「宇田川源流」 民主化推進をしていた議員が辞任する香港の異常事態とアメリカの弱体化

「宇田川源流」 民主化推進をしていた議員が辞任する香港の異常事態とアメリカの弱体化


 中国における香港の「共産主義化」の進み方がかなりひどく、なかなか大変なことになっている。今週の月曜日のブログでも見たように香港の住みやすさは11位に後退している。このように考えると、香港は少なくともアメリカから見ても住みにくい場所になっているのではないか。

中華人民共和国と中国共産党は、中国国内であるということから一国二制度を否定し、香港に中国共産党の法律の適用を徐々に進めている。ないよりも大きな問題は、言論の自由が失われることであり、政治に関して政権または共産党批判ができなくなるということであろう。

民主主義というのは、「投票システムによって政権が決まること」ではない。一人一人の自由意思による自由選択によって、その多数決で集団の方向性を決めるということが民主主義の基本である。もちろん、その多数派が必ずしも正しいのかということは、哲学的または政治哲学的な問題であり、かなり深い問題になる。このことから古代ギリシアの哲学者プラトンは「哲人政治」を提唱していた。もちろんそのようなことは難しいというか「哲人」を探すことが難しいのである。しかし、そのような議論がでるほど民主主義というのは難しい。

その多数決の正しさということではなく、実際には「一人一人の有権者の自由意思」ということが大きな問題になる。これは、「情報」があり、その情報から「他の人の影響を受けることなく自由な意思で選択する」ということがあり、また、その「選択肢が自由の範疇の中で決められていること」が重要になるのである。つまり「自由意思を形成できるような情報の公開が必要だ李マスコミや政府にはその義務が課されている」ということになる。当然に「言論の自由」は「自由意思形成の要素」であり、また、その中で選択肢が得られなければならないということになるのである。

では今、国家安全保障法ができた香港にその言論の自由はあるのか?

忠誠に抗議 議員19人辞職/香

 【香港時事】中国全国人民代表大会(全人代)常務委員会は11日、香港立法会(議会)の議員資格として中国や香港への「忠誠」を求め、「中国による香港への主権行使を認めない場合、議員資格を失う」などと決定した。規制強化による民主派排除を狙った内容だ。香港政府は同日、常務委の判断に従って民主派4議員の資格の即時失効を発表した。

 民主派議員19人は11日夕に会見し、4人以外の15人も抗議のため一斉辞職すると表明。民主党の胡志偉主席は「中央政府は一国二制度を完全に放棄した」と糾弾した。定数70の立法会で21人いた民主派は2人に激減することになり、今後は親中派の独壇場だ。

 常務委の決定によると、中国からの香港独立を支持したり、外国勢力の干渉を招いたりした場合、また国家の安全に危害を加えた場合は、香港基本法(憲法に相当)に忠実でないと判断され、議員資格を喪失する。議場での抗議や異議表明など、これまで民主派議員が展開してきたあらゆる行為が新規制に違反すると見なされる恐れがあり、立法会における民主派の存続自体が危ぶまれる。

 資格剥奪の対象となった4議員は、公民党の楊岳橋氏や郭栄鏗氏ら。4人は9月6日に予定されていた立法会選挙(1年延期が決定)への出馬を表明していたが、選挙管理当局は「議員の職責を忠実に果たす意思がない」などとして立候補を認めなかった。今回の決定は立候補届け出時にさかのぼって適用されるため、4人は既に資格停止の条件がそろっていると判断された。

 香港の林鄭月娥行政長官は11日午後に記者会見し、「決定は合法、合理的なものだ」と支持を表明。常務委での審議は自身が要請したものだと述べた。 【時事通信社】

2020年11月11日 20時05分 時事通信

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-856712/

香港民主派4人 議員資格失う

 香港政府は、中国の国会にあたる全国人民代表大会の委員会の決定を受け、立法会の4人の民主派議員が議員資格を失ったと発表しました。民主派議員らは強く反発しています。

 中国国営の新華社通信によりますと、全人代=全国人民代表大会の常務委員会は11日、「香港の独立」を主張したり、外国勢力に香港の問題に介入するよう求めたりして、「中国や香港政府への忠誠」を誓うことに違反した場合、立法会議員の資格を失うことを決定したと発表しました。これを受け、香港政府は立法会の4人の民主派議員が議員資格を失ったと発表しました。

 香港メディアによると、資格を喪失した議員の1人は11日、「『一国二制度』が跡形もなく消えたことを意味する」と非難しているということです。

 今回の決定で、立法会は親中派が3分の2以上を占め、議員の罷免など重要な事案を決定できるようになります。ほかの民主派議員は、4人が資格を失った場合、「全員で議員辞職し、抗議する」と反発を強めていました。(11日15:15)

2020年11月11日 17時26分 TBS

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12198-856837/

 まずは改めて「香港国家安全維持法」を見てみよう。

国家安全維持法の10の要点は以下の通りである。国家安全維持法は、香港の永住者と非永住者の両方に適用され、2020年6月30日の施行以前の行為については適用されないとしている。そのうえで要点である。

1.「国家からの離脱、転覆行為、テロリズム、香港に介入する外国勢力との結託」の4つを犯罪行為と定める。

2.国家安全維持法に違反すると最低3年、最高で無期懲役

3.香港の法律と矛盾する場合は国家安全維持法が優先される

4.裁判は非公開でおこなう可能性がある

5.中国政府は香港に国家安全オフィス(NSO)を設立する

6.中国が深刻とみなせば、海外にいる香港非居住者も対象となる可能性がある

7.香港警察内に新たに国家安全保障部を設立し、警察に多様な権力を与える

8.香港の行政長官は裁判官を任命できるが、国家安全を危険にさらす発言をした裁判官は任命されない

9.行政長官を代表とする新たな国家安全保障委員会を設立

10.香港政府は、学校、メディア、インターネットなどで市民への教育を要求する

 さて、この法律が適用されて香港の行政院の議員が「中国や香港政府への忠誠」を誓うことに違反した<上記より抜粋>ということになるのである。つまり「政府を批判する」と「議員の資格を失う」ということである。日本で言えば今の野党はすべて議員資格を失うということになる。残念ながらその状況で中国政府に抗議をする日本の議員がいないところはなかなか興味深い。

さて、これを受けて民主派の19人の議員が一斉に辞任した。はっきり言うが、辞めれば共産党側の誰かが議員として入るだけで何の意味もないのではないか。実際にこのような状況を見て、中国以外の国が声を上げるのであればよいが、現在コロナウイルス禍で中国共産党政府に話をできるような状況ではない。そのために、結局は意味がない辞任になってしまっているのではないか。

コロナウイルスということは、身近なところで様々な話になっているが、その間に様々なところで中国の覇権主義が進んでいる。このまま行けば、台湾も同じようになるのではないか。こう考えれば、実はこの香港の問題は「対岸の火事」ではないのである。

そのように考えて次の段階に備えなければならないのではないか。

宇田川源流

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