「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 疑心暗鬼と権力構造ということの「現代政治の風刺」

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 疑心暗鬼と権力構造ということの「現代政治の風刺」


 毎週水曜日は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」について好き勝手書いている。前回も全く同じようなことを書いたかもしれないが、「歴史ドラマ」というのは、歴史を感じながら、そして史実といわれる内容をうまく題材にしながら、その内容を現代の人々が見て、その現代の自分たちの今抱えている問題をそのまま風刺できるようにしているのではないか。前回は、LGBTQという、まさに現代の問題をそのまま正面からしっかりと書いた内容であった。

さて、今回も「和田合戦」という内容をうまく題材に使いながら、現在の問題をうまく書いているということになる。今回はその「和田合戦」の前夜までしか書かれていない。

建暦3年(1213年)、信濃源氏の泉親衡が頼家の遺児千寿を将軍に擁立して北条氏を打倒する陰謀が発覚した(泉親衡の乱)。2月、義盛が上総国伊北荘に下っている最中に、鎌倉では事件に関係したとして義盛の子の義直・義重、甥の胤長が逮捕された。

3月8日(3月31日)、鎌倉へ戻った義盛は将軍に一族の赦免を嘆願、義盛の多年の勲功に免じて子の義直・義重は赦免され、まずは義盛の面目は立った。

翌9日(4月1日)、義盛は一族98人を引き連れ、御所南庭に列座して甥の胤長の赦免を嘆願した。北条義時が現れ、胤長は事件の張本人であるので許すことはできないとし、和田一族の面前で縄で縛りあげた姿を引き立て、預かり人の二階堂行村に下げ渡した。これは義盛たちにとって大きな屈辱であった。

17日(9日)、胤長は陸奥国岩瀬郡への流罪と決まる。21日(13日)、6歳になる胤長の娘が悲しみのあまり病になり、息を引き取った。和田一族は胤長の処分を決めた執権北条義時を深く恨んだ。

罪人となった胤長の鎌倉の屋敷は没収されることになり、25日(17日)、義盛は罪人の屋敷は一族の者に下げ渡されるのが慣例であると将軍に乞い、これは許され、義盛は久野谷彌次郎を代官として屋敷に置いた。

ところが、4月2日(24日)になり突然、義時は旧胤長屋敷を泉親衡の乱平定に功績のあった金窪行親・安東忠家に与えると決め、義盛の代官を追い出した。重ね重ねの義時の挑発に義盛は挙兵を決断する。

この挙兵に将軍実朝の近臣だった孫の朝盛は反対し、16日(5月8日)、主君に弓矢を向けられないと剃髪出家して京都へ出奔するが、これを知った義盛は密事が漏れると激怒し、義直に追わせて連れ戻させた。これらの騒ぎで、義盛挙兵の流言飛語が飛び交い、鎌倉は騒然とした。

27日(19日)、事態を憂慮した実朝は宮内兵衛尉公氏を義盛の屋敷へ送り、真意を問いたださせた。義盛は「上(実朝)に恨みはござらん。ただ相州(義時)の傍若無人の仔細を問いたださんがために用意している」と答えた。

義盛は和田一族の他に、縁戚の横山党、波多野氏、そして本家筋にあたる有力御家人の三浦義村と一味同心し、義村は起請文まで書いていた。

まあ、今回のドラマもこの流れの通りに書かれている。

「鎌倉殿の13人」政子の叱責も…義時、即座に和田義盛に罠 ネット「頼朝イズム」「疑心暗鬼」

 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は23日、第40話が放送された。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。鎌倉を舞台に、御家人たちが激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第40話は「罠と罠」。後鳥羽上皇(尾上松也)は閑院内裏の修復を計画。鎌倉に請け負わすという藤原兼子(シルビア・グラブ)の進言に心躍り、慈円(山寺宏一)とともに笑みを浮かべる。京から知らせが届き、鎌倉の御家人たちは重い負担に反発。源実朝(柿澤勇人)からも慕われる和田義盛(横田栄司)が旗頭となり、八田知家(市原隼人)らが集う状況を、北条義時(小栗)は苦々しく思っていた。そんな中、信濃で一つの事件が起こり…という展開。

 その事件とは、義時暗殺を計画した「泉親衡の乱」。関わった者の中に、義盛の息子、四男・和田義直(内藤正記)と五男・和田義重 (林雄大)、甥・和田胤長(細川岳)がいた。

