「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 純粋だった小四郎を「ダークな鬼」に変えたものは何か?

「宇田川源流」【大河ドラマ 鎌倉殿の13人】 純粋だった小四郎を「ダークな鬼」に変えたものは何か?


 毎週水曜日は、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」について、本当に好きかって書かせてもらっている。しかし、今回の大河ドラマに関しては、「ほとんどが吾妻鑑の通り」というような感じになっていて、見ていて非常に面白い。ある意味で「事実は小説より奇なり」をそのまま映像にしたような感じである。同時に、大河ドラマであるから、回数を追って人が成長して言ったり、変わっていったりということをしっかりと書くことが得できているところに非常に面白さを感じる。ある意味で「原作がしっかりしている」ところで、「脚本家や演出家が優秀」であり「役者がそれを演じ切る力がある」と、やはりこのように面白くなるのだということがよくわかる。昨今、民放のドラマや映画などはほとんどが漫画の実写化ということばかりであるが、実際には、この大河ドラマの方が面白いということがよくわかるのではないか。

 さいぇ、それにしても今回は多く死んだ。頼朝の甥にあたる阿野全成の息子で京都で修行をしていた頼全(小林櫂人)・そして比企家の比企能員(佐藤二朗)・せつ(山谷花純)・一幡(相澤壮太)・比企尼(草笛光子)・道(堀内敬子)・比企時員(成田瑛基)である。まあ、これだけ死ねばなかなか素晴らしいところであろう。まあ、この中で「一幡」は死んだことになてってるが、もしかしたら三谷幸喜氏の何らかの形で生き残らせているのかもしれない。そのような伏線も出てきているところがなかなか興味深いところであろう。

 今回の内容は「比企能員の乱」として、簡単に説明すれば、建仁3(1203)年8月,頼家が危篤になると,北条時政は突如東国28カ国の地頭職と日本国総守護職を一幡に,西国38カ国の地頭職を千幡(源実朝)に譲るとした。『吾妻鏡』によると能員はこれを憤り,病の回復した頼家と時政追討を相談したが,これが北条政子に漏れ,9月2日仏事に事寄せて時政邸で謀殺された。翌日までには比企一族も滅亡した。但し,頼家との時政追討の謀議については『吾妻鏡』に潤色の可能性がある。というようなことになっている。

 いずれにせよ、比企家と北条家の間にそれなりの確執がありその確執について、様々な問題があり、そして外戚政治による権力の掌握を狙った比企能員が乱(謀反)を起こした形にして北条時政が中心になって誅殺し、その一族もすべて殺したという事件である。

「鎌倉殿の13人」義時、鬼の頼朝化!比企滅亡へ泰時に非情命令 ネット「ダーク義時が覚醒」

 俳優の小栗旬(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)は14日、第31話が放送された。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 第31話は「諦めの悪い男」。病に倒れた2代鎌倉殿・源頼家(金子大地)の後継者をめぐり、激しさを増す北条と比企の争い。比企能員(佐藤二朗)は娘・せつ(山谷花純)が産んだ頼家の長男・一幡(相澤壮太)を推し、早々に朝廷の許しを得ようと躍起になるが、大江広元(栗原英雄)らは取り合わない。一方、北条義時(小栗)は比企の動向を探るよう妻・比奈(堀田真由)に頼み、三浦義村(山本耕史)にも相談を持ち掛ける。そんな中、政子(小池栄子)の元に北条時政(坂東彌十郎)りく(宮沢りえ)夫妻らが集まり…という展開。

 京で修行中だった頼全(小林櫂人)が父・阿野全成(新納慎也)の陰謀に加担した疑いにより、在京の御家人・源仲章(生田斗真)の沙汰の下、討たれた。

 北条家の会議。比企の指図は明白。夫と息子を失くした実衣(宮澤エマ)は「すぐにでも比企を攻め滅ぼしてください。首をはねて、大きい順に並べるの」。まずは比企の一幡擁立を阻止しようと、義時は頼家の弟・千幡(嶺岸煌桜)擁立へ。実現しなかった時は戦に。時政と畠山重忠(中川大志)に戦支度を指示した。

 御所・執務室。策を練った義時は関東二十八カ国を一幡、関西三十八カ国を千幡に分け合う提案。能員は日本地図を破り「鎌倉殿は、一幡様ただお一人」と立ち去った。義時は「やれることはやりました。方々、拒んだのは向こうでござる」。廊下を歩きながら「これで大義名分が立った。比企を滅ぼす」。能員が提案をのまないのは、折り込み済みだった。

