「宇田川源流」 中国の王毅外相に完全にやり込められてしまった林芳正外相で岸田内閣は大丈夫なのか?

「宇田川源流」 中国の王毅外相に完全にやり込められてしまった林芳正外相で岸田内閣は大丈夫なのか?


 岸田内閣は、実質的に11月に発足し始動したといって過言ではない。10月4日に第100代内閣総理大臣として内閣を編成したものの、すぐに解散総選挙であり、11月になって衆議院の勝利(議席数は減らしたが)をもとに、101代の内閣総理大臣として就任した。その時に、甘利明自民党幹事長が退任し、茂木敏充外務大臣を幹事長に移動させ、幹事長に林芳正元農林水産大臣を充てる人事を行った。もちろん、総選挙で落選した副大臣や政務官の交代も行っているのであるが、その辺は人事を詳しく見ていただければわかる話なのでここでは割愛する。

 さて、この林芳正氏。父は林義郎元議員で宮沢内閣の時の大蔵大臣であるが、生粋の「親中派」として知られ日中友好会館の会長を勤めるなどである。その息子である芳正氏も親中派で知られ、日中友好議員連盟の会長を歴任するなどをしている。もともとは三井物産などを経て政治家秘書となり1995年の参議院選挙で初当選をしている議員である。

 一応親しい議員の間の話では「性格は理知的で周囲の信頼が厚い」とされるが、一方で「思い切りの良さや突破力に欠ける」とか「押しに弱い」「攻撃されると逃げる一方になる」などの指摘があり、基本的に海千山千の外交の場でうまくできるのかはかなり大きな疑問がある人事であるとされている。

 このような人事を岸田内閣が行ったのは、基本的には「宏池会」という岸田派の派閥内の問題であり、岸田氏が首相を退任した後に、宏池会を任せる人材、つまり、岸田内閣の後の首相候補として林芳正氏を指名したということに解釈できる。というのも、もともとは小野寺五典氏が、防衛大臣を歴任しており、現在の尖閣諸島問題や竹島問題、北朝鮮の不審船問題などに関してしっかりとした対応を行っており、茂木氏の後の外務大臣にする声が上がっていた。林芳正氏は議員生活は長いものの、衆議院としては今回の総選挙が初当選になる。また、その衆議院への鞍替えには二階派の河村建夫議員との公認争いがあり、無理やり引退させた経緯があることから、二階派への遠慮ということも考えなければ党内融和は図れないということになろう。

 しかし、その辺の事情を無視して外務大臣につけたということは「党内融和」特に二階派との確執を全く考えずに宏池会の中の事情を優先した姿が見える。そのようなことで大人事を行ってよいのか。

台湾情勢で中国に強い懸念 軍事侵攻なら半導体危機―「危険な不確実性の時代」・米議会報告

 【ワシントン時事】米議会の超党派諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」は17日、2021年に創立100年を迎えた中国共産党が覇権を目指す行動を強めており、台湾海峡をめぐる「危険な不確実性の時代」に突入したと強い懸念を示す年次報告書を公表した。半導体生産が集中する台湾と中国が軍事衝突すれば「世界経済に混乱を招きかねない」と警鐘を鳴らした。

「戦略的安定」議論で一致 サイバー安保、核テーマか―米中首脳

 バイデン米政権や同盟国をはじめとする外国の制裁に対抗する「反外国制裁法」導入など、中国が国際規範やルールに縛られずに影響力を拡大しつつあると訴える内容。報告書は歴代米政権や議会の対中政策の指針となっており、米国に根付く対中不信の強さを改めて浮き彫りにした。

 安全保障面では、中国の軍備増強に警戒感を示した上で「中国軍は高リスクな台湾上陸作戦に必要となる初期能力を手中にしたか、それに近づいている」と分析。台湾統一に対する野心が武力行使のリスクを上回れば「米国の抑止力が機能しない恐れがある」として、多数の対艦ミサイルをインド太平洋地域に配備するなどの対策を講じる必要性も訴えた。

 中国の台湾侵攻がもたらすリスクとして「半導体サプライチェーン(供給網)の混乱」を挙げた。台湾積体電路製造(TSMC)などの台湾メーカーが最先端半導体生産の9割を独占しており、工場の稼働が1年間停止すれば、世界の家電市場だけで4900億ドル(約56兆円)の損失が発生するとの試算を紹介した。

 経済をめぐる競争では、中国が「軍事近代化に向けて国有・民間企業、研究機関、投資ファンドの連携を強めている」と批判。軍産複合体が巨額の政府補助金を使い、米国など外国産の半導体や新興技術の獲得に動いていると断じた。中国人民銀行(中央銀行)が近く導入する「デジタル人民元」についても、「長期的に基軸通貨・米ドルの地位と米金融制裁の効果を損なう可能性がある」と警告を発した。

