「宇田川源流」【お盆休みの怪談】 瓦礫整理の手伝いをする幽霊
「宇田川源流」【お盆休みの怪談】 瓦礫整理の手伝いをする幽霊
本日から「お盆休みの怪談」として、お盆休みの、政治や経済があまり動かずに、様々な仕事が停滞している時期に、今まで書いていた会談などでその話をしてゆこうということを考えている。このまま20日までこの会談企画をしようと思っているのでよろしくお願いします。
「がれき」と一言で片付けてしまえば、すべて持ち主もわからない「ごみ」と思ってしまうかもしれません。もちろん持ち主が処分したものも少なくありませんが、しかし、津波や自身のような場合、家ごと流されてしまったもので、そのまま持ち主もわからないでがれきの中に入ってしまう「思いの強いもの」もあるのではないでしょうか。一つ一つのものに、「魂」と「思い」が詰まっているのであると思います。
瓦礫整理の手伝いをする幽霊
この町では、地震に津波だけでなく火事まで発生しました。千人を超える行方不明者を出したこの町では、幽霊話はそんなに珍しい話ではなく、震災後少し経つと、日常の会話として、まったく珍しくない会話になってしまいました。
何しろ昼夜を問わず、市街地や森の中などに死んだはずの人が出てくるのですから、珍しくありません。なんといっても、町の人口の一割を超える人が無くなっているのですから、気がつけば人がいなくなったという感じです。私も、震災後「助かったんですか」と話していた人が、実は死んでいたなどという経験があります。実際に、ついさっきまで一緒にいた人が、地震と津波で一瞬に死んでしまったのですから、本人も、当然に周囲にいた私たちも気が付かないことがたくさんあります。
今まで、幽霊といえば、怖くて、この世のものではないというような形相で近寄ってきて、見るとたたられたり取りつかれるものと思っていました。ちょうどお化け屋敷のお化けがそのまま出てきたような感じで、見るからにこの世のものではないものが出てきたかのような感じではないかと思っていたのです。しかし、実際に、幽霊に会ってみると全くそんなことはありませんでした。いつもに比べて元気がない感じがするだけで、普通な感じでした。ああ、それもあの大権をするまでんお間でしかありませんが。
もちろん、町の中で話しを聴けば、そのような「気が付かないような」幽霊ばかりではありません。津波の威力というのは、身体を引き裂いてしまいますから、腕がなかったり蟻がなかったり、頭の一部がつぶれていたような幽霊を見た人も少なくありませんし、この町は火事もあったので、真っ黒で全身火傷があったり、黒くなってしまった地というような幽霊を見た人も少なくありませんでした。
さて、そのような環境ですから、幽霊も出やすかったのかもしれません。また、幽霊も仲間が多くてそんなに淋しくなかったのかもしれません。実は、瓦礫の後片付けの手伝いに「彼ら」が出てくることが少なくありません。
震災からしばらくの間は、町のはずれに山になっていた瓦礫。この瓦礫を分類するのが町の仕事でした。実は津波で多くの人が無くなってしまった上に、家が流されたりして、内陸の方に避難してしまったために、町の人口はかなり減ってしまっていたのです。
その上、何もしないで保障がたくさん出てくるものですから、あまり働くこともなく、お金が入ってきてしまいます。また働きたくても海は津波の瓦礫が多く船は出せませんし、また船そのものも流されてしまったいrあるいは漁網や養殖の筏なども流されたり請われたりで使えません。また、魚の加工工場も、もともと海沿いにあったので綺麗に流されて、仕事をする場所がなかったのです。そのために、働きたくても働けないし、船を買うようなお金もありません。金庫も何もすっべてながされてしまったのですから、生活費だけをもらっても働く場所も手段もないのです。そのために、結局お金をもらっても、パチンコ屋に行くくらいしかやることがありませんでした。
そのような時に、なれない瓦礫の整理などを言われてもなかなか働けるものではありません。働かなくておお金が来るので、そもそも働く気はありませんし、また瓦礫の整理はやはり抵抗があるのです。瓦礫といっても、つい数か月前までは、誰かが使っていたものですし、また、愛着があったりもいで月待っているものも少なくありません。そんなに大きな町ではないので、少なくとも地区ごとに近所のことは知っています。その人々の思い出の品を、分類したり、あるいは捨てたりということはやはり抵抗があるのです。あえて強調していいますが、被災地以外の人は「瓦礫」という言い方をして、ゴミか何かの延長のような言い方をしますが、私たちにとっては、津波の被害で壊されたり、あるいは持ち主がわからなくなったものでも「大事なもの」なのです。
