「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 陰謀渦巻く「長きにわたる平和の世」
「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 陰謀渦巻く「長きにわたる平和の世」
毎週水曜日は、NHK大河ドラマ「べらぼう」について、普通に見た感想を書いている。一応歴史小説作家であるということから、もしかしたら他の人々と少し違う内容の感想かもしれないということかもしれないので、何か参考になることがあれば、皆さんお役に立つということではないかと思っている。
さて、今回もドラマの内容に入る前に、登場人物の内容を見てみよう。今回は徳川家基(奥智哉さん)について見てみたい。今回のドラマで急死してしまった悲劇の人である。役名よりも「西の丸様」と呼ばれていた人である。
徳川 家基は、江戸幕府第10代将軍・徳川家治の長男。将来の第11代将軍として期待されていたが、急死した。徳川宗家の歴史の中で唯一「家」の通字を授けられながらも将軍職に就けなかったため、「幻の第11代将軍」とも呼ばれる。
田沼意次の推薦で側室となったお知保の方(蓮光院)と家治の間に生まれる。生後まもなく大奥女中の広橋の願いもあり、男子のいなかった家治の御台所・倫子の養子となって成長した。幼年期より聡明で文武両道の才能を見せる。成長するにつれ政治にも関心を持ち、参画する姿勢を表し、老中・田沼意次の政治を批判している。
しかし安永8年(1779年)2月21日、鷹狩りの帰りに立ち寄った品川の東海寺で休息中に突然体の不調を訴え江戸城に急ぎ運ばれたが、3日後の2月24日に江戸城で死去した。享年18(満16歳没)。ちなみに、今回の役柄では鷹狩りの最中に突然死んでしまったという描写で、3日間苦しんでい辺り、寺で休憩中というような描写はなかった。
自らの後継ぎを失った父・家治は、食事も喉を通らなくなるほど嘆き悲しんだという。家基の死により、家治の子で存命の者はなくなり、家治はそれ以後、死去するまで子を儲けることはなかったため、家治の血筋は断絶することとなった。
その突然の死は、家基の将軍就任によって失脚することを恐れた意次による毒殺説、嫡男・豊千代(後の徳川家斉)に将軍家を継がせたい一橋家・徳川治済による毒殺説など、多くの暗殺説を生んだ。家基に代わって第11代将軍となった家斉は、晩年になっても家基の命日には自ら墓所に参詣するか、若年寄を代参させていた。血縁関係の遠い先代将軍の子供にここまで敬意を払うのは異例である。
<参考記事>
「べらぼう」でホラー回!まさかのラストに戦慄
2025年4月13日 20時55分
シネマトゥデイ
https://www.cinematoday.jp/news/N0148362
<以上参考記事>
今回のドラマは、幕府中枢が中心で、吉原はあまり舞台にならなかった印象である。
実は、「安永6年」(1779年)は、その年までの歴史の主人公の多くが死んでしまうという「魔の安永6年」と言われている一年であり、その「魔」が始まったというのが今回である。この年に徳川家基、松平武元(石坂浩二さん)、が亡くなりまたロシアは通称を求めて北海道にやってくるが松前藩が断る。そして、桜島が大噴火し、後桃園天皇が崩御、第119代天皇・光格天皇が即位するというような時代の変わり目の都市であるというような感じがする。
そのような中ドラマの冒頭、瀬川(小芝風花さん)と一緒に所帯を持った夢を見る蔦屋重三郎(横浜流星さん)が出てくる。その中で鱗形屋(片岡愛之助さん)が廃れてしまって、青本を出す力がなくなったので、蔦屋に青本を出すように勧める周辺の人々ということが出る。初めに来週以降の蔦屋重三郎の活躍を予感させる内容ではなかったか。
一方その途中で平賀源内(安田顕さん)が、エレキテルに関して癇癪を起して刀を振り上げるような状況が出る。まさに、この越智の平賀源内の没落の話が出てくる。この場面の「俺なにしてるんだろうな」といって、平賀源内が学者として世に広まった本を手にしている姿、そして冒頭杉田玄白が「当代一の蘭学医」として紹介われるのも、時代の移り変わりを強烈に印象付ける内容になっている。ちなみに鱗形屋もこのあたりで没落し、本当に安永6年に「新旧の入れ替わり」が起きるような印象が出てくるのであり、ドラマの中では非常に良く表現されている印象である。
徳川家基の死は、2月の鷹狩りの時である。これが冬の寒い日であるということはあまりうまく表現できていないが、そのような日であったので、寒暖差から心臓発作を起こしたという事であろう。しかし、それまでが健康であったので、何らかの形で「暗殺された」というように謂れ、当時もそのような噂が多く流れた。そしてその黒幕といわれたのが、一人が田沼意次、そしてもう一人が徳川治済(生田斗真さん)である。徳川治済に関しては、この後に自分の子供であり家斉を11代将軍にして、自分は権勢を誇る人物であるが、ドラマの中では寺田心さん演じる松平定信(まだ田安家にいた)の兄で田安家の当主である、兄の徳川治察が死んだときも浄瑠璃で遊びながら、暗殺したのではないかというような映像になったことを思い出す人もいるのではないか。まさにそのような「陰謀家」であるというような印象で、このドラマでは書かれている。
まったくその場面は書かれていないが、徳川家基も、そしてドラマの最後に出てくる松平武元の死も、いずれも徳川治済が暗殺した印象になっているところが、なかなか興味深い。暗殺や陰謀で将軍家を狙うという、このような感じが、ドラマの基軸になっていて、それが吉原をめぐる出版界でも、また将軍系や老中の権力の座の中にあっても行われたということなのであろう。
ある意味で、「長きにわたる平和は、陰謀などを産む」というようなことになっているのかもしれない。
いずれにせよ「陰謀」がドラマを面白くしている部分は間違いがなくあるので、その陰謀を楽しみにながらドラマが進んでゆくこと、そしてその時代の移り変わりをドラマを巳ながら感じてゆけば良いのではないか。そしてその時代の波を蔦屋重三郎がうまく泳いでゆくことの痛快さを感じるのではないか。
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