2021年11月18日00時38分 時事通信社

https://www.jiji.com/jc/article?k=2021111800030&g=int

日中外相会談 王毅外相「一線を越えないよう望む」

 林外務大臣との初めての電話会談で中国の王毅外相は歴史や台湾の問題を巡り「一線を越えないよう望む」と釘を刺しました。

 中国外務省の発表によりますと、会談で王毅外相は来年の北京オリンピックや日中国交正常化50周年に合わせて両国関係について「前向きな世論と社会の雰囲気を作るべきだ」と指摘しました。

 一方で、歴史や台湾を巡っては「両国の基本的な信義に関わる重要な問題についてぶれず、後退せず、一線を越えないよう望む」と牽制(けんせい)しました。

 そのうえで、王毅外相は尖閣諸島や香港、南シナ海などの問題について中国側の原則的な立場を説明したということです。

 中国側の発表によりますと、林大臣は「相違を適切にコントロールし建設的で安定した日中関係の構築を進めていきたい」と応じたということです。

2021年11月19日 0時39分 テレ朝news

https://news.livedoor.com/article/detail/21216419/

 上記のような林芳正氏の性格から、林芳正氏については「内務官僚向き」であるという指摘も少なくない。確かに農林水産大臣などであれば、特に大きな問題はないし、また鳩山内閣の時に菅直人財務大臣をやり込めたエピソードが有名であるが、そのようなこともすべて「国内」もっと言えば永田町内の中でしかない。ある意味で「内弁慶的な政治姿勢」で外務大臣を務めるのはいかがか。ハードネゴシエーターであるかどうかということが最も重要な場所であり、ある程度のところで妥協してしまうような状況では意味がないのである。

 基本的には、そのように「能力があるとは思えない」林芳正氏を抜擢した背景には岸田内閣の外交姿勢が見え隠れする。そもそも、「お公家衆」といわれた宏池会は、タカ派的な外交を行うことは好まないどころか、ある意味で「リベラル」というような感覚になる。自民党を左傾化させた張本人であるといって過言ではない。それでも、宏池会が大派閥になれたのは、一つには池田隼人氏の経済政策のすばらしさを現在も評価していることと、官僚との綿密なつながりである。逆に言えば、現在の官僚の左傾化傾向は自民党の宏池会が作ったといって過言ではない。

 同様のことは中谷元人権担当補佐官にも言える。この人事が発表された時、一時は、中国における香港やウイグル、最近ではテニスプレーヤーの話などが挙げられるといわていたが、実際には、日本の同性婚の問題や女性の進出、場合によっては在日外国人の勢力の拡大につながりかねない状況を作り出す補佐官になるということになろう。要するに岸田内閣は「日本」を壊すことで経済再生を図るということを企画していることになる。

 岸田内閣の内容は「第二次高度経済成長」である。しかし現在の日本の経済などから考えれば、「中国経済を完全に無視して高度経済成長がありうるのか」ということになりかねない。その意味で言えば岸田内閣は「公約実現のために親中外交に舵を切る」ということを「始め方主張していた」ということになる。もっと言えば、対中強硬派を内閣や党幹部から排除したということになるのである。

 そのように考えれば、「テニスプレイヤーの人権問題」でも何のコメントも出さないし、中国の尖閣諸島進出に関しても公式のコメントは出ていない。

 この状態で注目されたのが、外務大臣に就任し、アメリカよりも先に中国に出かけて行った林芳正氏である。しかし、上記の記事の通り、完全に押し切られて帰ってきている。「両国の基本的な信義に関わる重要な問題についてぶれず、後退せず、一線を越えないよう望む」<上記より抜粋>とくぎを刺された回答が、「相違を適切にコントロールし建設的で安定した日中関係の構築を進めていきたい」<上記より抜粋>では話にならないではないか。

 ある意味で、岸田内閣では自民党の支持層である「対中強硬派保守層」の支持を得ることはできない。そのことは、そのまま来年の北京オリンピックの外交ボイコットなどアメリカやイギリスに追従できない日本を意味し、日本はアメリカから排除される対象になりかねない。同時に、そのことによって親米派なども自民党支持(岸田内閣支持)から離れることになり、来年の7月の参議院選挙での大敗、ねじれ国会を意味することになる。ある意味で小泉純一郎長期政権の後の、福田内閣が親中派となり、その後ガタガタになるというパターンに引きずり込まれることになる。

 まさに「歴史は繰り返す」というようなことであり、また暗黒の時代の入り口に立ってしまったような恐れを感じる。

宇田川源流

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