日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄 第二章 日の陰り 15

日曜小説 No Exist Man 闇の啓蟄

第二章 日の陰り 15


「テロか、それとも単なる事故か」

 嵯峨は、四谷の事務所に入るなり、かなりの怒声で炒った。自分がいない間に事件が起きたことが許せなかったらしい。それだけではなく、京都でのことも何も様々な何か不気味なつながりがあるように見えていた。

「テロですね」

 荒川は、かなり冷静に行った。総務省からきている青田は、それを裏打ちする資料を画面で示したが、嵯峨はそちらには見向きもしない。実際に、新幹線の中で一緒であった内閣官房の今田陽子のところにも、政府から次々と情報が入っていた。初めのうちは事件の概要と被害の報告であった。しかし、そのうちにそのようなものではなく、福岡の事件の異様さと、そしてそこに見えるテロリストの影を調査しているという報告が中心になってきた。もちろんその確定的な内容は全くない。しかし、一度に4ヵ所で突然に列車が火災を起こし、その上その列車が爆発炎上するなどということは普通に考えられるものではないのである。

 今田陽子は、東京駅まで迎えの車が来ていて、その車に乗って官邸に向かった。首相官邸ではすぐに「危機管理室」が作られ、官房長官を本部長とする組織が決められた。その内容は今田陽子を通じ、または青田俊博を通じて四谷の事務所にい入ってきている。

「テロか」

 まだ首相官邸の危機管理室は今回の福岡の列車爆破がテロとは断定していない。しかし、ここ四谷ではテロと断定している。

「青田君は」

「はい、ここにいた樋口さんと三人で話をしましたが、100%とは言えないモノの、テロである可能性が非常に高い案件であるということが言えます。」

「手法は」

「はい、爆弾などによるものではないと思われます」

「爆弾を使わずに、爆発させるということか」

 嵯峨は驚いた。これでは直接の爆発の根拠がないので、本当に偶然の内容による自己ということに片付けられてしまう可能性があるということだ。いや、日本の警察は、あまり自分のところに手に負えなくなった利、背後関係が複雑だったり、あるいは、その内容が自分たちの常識を超えてしまって解明できない場合は、すべて「偶然の産物」として、片付けて「事故」として処理してしまう。爆発物がないということは、火薬などが検出されないということになるのであるから、その爆発は、車両故障または車両の老朽化や整備不良ということになりかねない。警察の実況見分とはそういうものである。

「手法は簡単です。変電所のコンピューターをハッキングし、過電圧を上げるという手法になります。爆発炎上した、いや正確には炎上した後に爆発したと考えられますが、変電所から送られてくる電圧が多くなり、古い車両のモーターだけが異常に加熱し、その上で、その電流が車両内を通り、車両内の可燃物が全て発火したものと思われます。その後、トンネル内の可燃物やモーター内の油などに引火し、爆発したものと想定されます。そのために、今回火災爆発が発生した車両は、平成8年より前の車両ばかりで、この間にある新型の車両に関しては、電圧を途中でシャットアウトする装置が付いているので、同じ電流を受けていても火災が発生しなかったということになります。」

「なるほど。古い車両だけ発火したということか」

「はい、しかし、トンネル内の火災でありなおかつ、二つの車両が火災を起こして間に挟まれた場合、まずは、駅などの乗客を避難させる意味と火災であるということから防火シャッターが降ります。このことによって、トンネル内は密閉状態になり、蒸し焼き状態になることが予想されます。もちろん、地下鉄のトンネルというのは途中途中に換気候が設置されていますが、今回のような大規模火災のことは想定されていないので循環が難しいということになるでしょう。つまり、トンネル内の乗客の多くはいっさんかたんそちゅうどくまたは熱中症によって命は危険な状態にあると思われます。同時に、地下鉄トンネルに沿って設置されているガス管やアスファルトなどが加熱し、そのことから、爆発を起こしているということになるのであはないでしょうか。爆発が少しずれているのは、その火災によって、ガス漏れが生じ溜まったところに引火した、または発火点以上の温度に上昇したということも考えられます。」

