「宇田川源流」 アメリカで起きている中絶に関する分断は「現在生きる女性の権利」か「これから生まれる子供の権利」かという問題

「宇田川源流」 アメリカで起きている中絶に関する分断は「現在生きる女性の権利」か「これから生まれる子供の権利」かという問題


 あえて難しい問題に取り組んでみようと思う。アメリカでは、1970年代に行われた内容から、女性は「中絶をする権利がある」と判断されていた。これに対して今回のアメリカの最高裁判所は「そのような見地をアメリカ合衆国全体どして合憲と認めることはできない」ということで、その判断を覆したのである。

この女性の中絶に関して言えば、政治的にはアメリカの民主党が「中絶の権利を認める」という話になり、一方で共和党は「認めない」というような話になっているということになる。そしてこれを近視眼的にトランプ前大統領とバイデン大統領の対立に結び付けたがる人がいることも確かであろう。これは、連邦最高裁判所の判事がトランプが指名した「保守派」の判事になったために判決が覆ったというような話になっているからであるが、しかし、翌々考えれば「判事が変わって判決が覆る」ということは、実は「国論が二分していてまだ決まっていない」ということを示している者であり、その為に、取り敢えず片方に決めてしまってよいのかということになる。

さてこの判断を受けて、「合衆国」としては認めないが、「各州」の判断に任される形になる。その各州は、中絶を認める州と認めない州に別れることになるのであるが、それはそのまま「アメリカの週によって厳しい所とそうではないところ」が出てくる、もっと言えば「合衆国の中で国論を二分した形が各州の判断によって見えてくる」ということになってしまう。

このことは、「州ごとに判断が変わる」ということになり、そのまま「認める場所と認めない場所の違い」がみえてくる。例えば性犯罪が多くなるのか、出生率が低くなるのか、もっといえば、中絶をしたいがために移動・転居をするということが出てくることになり、ある意味で、「個人の主張と住所地が比較できるようになる」ということになってくるのではないか。ある意味で「民主党の支持者の州と共和党の支持者ばかりが集まる州」というような感じで別れてきて、場合によっては文化レベルなども変わってくるということになるのではないか。

中絶の「旅費」負担、米企業が続々表明 合憲性否定の最高裁判決を受け

 人工妊娠中絶を憲法上の権利とした判決が覆されたアメリカで、中絶手術が可能な州に移動して手術を受ける従業員に対し、旅費をカバーすると表明する企業が増えている。

 ディズニー、JPモルガン、フェイスブックの親会社メタなどの大企業が、こうした動きをみせている。アマゾンなどはすでに、同様の方針を発表している。

 アメリカでは連邦最高裁が24日、中絶を合憲としてきた長年の判断を覆した。これにより、各州は中絶を禁止できるようになり、何百万人もの女性が中絶手術を受けにくくなっている。

 中絶手術のための旅費を負担する企業は、健康保険でそのコストをカバーできるようにする。

 【解説】 最高裁判断でさらに深まるアメリカの分断 中絶の権利めぐり次の争点は 米最高裁の中絶権違憲判断、世界はどう受け止めている? アメリカの一部で中絶クリニックの閉鎖始まる 中絶権の合憲性覆す最高裁判断受け

ディズニーは、今回の最高裁判決の影響を認識していると従業員に伝えたという。そして、家族計画や生殖医療を含む、支払い可能な医療への「包括的なアクセス」を「どこに住んでいようと」提供し続けていくと、従業員に説明したという。

 ディズニーは、フロリダ州のリゾートで約8万人を雇用している。同州ではすでに、妊娠15週以降の中絶を禁止する州法に知事が署名を済ませており、7月1日に施行の予定だ。

 ロイター通信によると、銀行大手JPモルガンも米国内の社員に対し、「合法的な中絶」を含む医療を受けるための旅費を負担すると伝えた。6月1日付の社内連絡で示されたもので、ロイター通信はその内容を確認したという。