 8月末日、容体の回復しない頼家は「臨終出家」。義時は政子に「思えば、頼朝様は正しかった。敵を容赦せず、常に先に仕掛けた。これがあの方の教えです」と揺るがぬ決意。政子は「一つだけお願い。一幡の命は助けてあげて。頼朝様の血を引く者を殺めるなんて、あってはなりません」と孫の命乞い。義時は「一幡様には、仏門に入っていただきます。誓います」と約束した矢先、泰時に「戦になったら、真っ先に一幡様を殺せ。生きていれば、必ず災いの種となる。母親共々。頼朝様なら、そうされていた」と非情命令を下した。

 そして、関東・関西の統治権交渉をめぐり、能員に和議を申し入れての騙し討ち。比企滅亡を成し遂げた。

 義時は政子に比企討伐を報告。一幡については「生きていると分かれば、担ぎ上げようとする輩が現れないとも限らない。今は行方知れずということにしてあります。(これで)よかったかどうかは分かりません。しかし、これしか道はありませんでした」。廊下を歩く義時の脳裏に、兄・北条時宗(片岡愛之助)の“遺言”がよみがえる。「小四郎、俺はこの坂東を、俺たちだけのものにしたいんだ。坂東武者の世をつくる。そして、そのてっぺんに北条が立つ」。義時は阿修羅のような形相になった。

 SNS上には「義時は頼朝化してきた」「白義時から黒義時第1形態へ」「義時と泰時、若き日の頼朝と義時に重なる」「完全にダーク義時が覚醒したようだ」などの声が続出。反響を呼んだ。

2022年08月14日 20時46分 スポニチアネックス

https://news.nifty.com/article/entame/showbizd/12278-1809242/

 今回も様々な伏線があり、その伏線からの物語が出てきている。

 まずは北条と比企の対立である。源頼朝が石橋山で挙兵した時に、三浦は、川の増水で来れなかったが、それでも一族が三浦の城衣笠城で平家に戦っている。つまり石橋山で戦えなかったにしても、同じに挙兵しているのである。これに対して、比企は千葉で上総広常が味方してからあとからきている。ただし、もともと頼朝の乳母である比企尼がいたために、比企は頼朝に特別に目をかけられていたということになる。

 逆に言えば、頼朝が死んでしまうと、比企尼と頼朝の関係は解消されてしまう。しかし、頼家の烏帽子親をしていたということがあり、ドラマの中では、「頼家が病になった」ことを政子と道で慰め合うというような形で表現している。同時に、北条時政と比企能員の会話で「石橋山の挙兵」の話があり、そこで「坂東武者とは何か」ということが再度確認される形になる。ある意味で「坂東武者」の世の中ということ、つまり三郎宗時(片岡愛之助)が語り、こだわっていたところが、ここで一つの伏線であったことがよくわかる。

 戦国大名でも、また江戸時代でもそうであるが、創業以来ということにこだわる部分は少なくない。江戸時代の大久保彦左衛門などは「三河以来の譜代」を標榜して、一心太助などを保護するのであるが、まさに、そのような精神性が、今の日本人の中には響くのではないか。今回も、まさに北条時政が「頼朝を信じていた」ということに関して「守る者が多かった」という比企の対比が、このような形になる。そして、それが比企能員が死ぬときに、三浦義村の態度になって表れるということになるのである。

 もう一つの伏線が、やはりその三郎宗時の、「坂東武者の世の中を作り、北条がそのてっぺんに立つ」という言葉である。これまでは頼朝の行ってきた鎌倉の政治を守ることをしていたが、今回から、つまり引きを倒すことにしてから、北条義時は明確に「北条のため」に権力闘争を行うようになったのである。これは、間違いなく宗時の言葉の影響であろう。

 この辺の伏線の付け方は非常にうまい。そして、北条義時は、まさに源頼朝が豪族を信じなかったように、豪族を信じない出「禍の芽を摘む」という行為を行う。まさに、一幡の「死」というのはそのことであろう。

 ちなみに、上記にも書いたが三谷幸喜は一幡を本当に殺したかどうかは不明である。善児が出てくると、本当に殺してしまうのではないかというような感じになる。それは相手が子供でも同じで、もともと八重と頼朝の子である千鶴丸を殺したシーンのリフレインになるのである。しかし、実際に三谷幸喜氏が脚本の中で生かしているかもしれないと思うのは、北条泰時が父義時と言い争い、一幡を殺せという指令に反発しているところなどが、そのようになっているのではないかというような感じになるのである。またこのような伏線の作り方がうまい三谷幸喜氏であるから、その辺はストーリーの展開でわからないところであろう。

 それにしても善児の画面の中の破壊力は素晴らしい。皆が鎧兜を身に着けている中で平服で現れ、最も冷静に人を殺してゆくのであるから、その感情のない動きは素晴らしい。このようなキャラクターを作るのも、ドラマのだいご味であろう。

 次回もまた「人の死」から新たなドラマが生まれることになる。いずれにせよ、伏線と北条を守るという事で、ダークになってゆく義時が面白い。

宇田川源流

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