 青田は、様々な資料を画面に映しながらそのように言った。

「ということは、この古い車両がガス管などの近くを通る時間帯にモーターが過熱し火災起きるように時間を調整して変電所をハッキングしたということなのか」

 嵯峨はかなり恐ろしい感覚を持った。もしも自分の予想通りであるならば、福岡市営地下鉄のことを熟知しているか、あるいは市営地下鉄の中に共犯者がいてもおかしくないということになるのである。

「当然に、そのことも考えまして」

 荒川義弘は、印刷した紙を嵯峨朝彦の前に示した。一つは地下鉄運転手や乗務員のシフト表、そして変電所職員のシフト表、そして車両運行計画表である。

「赤字になっているところが、本日突然に変わったところです」

 嵯峨は、何事もなかったように冷静に話す荒川を、信じられない化け物でも見るかのような目で見た後、そのもう一度神に目を落とした。

「この、変電所職員の名前の横の括弧は何だ」

「本名です」

「どういうことだ」

「要するに、在日外国人で通名を使っているということです」

「在日・・・・・・」

 嵯峨は、言葉を失った。その目で見ると、赤字に代わっているところはそのほとんどが、名前の横に括弧が書かれている。括弧の中は当然に外国人の名前だ。

「この在日の国籍は」

「全て朝鮮総連所属です」

 荒川は何事もなかったように話をしている。

「要するに北朝鮮がこのテロを起こしたということか」

「いえ、断定するのは早いかもしれません」

 青田が、一つの画像を出した。その内容は荒川も驚く画像であった。

 四か所のうちの一つ、天神の爆発、道路陥没現場の防犯カメラの映像である。青田はすべての防犯カメラ映像で顔認証システムを使って、要注意人物がいなかったかどうかを調べていたようである。そして、その中の一つが引っかかったのだ。

「これは」

 荒川は、それまでの冷静さを失ったような顔になった。

 そこに映っていたのは、少し離れたビルの二階の喫茶店の窓がわの席である。よく道路が見える場所であり、同時に、この計画をわかっているものであれば、その店に被害が及び事はまず考えられないという状況である。もちろんガス管が大きく破損した場合などは、その店も火災に巻き込まれる可能性はあるが、しかし、その可能性は極めて低いのであろう。

 その二階の窓側に、様子を伝えているものと思われる、大友佳彦の顔が写っていたのだ。

 大友佳彦は、樋口の元の自衛隊の上官であり、北アフリカの事件の時に、テロリスト側に味方し、そのまま自衛隊から脱走した自衛官である。その後、中東で極左思想に染まり、現在は松原隆志の日本紅旗革命団に所属しているという噂である。

 その大友が福岡にいる。つまり、今回の事件も、陳文敏・大沢三郎・松原隆志の天皇陛下を暗殺するという勢力の関わったテロであるということを意味しているのである。

「荒川、どうした」

「様子を見に行くように樋口さんに福岡に飛んでもらっています。場合によっては大友と直接何かあるかもしれないと思いまして、樋口を戻すべきかと」

 荒川が行ったが、嵯峨はそれに応じなかった。

「そのまま樋口に大友がいる可能性があるが、その時も冷静に対処するように連絡せよ。青田君は、今田に事の次第を伝え、大友佳彦が福岡において誰かと現場で連絡している姿をつけて、報告せよ。そのうえで変電所の変圧器の呼称による事故であるというような結論になるように、誘導するように指示を与えなさい」

「事故にするのですか」

 青田は、意外そうに言った。

「今の政府に、彼らの組織や彼らの手法を全て対処できる力はない。同時に、朝鮮総連をすべて敵に回して動けるような状況でもなかろう。つまり、事故で処理しておいて、こちらで追い詰めるしかないということになる。また事故にすれば、彼らは思いと異なることになるから、何か別な動きをする。それを政府は追いかけてもらった方がよい。」

「わかりました」

 青田はすぐに今田にその内容でメールを送った。

宇田川源流

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