しかし、町の中にいつまでも瓦礫があっても困ります。町を復興させなければならないのです。そのために、街の若者を中心にした有志が町の指示に従って瓦礫の整理をやっているのです。しかし、そのような事情で決定的に人数が足りません。それだけに遅々として作業が進まないのです。
そんな中瓦礫の中からオルゴールが出てきました。オルゴールの中には、あの津波の被害を潜り抜けてきたにもかかわらず、指輪が一つ入っていたのです。この処理にはなかなか困ります。一緒に処理をしている人に言ってもどうしていいかわかりません。またオルゴールに名前などは書いていないので、誰のものかもわからないのです。このような「思いが詰まっている」と思われるものは非常に処理するのが困ります。
「音は出るのか」
私が班長に相談すると、そのように言われました。そういえば確かめていませんでした。そこでゼンマイを鳴らしてみると、音が出ます。全く津波の被害その上、この瓦礫の山の中んに入っていた割には、全く請われていません。何かを察しているようにショパンの別れの曲がなり始めたのです。
「なんだかなあ」
「ちょっとよけておこう。もしかしたら来ている人の者が流されてきているだけかもしれない」
私は、そのオルゴールを指輪を入れたまま「再生」と書いたコンテナの中にいれました。
しばらくすると、私たちの近くに女性が作業をしています。このチームには女性はいないはずですが、しかし、町が派遣してくれたボランティアなどに女性が含まれていることもありますし、また隣の班に来たボランティアが混ざっている可能性もあります。また、その女性は違和感がないくらい、作業着に身を包み、そして、手際よく山を片付けていたのです。
「ありがとうございます」
「いえいえ」
女性は、作業の手を休めることなく、明るい声でそういったのです。
「あんまり頑張りすぎないでくださいね。女性でこの仕事はつらいですから」
私は何気なくこのように声をかけました。すると
「いやせっかく指輪が出てきたからおそろいのネックレスも探さないと」
そういえば、女性はオルゴールが出てきたあたりをずっと探しています。
「ネックレスがあったんですか」
「ええ、プレゼントされたものなのよ。でも彼と別れちゃって。なんだか悔しいから別れの曲のオルゴールに入れておいたんだけど、彼とまた会えそうだから」
女性は何事もなかったようにそういいました。ああ、やっぱりオルゴールの持ち主いたんだ。そう思って少し疑問に思いました。なぜ、今見つかったのを彼女は知っているのでしょう。それに、他の人ならばなぜネックレスとセットだということを知っていたのでしょうか。頭の中をさまざまな疑問を駆け巡ります。
「もしかして君は」」
「えっ!私」
女性は手を休めて腰を伸ばすと、ゆっくりと私の方に顔を向けました。その顔には目がなく、顔そのものの構造物がほとんどなくなっていました。今から考えれば、津波で何か当たって顔がつぶれてしまったのでしょうか。しかし、その時の私にそのようなことを考える余裕はありません。私は、声を上げる間もなく、その場で気を失ってしまったのです。
「おい、しっかりしろ」
班長がすぐに駆け寄ってくれました。実は、瓦礫の整理は瓦礫の山にさまざまな化学物質などが混じっていることもあって、急に斃れたり、あるいは怪我をしてしまったり、場合によっては毒を持ったネズミや虫に刺されてしまう場合もあるので、瓦礫は十分な注意が必要です。そのこともあって反行動になっているのですが、私はそのような事故で斃れたものと判断されました。
「班長」
「何も言わなくていい。少しゆっくりしよう」
救急車が車での間、私は今あった話をしました。班長はこんなことウィったのです。
「そういう思いの詰まったものがこの山の中にたくさん入っているんだ。そう思って我々は仕事をして、早く負えないといけないな。まあ、今日は休んで回復したらまた来てくれ。それと、俺は君の話を信じる。私もたまにそういうの見るから。でも、手伝ってくれているんだからいいじゃないか。ネックレス。心がけておくよ」
ネックレスはその後オルゴールの出てきた場所の近くで見つかりました。ちょうど彼女が一生懸命に探していた場所です。彼女はそのことを知って探していたのでしょう。班長の話では、彼女だけでなく多くの幽霊が探し物を手伝ってくれるといいます。探しているものは、「不用品」ではなく「供養するもの」としてまとめておくそうです。地震の被害者の三回忌、オルゴールと指輪とネックレス、誰のだかはわかりませんが祭壇に供えられていたのを見て、彼女が安心しているのではないかと思っています。
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