「宇田川源流」【大河ドラマ麒麟がくる】 明智光秀と因縁の関係「洞ヶ峠」の悪名が残る筒井順慶と明智光秀の「駆け引き」の妙

「宇田川源流」【大河ドラマ麒麟がくる】 明智光秀と因縁の関係「洞ヶ峠」の悪名が残る筒井順慶と明智光秀の「駆け引き」の妙


 久しぶりに水曜日は大河ドラマ「麒麟がくる」について書いてみたい。やはり戦国時代のこれらのやり取りは非常に面白い。

さて筒井順慶という僧侶兼戦国大名がいる。実際に、僧侶と戦国大名を兼ねているのは少なくなく、だいたい有名な武田信玄も上杉謙信もいずれも「僧侶」であろう。ある程度人を殺してくると、ある意味で、仏心がくるのか出家をするというところが日本人の中にはあるらしく、戦国大名と僧侶を兼ねている人は少なくなかった。このほかにも安国寺恵瓊など僧侶の風情をしている戦国大名は少なくない。

筒井順慶もそのような人物の中の一人であり、一族の多くが出家している大和国(現在の奈良県)の戦国大名である。もともと筒井氏は大神神社の神官・大神氏の一族と言われている。筒井氏は大和国添下郡筒井の土豪として大和に勢力を持っていた。鎌倉時代大和国の守護は「興福寺」が務めていたという特殊な事情から、筒井氏もその衆徒として組み込まれ、戦国時代に入ると興福寺の勢力が衰退し、大和四家と言われる筒井氏・越智氏・十市氏・箸尾氏の勢力が台頭してくる。そして、その中において応仁の乱後の様々な乱や畠山氏との関係などから、筒井氏が興福寺に属しながら越智氏を滅ぼして勢力を拡大していったのである。

その後両細川氏の乱をと律しきった三好長慶の下で勢力を蓄えた松永久秀が大和国の多聞山城に勢力を蓄えるようになり、その中で、筒井順慶は大和国の支配権をめぐって松永と筒井で争うことになるのである。

永禄8年(1565年)から永禄11年(1568年)の間に筒井順慶と松永久秀によって大和筒井城周辺で3度に渡って繰り広げられ最終的には織田信長の仲裁によって双方ともに大和の国に残ることになる。松永久秀はこの間に信貴山城に移り、筒井は筒井城に戻る。その中で、明智光秀が重要な役割をしたことは様々な記録にある通りだ。

これはドラマではなく、史実の話である。ではドラマではどうであったのか。

『麒麟がくる』“筒井順慶”駿河太郎、光秀との駆け引き「間を意識した」

 俳優の長谷川博己が主演を務めるNHK大河ドラマ『麒麟がくる』(毎週日曜20:00~)。15日に放送される第32回「反撃の二百挺(ちょう)」では、筒井順慶役の駿河太郎が初登場する。

 筒井順慶は、もと大和興福寺の衆徒。代々大和土着の豪族であり、大和を支配下におこうとする松永久秀(吉田鋼太郎)と対立。間に入る明智光秀(長谷川博己)と接近する。

 駿河は「筒井順慶は地元の方にすごく愛されてた人ということで、武将としての駆け引きの部分と人としてのおおらかさを意識して演じています。特殊メイクや衣装などからも、単なるお坊さんではなくちゃんと武将に見えるようにしています」と説明。

「順慶は松永久秀と敵対する役ですが、吉田鋼太郎さんとご一緒できるのはすごく楽しみです。視聴者目線で見ているかぎり、鋼太郎さんは結構自由に演じていらっしゃるので、あそこまでお芝居を楽しめるのはすばらしいし、見習わないといけないなと思っていますが、一方で順慶はちゃんと演じないといけないなと・・・。順慶は若くして1つの国を治めてきているので、松永だけではなく誰かと相対したときには、凜とした強さが必要ではないかと思っています。今後、久秀と関わるシーンも多くなると思いますので、どういうお芝居になっていくのか僕自身もとても楽しみです。僕はどれだけ鋼太郎さんがふざけてもふざけないと心に決めています(笑)」と吉田との共演について語る。

