「宇田川源流」 イラン大統領選挙で反米強硬派のライシ氏が当選し今後の世界情勢が悪化する予想

「宇田川源流」 イラン大統領選挙で反米強硬派のライシ氏が当選し今後の世界情勢が悪化する予想


 18日(現地時間)に投票が行われたイランの大統領選挙において、日本ではほとんど注目されていないが、本来はホルムズ海峡を通る日本のタンカーのほとんどが影響する、つまり日本の石油やアルコールそのほか化学原料の90%に近い内容が通る海峡において、その沿岸国が日本やアメリカに対して対抗するか、それとも友好的な状況になるかということなので、日本にとってはかなり重要な選挙である。正直な話、韓国の大統領選巨よりもはるかに重要な選挙であろう。しかし、なぜか日本では五輪の話とコロナの話ばかりで、そのような重要な話はほとんど報道しない。

 さて、イランの政治体制というのは、日本とは異なるちょっと複雑である。不敬で不謹慎な言い方になるが、皆さんの理解のためということで、あえて日本の政治体制を例にとって説明してみる。

 そもそも日本の天皇に当たるところに、「宗教的指導者」という存在がある。イスラム教の場合、絶対神アラーがもっとも高位に位置する。その神の意向をそのまま受けることのできる「アリー」の代理人として、宗教的指導者がいる。現在ではハメネイ師がそれに当たる。その宗教指導者が三権の長、つまり司法府長官(日本で言う最高裁判所のようなところ)、大統領、議会を任命、または罷免する権利を持つのである。基本的に最高指導者は「主権」を持っているというような感覚でよいのだが、実際は、そもそも人間が存在させてもらっている唯一絶対神の代理人ということになるのであるから、そのいこうはぜったいであるということになる。

 さて、特徴的なのは、国軍は本来軍隊であるから大統領の下になるのであるが、国軍そのものの司令官などもすべて宗教的指導者の任命によるものになる。しかし、発動は自衛行為以外すべて大統領の管轄になる。しかし、革命防衛隊は「イスラム教の宗教全体の革命を訴える」ということになるので、国際組織であり、これは完全に宗教的指導者の下になる。いわゆるゴドス軍といわれるスパイ組織も宗教的指導者の直轄組織となるのである。

 さて、今回はその大統領が「反米強硬派」に決まった。

 

イラン新大統領にライシ師=反米強硬派、8年ぶり政権復帰―過去最低の投票率

 【テヘラン時事】イランで保守穏健派ロウハニ大統領の任期満了に伴い18日実施された大統領選で、内務省は19日、保守強硬派のライシ司法府代表(60)が得票率約62%で当選したと発表した。強硬派が大統領に就くのは2005~13年のアハマディネジャド前政権以来で、8年ぶりの政権復帰となる。

 投票率は約48.8%。事前に強硬派圧勝との見方が強かったため有権者の関心が低く、「イスラム共和制」を確立した1979年のイラン革命以降では93年の約50.6%を下回り過去最低となった。

 ロウハニ師は19日、ライシ師の元を訪れて会談し、「新大統領は国情をよく理解している」と新政権への期待を表明。ライシ師は「国民生活の問題解決のため全力を尽くす」と抱負を述べた。大統領の任期は4年で、ライシ師は8月に就任する。 【時事通信社】

2021年06月19日 23時10分 時事通信

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-1116761/

 まずは、護憲評議会というものがあり、そこで立候補者の資格審査がなされる。もちろん、キリスト教徒などが入り込まないためである。今回は5月11日~15日に立候補の届け出があり、26日~27日までに7人の立候補者に絞られた。ロウハニ大統領は、穏健派というよりは民主派というような感覚であり、昨年のスレイマニ将軍の暗殺事件においても戦争にならないように国論を治めた人物であるが、そのロウハニ大統領は「選択肢を増やすように」というようなことを訴えいていたが、ハメネイ師は「7人としたことを尊重する」というようなコメントを出したために、そのままになってしまった。

 もともとこの時点で今回当選したライヒ氏がほぼ確実であろうというように言われていたために、イラン国内では大統領選巨でありながらもしらけたムードであり、そのことは今回上記にもあるように過去最低の投票率という形で現れたことになる。

 さて、その白けた選挙によってライヒ大統領が選出された

 アメリカはバイデン大統領に代わり、また、イランがライヒ大統領に代わるという状況で、6月3日からイランの核合意に関する交渉は止まっており、アメリカは核合意に関して不参加になったまま現状になっている。ライヒ大統領は選挙期間中の主張から核合意に関しては、交渉を壊さずに成功させたいというように言っていたと報道されている。しかし、イランの場合はすでにIAEAから危険レベル(核ミサイルを生産できるレベル、つまり平和利用の核を超えているという意味)での核が扱われており、警告がなされている。また、ソレイマニ将軍なきあと体勢を立て直し、ハマスなどに連携しているゴドスがどのように動くのかということも注目に値する状況ではないか。つまり、ゴドスが地中の核実験施設で何を作っているかわからない。

 アメリカから見れば、何よりもアメリカが現在(将来はわからないが)敵視している中国共産党との関係が深く、そのことから隠密、情報公開なしに何をしているかわからないという状況で「反米強硬派」の大統領が選出されたということをどのように考えるのかということが大きな問題になる。そのうえ、アメリカにとっては重要な同盟国であるイスラエルのネタニヤフ大統領が倒れ、内閣が変わってしまっているということもある。トランプ大統領の時にアメリカを支えていたアデルソン氏やネタニヤフ体制が消えてしまうということは、ある意味で中東における橋頭保を失ったことにつながる。

 このような中でイランの核合意交渉の行方は不透明であり、そのことから、当然に、中東情勢は不安定になるということを意味しているのである。

 さて、世界はこのようにかなり活発に動いているにも関わらず、日本はいまだにオリンピックとかコロナとか言っている。残念ながら世界情勢からは周回遅れどころではない感じだ。オリンピックでこの新しいライヒ大統領が来るのか、かなり注目されるところではあるが、世界の首脳や幹部が集まるこの外交の場をどのように考えるのかということが大きな問題になるのではないか。そのような観点で全体を見ることのできる報道がないことが、日本のガンである。

宇田川源流

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