「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 吉原流「あきらめさせ方」のひどさ

「宇田川源流」【大河ドラマ べらぼう】 吉原流「あきらめさせ方」のひどさ

 毎週水曜日は、大河ドラマ「べらぼう」について、なんとなく思ったことを書いている。もちろん、ドラマを見ての感想もしっかりと話をさせてもらう。もちろん今年もドラマの制作などとは全く関係がなないし、また関係者に知り合いもいない。その中でドラマを見た感想を見るということになる。

さて、今回はドラマの感想の前に、まずはまめ知識といこう。今回は鳥山検校(市川隼人さん)についえて話をしてみよう。

まずは、「検校」とは個人名ではない。当時、盲人の多くは、互助組織である当道座に入門し、三味線や琵琶、琴といった芸能、俳諧などの文学、あるいは按摩などの職を得て生計を立てていた。この組織は、鎌倉時代から室町時代にかけて形成され、もともとは盲人が琵琶などを演奏することが活動の中心だったとされる。このように目が見えない人々は、昔から保護されていたのである。ちなみに、鎌倉時代から組織はできていたが、その中にあるのが「耳なし芳一」というような感じではないか。目の見えない琵琶法師が平家の亡霊に平家物語を語るという物語であった。その様に目の見えない人はある程度琵琶法師となったのではないか。当道座には検校、別当、勾当、座頭など73もの階級があり、業績を上げたり、または金銭を支払ったりすることで昇進できる仕組みだった。最上位の検校になるためには、700両以上の資金が必要だったとされる。こうした視覚障がいを持つ人々のための保護政策は、幕府やそれぞれの藩によって整備されており、具体的には年貢の免除や金銭面での援助などだが、江戸幕府は高利貸し営業の権利も与えていたという。その利益を互助資金に充てさせるためだったようだ。

 こうした特権を利用し、武士や商人に貸し付けて莫大な財産を築き、検校の座に上り詰めたのが鳥山検校である。苛烈な取り立てをしていたようで、少しでも返済が滞れば、その門前に大勢のならず者を立たせ、これ見よがしに罵倒の声をあげさせたらしい。借り手が武士の場合、主君に借金を知られたくない弱みもあって、抗議のしようもなかった。厳しい取り立てに耐えかね、ついに武士をやめて家出したり、切腹する者もいたという。

この鳥山検校が1775(安永4)年松葉屋の花魁・五代目瀬川(小芝風花さん)を身請けした。この見受けの金額は1400両となる。現代でいえば1億5000万以上であろう。

しかし、この身請け話が世間に注目されたことで鳥山検校の存在が際立ち、ついに奉行所が動き出した。鳥山検校が貸し付けた相手は、旗本や御家人といった武士が多く、夜逃げや破産など数多くの被害が報告されていたからだ。その結果、鳥山検校は全財産を没収の上、江戸を追放された。1791(寛政3)年に鳥山検校は復帰したとされるが、再び金融業に携わったかどうかなど、活動の実態は不明。なお、瀬川のその後も諸説あり、詳細は分かっていない。

<参考記事>

「小芝さんはまだ退場しません」 『べらぼう』公式SNSが投稿

2025年3月2日 17時10分 オリコン

https://news.livedoor.com/article/detail/28258612/

<以上参考記事>

 今回はその五代目瀬川の身請け話とそれに伴う吉原の動き、特に蔦屋重三郎(横浜流星さん)とのお互いの気持ちが見えてきたところが大きな問題である。

幼馴染が、いつまでも友達でお互いの気持ちを気が付かないということはよくある話だ。古来より物語の世界では、理想の女性というのは「源氏物語の紫上」と「伊勢物語の筒井筒」ということになる。紫の上は、幼少のころから自分と一緒に生活し、自分の好みの女性の育てるというやり方である。これに対して、筒井筒は幼馴染を妻にするということである。要するに、お互いの嫌なところまですべて知っているということが重要なのである。そのようにして全てがわかっているということが、一つの理想の妻ということにある。

逆に言えば、身請けのような、生い立ちも何も知らない女性を金で買ったとしても、あまり良い妻にならない。瀬川にとっては鳥山検校と蔦屋重三郎では、蔦屋の方が理想の夫婦になることができるということを意味しているのである。

そのお互いの気持ちがよくわかったということが、今回のドラマである。実際に、「一番大事なものは、失うとわかった時にわかる」というものである。これが恋愛ドラマの王道であろう。このドラマもまさにその内容になる。

そのような蔦屋重三郎をあきらめさせる方法があまりにもすごい。さすがに吉原であろう。瀬川が最も見られたくない、他の男と性行為をしている姿を見せるというような形になる。蔦屋は、そのことであきらめるということになるのである。NHKで、性行為の場面などを見せるというのは、なかなかない。ましてや、小芝風花さんをそのような演技をさせるというのはなかなかできない描写ではないか。実際は、赤い襦袢を着せて、男性にまたがっている姿を薄く開いた障子から見せたということになる。NHKとしては目いっぱいの描写ではなかったか。

それと井之脇海演じる小田新之助と小野花梨演じるうつせみが足抜けする。そしてその足抜けが失敗する。その失敗が蔦屋重三郎と瀬川に与えた影響は最も大きい。二人だけのことを考えるのか、全体を考えるのかということになる。そのことがまさにそのことが大きな二人の決断になるのである。

さて、その瀬川はどうなるのか。ドラマの先はよくわからない。実際に、瀬川が身請けされた後、どうなったのかはよくわからない。しかし、その「歴史上よくわからない」ということは、そのまま作者の自由に描くことができるということである。そのことが国庫からドラマの中に様々な影響を下ろすことになる。それはまた楽しみなドラマになるのではないか。

宇田川源流

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