「宇田川源流」 G7サミット閉幕から見る「陰の主役」というか「悪役」中華人民共和国の存在

「宇田川源流」 G7サミット閉幕から見る「陰の主役」というか「悪役」中華人民共和国の存在


 先進七か国首脳会議、いわゆる「G7」がイギリスで行われた。Group of Seven(G7)は、フランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダで構成される政府間の政治フォーラムである。旧ソ連崩壊後、1998年からクリミア紛争による経済制裁までの期間はロシアも加盟していたので、「G8」と言われていたのであるが、クリミア紛争により理念を共有できないということからロシアが招待されなくなった。

 メンバーは世界最大のIMF先進国であり、最も裕福な自由民主主義国であり、グループは多元主義と代議制政府という共通の価値観に基づいて公式に組織されている。逆に言えば、「自由主義でも裕福でない」国は、呼ばれないし、また、裕福であっても「自由民主主義国で多元主義と代議制政府という価値観が共有できない」国も招待されない。中華人民共和国がこのG7に招待されないのは、まさにそのような事情によるものである。メンバーはいずれも世界的な大国であり、経済、軍事、外交面で緊密な関係を保っている。

 日本では上記にように「先進七か国」というような言い方をするのであるが、実際には「旧西側諸国先進七か国」であり、自由主義と民主主義を守るということが大きな目的になっていた。この会議は1973年に、いわゆる石油ショックで世界経済が沈滞ムードになった時に、臨時で5ヵ国、G7からイタリアとカナダを除いた5カ国の財務大臣が集まったところから始まっているものであり、その後75年からイタリアとカナダが加盟するというような状況になっている。

 日本では、2016年の伊勢志摩サミット(安倍内閣)や2008年の洞爺湖サミットがあったことを記憶している人もいるのではないか。専属の事務局があるわけではなく、各国議長国が持ち回りで、各国を招待し、そしてその時の喫緊の課題を話すことになっている。

 2020年6月、同年の開催国にあたるアメリカのトランプ大統領はG7の枠組みを「時代遅れだ」と批判し、ロシア、オーストラリア、インド、韓国を加えG10またはG11に拡大したい意向を示したが、新型コロナウイルスの流行を背景に「対中包囲網」という意識もあると見られる。ただし、G7全諸国の承認が必要であるのが条件でイギリスやカナダはロシアの参加に反対し、ロシアも中国排除の仕組みに意味がないと難色を示したことによって実現していない。

 そのG7が今年ロンドンで開催された。

 

「中国に懸念」宣言明記へ=途上国向け投資で対抗―G7サミット今夜閉幕

 【コーンウォール(英南西部)時事】英国南西部コーンウォールで開催中の先進7カ国首脳会議(G7サミット)は13日午後(日本時間同日夜)、3日間の議論の成果を盛り込んだ首脳宣言を採択し、閉幕する。覇権主義的な行動を強め、人権侵害が問題視される中国への「懸念」を宣言に盛り込む見通し。日米欧が結束して対抗する姿勢を打ち出す。

 2日目の12日午前(日本時間同日午後)に行われた討議は経済分野が主な議題とされたが、中国問題にも言及が相次いだ。菅義偉首相は、東・南シナ海での一方的な現状変更の試みや新疆ウイグル自治区での人権侵害などは「G7の価値観」に反するとして「深い懸念」を表明。G7が連携して行動するよう呼び掛けた。

 首相の発言について、日本政府関係者は首脳宣言に「力強く反映される」と指摘した。

 G7は途上国向けに数年間で数千億ドル(数十兆円)規模のインフラ投資を進める新たな計画でも合意した。健康・医療やデジタル技術など4分野が軸。米政府には中国の経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いがあり、自由貿易や民主主義の価値観を共有するG7が足並みをそろえる。

 首脳宣言には「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されるかも焦点。サミット閉幕を受けて議長のジョンソン英首相が記者会見し、G7の一体性をアピールする。 【時事通信社】

2021年06月13日 07時19分 時事通信


 一年でそんなに大きく喫緊の課題が変わるわけではない。つまり、2020年にアメリカのトランプ前大統領が提唱した「コロナウイルス」と「中国」ということがいわれていたのであるが、まさに、そのことが今年も課題である。2020年のサミットから、日本が安倍晋三首相から菅義偉首相に代わり、アメリカがトランプ大統領からバイデン大統領に代わった。その変化によって、何かが変わるのか、特に、トランプ大統領からバイデン大統領に変わったことによって何が変わったのか、ということがもっと注目された。

 特にバイデン大統領は「親中派」ではないかといわれていたし、また、南シナ海の環礁埋め立てをずっと放置していたオバマ大統領の時代の副大統領である。そのために中国の人権問題などもすべておかしな話になるのではないかというような観測になっていた。

 しかし、この内容活かして、「人権問題(ウイグル・内モンゴル・チベット・香港を含む)と、「一帯一路への対抗策」そして「台湾問題」というような形で、今回の内容は中国を意識した内容になっている。そのうえで、「コロナウイルスの原因追及」というようなことも合意しているのである。

 単純に、「旧東西冷戦の主役がソ連から中国に変わった」ということに他ならない。そのように何が得た場合、当然に「中国を軸にした冷戦関係」問うことが見えてくるのであり、「日本はそのどちらの陣営につくのか」ということまたは「韓国は中国寄りであるが、その韓国とはどのように付き合ってゆくのか(国交断絶を含み今までの通りでよいのかということを見直す時期に来たのではないか)」というような感じになってきているのではないか。

 アメリカは、民主党を含め中国に対抗する状況に国論がまとまりつつある。そろそろ、「ソ連=ロシア脅威論」から「中国脅威論」そして「反共産主義」に移る形になってくることになるのではないか。もちろん、バイデン大統領だけでなく、ハリス副大統領が何を考えているかなどによって物事が変わるが、バイデン大統領に親中極左が入らなかったということも少しは期待できる。もちろん民主党なので、あまり期待できないのであるが、そのことまで考えて日本はどのように今後の外交を考えてゆくのかということをしっかりと見てゆかなければならない。旧冷戦の枠組みではなくなったということを意味しているのである。

 「敵」、まあ、仮面ライダーで言う死神博士、宇宙戦艦ヤマトで言うガミラスのデスラーがあるが、まさにヒールでなおかつ敵対的な存在として、中国共産党が出てきた。その21世紀の冷戦の時代に、対応できる企業や外交を行わなければ、これから先の時代に生き残れない。そのことを強く意識した「G7」であったのではないか。

宇田川源流

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