 これに乗じ、義時は和田滅亡を謀る。胤長を陸奥へ流罪とし、赦免のため集結した義盛ら一族の目の前で連行した。

 憤る義盛に、三浦義村(山本耕史)が「北条ばかりが得をするこんな世の中を、俺たちが変えるんだ」と助太刀。義時と義村の罠だった。

 「父上を戒めてほしいのです」。泰時に頼まれ、政子(小池栄子)は義時を叱責。「政に関われと言ったのはあなたですよ。わたくしを支える立場ではなかったのですか。1人で勝手なことをしない!」。義時は「姉上に叱られたのは、いつ以来でしょう」「和田殿をこれ以上けしかけることは、いたしません」と引き下がったが、舌の根も乾かぬうちに、広元に「それより、和田を焚きつけるいい手を思いついた」。手を緩めない。

 それは、胤長の館の没収。罪人の住処は同族の物に引き渡されるのが通例。憤る実朝に「戦には大義名分が要るのです。向こうが挙兵すれば、それは謀反。我らは鎮圧のために兵を出せます」と淡々と説いた。

 実朝に説得され、結局、義時と義盛は手打ち。政子は「鎌倉のため、鎌倉のため、聞き飽きました。それですべてが通るとなぜ思う。戦をせずに鎌倉を栄えさせえみよ!」と再び声を荒らげ「何に怯えているのです。あなたなら、こんなやり方でなくとも、皆をまとめていけるはず。そうせねばならぬのです」と諭した。

 戦は回避。「和田を滅ぼすには、よい口実だったが」。どこか不満顔の義時に、時房は「またまた。思ってもないくせに」「和田殿が好きなくせに」「あのお方を嫌いな人なんていませんよ!御所の守りを解くように言ってきます」。義時はトウ(山本千尋)に「和田の館にいる平六に、引き上げるよう伝えよ」と命じたが、時既に遅しだった。父の鎌倉御所から帰りが遅いことに、義盛の息子たちが疑念を抱いて出陣。巴御前(秋元才加)に起請文を要求され、義村の寝返りも失敗。「建暦3年5月2日、鎌倉最大の激戦である和田合戦、勃発」(語り・長澤まさみ)――。

 SNS上には「義時の頼朝イズムは鎌倉的には正しいところがつらい」「義時、完全に頼朝状態だな…誰も信じられないんだな」「義時が不安に思ったら滅ぼす。頼朝イズムが浸透してる。止まらない疑心暗鬼」などの声も。和田討ちの目的を、義時は泰時のためと言った。義時は何に怯えているのか。

[ 2022年10月23日 20:45 ] スポニチ

https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2022/10/23/kiji/20221023s00041000478000c.html

 さて、今回のドラマにおける現代へのメッセージはいったい何であろうか。今回は基本的には「疑心暗鬼」ということが大きな問題になっているのではないかと思う。そもそも「鎌倉殿の13人」という大河ドラマ自体、ずっと「疑心暗鬼」の連続でありそのことで、上総広常・源義経・源範頼・阿野全成・梶原景時・比企能員・畠山重忠と退場していった。いや、源頼家も、その中の一人であり、その疑心暗鬼の「鬼」の部分を善児がになってきていたのではないか。

初めのうち、源平合戦の間は、それらが大きな力になってきていた。しかし、「狡兎死して走狗烹らる」ではないが、まさに大きな敵である平家がいなくなってから、常に、その内容が出てきていたということになる。

その「疑心暗鬼」の大将は何か。それは鎌倉に住む「御家人たち」という「社会の目」であり、その御家人たちの中において支持をどのように得られるか、そのためには、自分たちだけ特別扱いをするということができない、もっと言えば、親族であるからこそ、他の人に担ぎ上げられるが、一方で常に減救であり忠誠を誓わなければならないということになるのではないか。

源頼朝の中にはそのような感じになる。しかし、北条義時の時代になるとそうではない。そもそも「鎌倉殿」と言われる将軍を中心にしながら、北条家という「二重権力構造」を作ることになる。そのうしろめたさが北条義時の中にあり、そしてそのうしろめたさを解消できるだけの力を持たなければならない。まさに、その力を持つことは、自分に匹敵する力を持つ者を滅ぼすというようなことになってゆくのである。そしてそのような状況でありながらまだ心が弱い、北条泰時の時代に、多くの御家人に復讐されないようにしなければならない。そのことを今のうちに作るということが「疑心暗鬼」の中心になっている。

その疑心暗鬼がまさに大きな動きになる。

初めのうちは北条義時の疑心暗鬼であった。しかし、後半には和田義盛が捕まったと信じる和田家の人々の疑心暗鬼が始まり、そして御所を襲撃することになるのである。

ある意味で現代でも「疑心暗鬼」が最も大きな問題になるということを教えてくれている。現代の問題も、人間関係ではほとんどが疑心暗鬼ということになる。その疑心暗鬼をどのように克服するのか、またどのような悲劇を生むのか。そのことをドラマで学べるということになるのではないか。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

0コメント

  • 1000 / 1000