 JPモルガンの広報担当は24日、「私たちは従業員の健康と福祉を重視しており、すべての福利厚生を従業員が平等に利用できるようにしたい」と話した。

 ロイター通信によると、米国の大手投資銀行ゴールドマン・サックスも、同様の旅費負担を7月1日から始めると述べたという。

 ソーシャルメディア企業メタは、「州外の医療機関に行くために旅費を必要とする従業員のために」、法律で認められている範囲で旅費を払い戻す方針を表明。

 広報担当は、「法的な複雑さを考慮し、どのようにするのが最善か検討中」と付け加えた。

 判決前に方針表明した企業も

 同様の対応を表明している企業には、雑誌ヴォーグの出版社コンデナストや、ジーンズメーカーのリーバイ・ストラウス、配車大手のリフトやウーバーなどがある。

 リフトは、中絶が絡むケースで、ドライバーを法的に保護する方針も表明。広報担当は、「どの運転手も、行き先やその理由について乗客に質問する必要はない」と説明した。

 アマゾン、レビューサイトのイェルプ、銀行大手シティグループなどは最高裁判決の前にすでに、地元の中絶規制を回避するために他州に移動した従業員に、旅費を払い戻す方針を明らかにしていた。

 イェルプのジェレミー・ストッペルマン最高経営責任者(CEO)は、最高裁の判決について、「女性の健康を危険にさらす」とし、「ビジネスリーダーは声を上げなければならない」とツイートした。

 アメリカでは、中絶が全国で自動的に違法になるわけではない。州ごとに、中絶を許可するかや、どのように許可するかを決める。

 すでに13の州で、中絶を違法とする「トリガー法」が成立している。同法は、中絶を合憲としてきた1973年の「ロー対ウェイド」判決が覆された場合に、すぐさま施行される。

 中絶の権利を支持するグットマッハー研究所によると、20州以上が、中絶手術へのアクセスを制限する動きを見せているという。

 共和党側の反発

 中絶手術の旅費を負担する方針を表明した企業は、中絶反対派の共和党員の反発に直面する可能性が高い。

 テキサス州の議員らはすでに、シティグループとリフトに対し、法的措置を取ると脅している。同州共和党トップのマット・リナルディ州下院議員は、シティのサービスを利用しないよう、共和党員らに呼びかけた。

 アメリカで中絶は、国を二分する問題となっている。米調査会社ピュー・リサーチ・センターの最近の調査では、中絶はすべて、またはほとんどの場合で合法であるべきだと、成人の61%が答えた。すべて、またはほとんどの場合で違法であるべきだとしたのは、成人の37%だった。

 (英語記事 US firms pledge to pay abortion travel expenses)

2022年6月27日 14時47分 BBC News

https://news.livedoor.com/article/detail/22405431/

 さて、なぜこのようなことになるのであろうか。単純に「中絶」というと、女性が妊娠中にその子供を産まないという決断をするということになる。もう分り切った話であるが、その女性が幸せな結婚などから、子供ができた場合は何のこともないが、レイプ事件などの被害によって妊娠してしまった場合に、その子供を産まなければならないのかということが一つ。一方で、その子供の内容に関して、女性の身体の健康の問題や病気、または胎児の病気の問題で中絶した方が良いと考える医者も少なくない。そのような場合も存在するということになる。

一方、女性の身勝手な内容も出てくる。例えば愛人契約をしていて妊娠した場合や不倫をしてしまって妊娠した場合など、事前の性行為が合意に基づいたものであり、なおかつ母子ともに健康であるというような場合には、「胎児の権利を不当に女性が殺めている」ということになっているような感じになる。基本的には子供は無抵抗であるという前提から考えれば、当然にその子供は「保護対象」であり、女性や大人の身勝手な理由で殺めてはならないということになる。

つまり「子供を妊娠した時の性行為の対応」「女性(母体)の健康状態」ということが一つの軸にあるのだが、一方で「大人の身勝手」ということも考えられるということになるのであり、その権利をどこまで認めるのかということになろう。

今回の連邦最高裁判所の判断は、「女性の権利は無制限に認められるものではない」と言ことであり、これは「性行為そのものに対して、女性もその相手の男性もある程度の責任を持つべきである」ということが言われているということになるのではないか。この前提の内容に立てば「民主党は責任が増えることに対して反発をしている」ということになり、共和党は「大人に自覚を求めている」ということになる。当然にその自覚の上で、健康上の問題や犯罪の場合の救済措置を見るということになるのであろう。

要するに「権利」に比較して「責任」と「義務」はどこでどのように完遂されているかということが大きな問題になる。まさに「性行為」であり同時に「妊娠」という場合に、その妊娠した子供に対しての「責任」や「義務」はどこでどのように実現するのかということが非常に大きな問題になるのではないか。その議論がしつくされていないことが、国論を二分している原因であるということになるのであるが、そのことをどのように考えるのか。

日本でも同じ議論になることとなるが、その内容をどのように考えてゆくのか。権利と義務の問題はかなり大きな課題になる。

宇田川源流

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