「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 蔦重を取り巻く三者三葉の女性たちの使い分け
「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 蔦重を取り巻く三者三葉の女性たちの使い分け
毎週水曜日はNHK大河ドラマ「べらぼう」について書いている。今回で24回ということで、ちょうど半分ということである。ドラマとして伏線をしっかりと作った侵攻は非常に面白いし、「ああ、これがこうつながるのね」というような感じになっている。今回も軽く地震の描写があった。これが次回の「天明の大地震」そして「天明の飢饉」につながることになるのではないか。その伏線がしっかりと仕込まれているのが興味深い。
さて、毎回のことながら、前半は歴史的な「小話」を見てみよう。今回は自分つではなく、「江戸時代の日本橋」である。
日本橋は、江戸時代から武家屋敷が立ち並ぶ山手に対して、町人文化の中心地である下町を代表する地域であった。日本橋は江戸時代初期から江戸の中心市街地としての歴史と伝統を持つ数少ない地域であり、江戸時代の初期の物語などでは「一心太助」などが、「てやんでぃ!べらぼうめ」と言いながら闊歩していた印象がある。
江戸時代には日本橋は五街道の起点として江戸における交通・物流の要所であった。その名残で現在でも道路標識における東京までの距離計算の起点は、日本国道路元標が設置されている日本橋(橋梁)となっている。
江戸時代当時から金貨幣の鋳造所である金座や両替商など金融機関がこの地に集積し、金融・商業の中心地であった。また日本最古の百貨店であり三井財閥グループのルーツといわれる日本橋三越本店を含む老舗の商業施設も多く、日本橋地域北東部に位置し旧奥州街道沿いの街の東日本橋や日本橋横山町、日本橋馬喰町には日本最大の問屋街が形成されている。また、摂津国佃村からの移住者である森孫右衛門一族と、その住民達は関東大震災で倒壊して、その後京橋区(現在の中央区)築地に築地市場として移転するまでの間、当地に魚河岸を設置し、新興都市として発展しつつあった江戸の食品流通を支えてきた。また、江戸橋の南詰に所在する日本橋郵便局(後に東京駅前に移転した旧東京中央郵便局)は、1871年に駅逓司と郵便役所が置かれた「日本の郵便発祥の地」である。
現在の日本橋を中心とした地域は、古くは武蔵国豊島郡に相当し、その中の江戸郷前嶋村と呼ばれる地域だったという。江戸は鎌倉時代の江戸氏の支配から太田道灌、さらに後北条氏を経て徳川家康が幕府を開く。その過程で、早くに町地として開発されたのがこの日本橋周辺の地域であった。さらに上でも触れたように日本橋が架けられ交通の要所として定められてからは、金座や銀座が置かれ、日本初の百貨店三越の前身である越後屋をはじめとする大店が集まるなど、江戸を代表する場所として殷賑を極めた。
まさに「町人文化」と「武家のお墨付きの遊郭街」というのは、ある意味で近しい関係であるが、同時にお互いがお互いを警戒する関係であったのではないか。町人文化を代表する日本橋の大店でありながら、吉原で散財して店をつぶしてしまった例は少なくない。今回の「丸屋」もその中の一つなのであろう。
<参考記事>
『べらぼう』えなりかずき、ひょうろくとの兄弟役にしっくり「完全にDNAで共通するものを感じる」
6/22(日) マイナビニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/3289e0e5d5cb38060692bd21e6da0ce8a4dc8a91
<以上参考記事>
史実でいえば「天明三年」というのは、ある意味でかなり様々なことがあった一年である。浅間山の大噴火にそれに基づく大飢饉が7月にあり、そして、8月には田沼意次(渡辺謙さん)の息子田沼意知(宮沢氷魚さん)が佐野政言(矢本悠馬さん)が殺害するというような事件もあった。この年に田沼意次の政権の基盤が崩れてしまうということが発生するのである。
このようなことを知っていると、誰袖(福原遥さん)がかなり悪い女を演じながら田沼意知への恋を成就させようとしていた気持ちなどがどうなるのかというようなことになる。今、誰袖の今の行動そのものが壮大な彼女の「不幸な終末」の伏線になっているということがあるのではないか。
さて、それらの「大事件の前夜」というのが今回である。
「大事件の前夜」というのは、見ている側はわかっているが、当の本人は全くわかっていない。もちろん霊能者や予言者は、それらがわかっている人もいるが、誰も未来はわからないものなのである。その未来が見えていないことから、様々な動きが「悲劇的」に見えて来るのが、ドラマのうまい作り方である。
ドラマのストーリーは後追いすることは止めて置く。
今回の注目はまずは丸屋貞(橋本愛さん)のキャラクターであろう。蔦屋重三郎(横浜流星さん)と幼馴染で、そして吉原のためにそして蔦屋重三郎と共通の夢のために、身をささげた瀬川(小芝風花さん)。そして幼いころから吉原に売られてきていて、吉原にすっかり染まり、天性の悪女ぶりを披露し、そして男性を篭絡しながら女性特有の権謀術数の中で自分の夢を実現する誰袖という、蔦屋重三郎を取り巻く、「蔦屋を好きな女性」とは全く異なり、「男性を遠ざけ、特に吉原を忌み嫌う女性」として描かれている。ある意味で、三者三様の女性像があり、その女性像の中で最も初対面の印象が悪かった丸屋貞が蔦屋と所帯を持つというのは、なかなか面白いということになるのではないか。実際の世界でも、「はじめお互いの印象はよくなかった」という二人が結婚するというような話があるのではないかと思う。そしてそのようなカップルの方が長続きするというのは、なかなか面白い。今回もそのような「実際の世界の描写」がしっかりとあったのではないか。
また、この丸屋貞を取り巻く環境は、日本橋の街の中の人々や吉原と日本橋の確執などがその背景にある。もちろんドラマの中では丸屋の倒産ということもその中にあるが、それ以上に日本橋の人々を代表しているような形になったのではないか。
もう一つが誰袖の内容になる。誰袖は、いつの間にか蔦屋重三郎から田沼意知に身請けをお願いするというような状況になっているのであるが、そのために松前藩の抜け荷を見つけることになる。松前廣年(ひょうろくさん)を篭絡するがそれが兄松前道廣(えなりかずきさん)に知れてしまう。そしてその松前道廣が誰袖にあって抜け荷を一緒にやるということにつながるのだ。こちらは、一橋治済(生田斗真さん)の陰謀ということになる。その陰謀が田沼意知の殺害への大きな伏線につながっているということになる。なお、記事はひょうろくさんの演じる松前廣年の篭絡される姿はなかなか良い演技であった。
まさに、二つの伏線がうまく入り混じっている。私の予想だが、この二つの動きが、誰袖と、そして九郎助稲荷の前で田沼意知に会った蔦屋重三郎に降りかかるのではないか。なんとなくそんなことを思われる物語になった。
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