 また、ドラマの展開について「本能寺の変のあと、順慶は光秀を助けようとしていますが、最終的には秀吉側についたそうです。ドラマの中でどのように描かれるかまだ分かりませんが、自国のことや筒井家のことを考えて苦渋の決断を迫られて決断したと、ただ単に光秀を裏切ったのではない展開になっていると嬉しいです」と期待。

 初登場の第32回では、光秀と順慶との出会いが描かれるが、「光秀と鉄砲を巡って駆け引きをしますが、その場で、自分の損得を考えながら瞬時に判断していきますので、展開がとてもスリリングですし、演じる際は、駆け引きの『間』を意識しながら演じました。普段は間を詰める演技が多いのですが、演出の方からも『存分に間を取ってください』とおっしゃっていただきまして、とても新鮮でした。是非注目してご覧いただきたいと思います」と語っている。

2020/11/15 まいなびニュース

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 さてドラマの話に移ろう。この回の大河ドラマは、前回に浅井長政が裏切った。有名な「金ケ崎の退き口」のエピソードが語られた。今回は木下秀吉が殿を勤めたことに関して信じてもらえないということから始まる。あくまでも明智光秀の物語であることから、明智光秀と幕府の足利義昭の話がメインであり、織田家の中の様々な事象などは全く語られていない。また、私としては非常に残念なことなのであるが、竹中半兵衛が全く出てこない。本来、「尾張国一派」である信長軍団の中で「美濃国派」の竹中半兵衛などはかなり重要なはずである。また稲葉一鉄を斎藤利三をめぐるやり取りなども期待しているのであるが、そのへんもなかなか書かれていない。

歴史を先に知る人にとっては「自分の知っている歴史とドラマの解釈の違い」というものを楽しむのが一つのやり方であるが、もう一つは、「将来起きることに対する伏線をドラマの中で見つけ出す」ということが楽しみになる。

実際に、他の物語と異なり、歴史小説をドラマ化したものに関しては、実は私たちは「ネタばれ」ではなく「そのドラマの先を知っている」ということになる。その先を知っている我々において、その先の結論に向かってどのような伏線を敷いているのかは楽しみ方の一つであろう。

さて、今回は筒井順慶と明智光秀の出会いである。今まで明智光秀と松永久秀は何回となくあっている設定だ。松永久秀に関してはなかなか微妙なところであるが、ドラマの中では、三好三人衆や松永久通の企てた十三代将軍足利義輝暗殺に関して、松永久では止めていた立場であったということになっている。そのうえで、三好と一線を画し、織田に協力している武将というような感じであろうか。まだ斎藤道三存命中の明智光秀の鉄砲を譲り、なおかつ天保など様々なことを教える立場ということになっている。その松永久出を吉田剛太郎氏がなかなか味のある演技で支えているが、まあ、史実とはなかなか異なる部分があるので、役者でキャラクターができてしまっているとことがあるのではないか。

一方、その松永久秀の宿敵である筒井順慶を駿河太郎氏が演じている。一般には山崎の合戦の時に洞ヶ峠で日和見をして明智光秀に合力しなかったということで評価されているのが筒井順慶であるが、松永久秀とは全く異なる出会いになっている。今井宗久の茶会で鉄砲を譲れというような交渉をする相手というような状況になり、そこに駒(門脇麦)が入って保証人のような感じに使われている。このような「敵対的な状況でありながら、それをうまく外交でやり取りする」筒井順慶、現在で言えば北朝鮮とアメリカのような関係になっている感じであろうか。その役をうまく演じている。

実際に明智光秀とは松永久秀を通して敵同士、その敵であったものが織田信長という圧倒的な力の前に一緒にやっていたのであり、心を許したわけではないということが、ドラマの中では伏線になり山崎の合戦につながるのであろう。そして洞ヶ峠につながることになる。

ちなみに「洞が峠の日和見」というのは全くの創作話でそのような史実はなく、実際は筒井順慶は洞ヶ峠にまでも行っていないのであるが、まあ、その辺はドラマであるからどのように描かれるのか。

残り12回、なかなか駆け足になるがまだ伏線を作り続けている感じが面白い。

宇田川源流

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