よりも国民の命」ということが選択肢でありまた各国の国民のコンセンサスのとれた内容であるということになる。

さて、そのような「戦時中」は、上記にもあるようにそれまで対立していたイギリスとフランスも、連携している。まさに今回の核抑止協力は、そのような意味合いがある。

 英仏はそれぞれ独立した核抑止力を保有する唯一の欧州諸国として、初めて両国間で連携を図り、「英仏核運営グループ」を設置して核抑止策の統合管理を開始した。この協力は米国の「核の傘」への過度依存を回避し、欧州自身が自らの安全を担保する戦略自主性を高める役割を果たす。

 NATO加盟国同士で核抑止を共同運用することで、同盟内の抑止力の一体性と信頼性を強化する狙いがあり、とりわけ米国の安全保障コミットメントに不確実性が増す中、欧州内での抑止協力は「最低限の安全保障装置」として期待される。

そして戦時中の敵対国であるロシア抑止のメッセージとしては、ウクライナ侵攻を受け、スターmer英首相とマクロン仏大統領はロシアの軍事的威嚇に対抗するため、核抑止協力を強化することで合意し、両首脳は核兵器の先制使用を否定し、必要な場合は相互に協調して対応するとの共同声明を初めて発出したという意味合いがあるのである。

 ロシアによるウクライナ侵攻を欧州全体への直接的な安全保障上の挑戦と捉え、核抑止力がその最終的な抑止線と位置づけている。そのうえで米国の安全保障コミットメントに対する疑念が広がる中、NATO内だけでなく英仏が主導的に欧州防衛を補完すべきとの意識が共有されている。同時に、北朝鮮やイランの核拡散問題、中国の軍事的台頭、テロリズムなど多様化する安全保障課題に対し、欧州の中核として英仏が連携し続ける必要性を強く認識している。

 このように英仏の核抑止協力は、欧州の戦略自主性強化や同盟補完、対ロ抑止メッセージの三つの軸で大きな意義を持っている。両国は「ロシア侵略」「米国同盟の不確実性」「多様なグローバル脅威」という共通の認識を背景に、安全保障上の最終手段として核抑止力の連携を深化させているのである。

さて日本。

途中で「現在のウクライナの状況は、東京と台湾の距離と同じ」ということを書いたが、まさに、その有事が勃発しそうな状況でありながら、その脅威の国に対してパンダとか牛肉の輸出ということを言っている。敵国に降伏して貢物を朝貢している姿に近いと感じるのは、私だけであろうか。何か情けない所がある。そのうえ、現在戦争しているロシアが不法に実効支配し、軍事基地を建設している国後島と北海道の間は16キロしかない。要するに、東京駅から吉祥寺駅くらいの距離しかないのである。英仏がこのような歴史的合意を示し、なおかつ世界的な問題を考えているにも関わらず、脅威が16キロに迫り、また、南でも台湾有事を懸念する日本は何をしているのであろうか。アメリカが防衛費を上げろと言ってくるのは、当然のことと思うが、石破内閣の決断を望む。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

0コメント

  • 1000 / 1000