「宇田川源流」 いまだに続くシリアの内戦における「トルコとロシアの対立」という「本来の姿」
「宇田川源流」 いまだに続くシリアの内戦における「トルコとロシアの対立」という「本来の姿」
トルコの態度はどのようなものなのであろうか。今までトルコというのは「ロシアと対立している立場」であった。
露土戦争、クリミア戦争と、トルコの歴史はイスラム教とヨーロッパの戦争そのものであったが、そこにロシアという強大な敵が現れ、イギリスやフランスなどのヨーロッパが逆にトルコの味方に付きロシアの封じ込めを行ってきた歴史である。
トルコそのものは、基本的に旧オスマントルコ帝国の版図を戻すこととイスラム教の普及ということ、そして現在のイスラム教徒の保護ということを目的に動いているのに対して、ロシアは単純に覇権主義をもって国会そして地中海などの海の支配とその海に対する根拠地である港の支配を狙っている。
主にこの二つの国の対立点になったのが「黒海」の支配と「ボスポラス海峡」ということになる。黒海は、豊富な漁場でありそしてなおかつかなり広い海であって、ロシアにとって唯一凍らない海といえる場所である。
これに対して、そこに対する港は、クリミア半島など様々な港がある。しかし、その黒海はボスポラス海峡を通らなければ、地中海そして大西洋に出ることができないが、海峡はその両岸をトルコが支配しているということになる。そこで、この海峡と黒海をめぐる戦いが古くから行われており、両国の国民感情の間ではかなり大きくできていたということになるのである。
2015年11月24日シリア戦争でのロシア軍機をトルコ機が撃墜し両国間の関係は悪化し、その後2016年6月28日イスタンブールにあるアタテュルク国際空港でロシア・ウズベキスタン・キルギスの出身である三人による銃乱射事件が発生している。この事件で犯人を含む48人が死亡、238人が負傷した。
しかし、2016年7月に反エルドアン大統領の宗教家ギュレンによるクーデター未遂事件が発生し、その事態が一変する。エルドアン大統領はロシアのプーチン大統領との間で、関係を修復し、そしてギュレンが亡命しているアメリカとの間の関係を悪化させて、そのうえで、ロシアとトルコが同盟に近い関係になっていたのである。もちろん「近い」というところがかなり大きなポイントになるのであるが、この動きはなかなか大きな動きであった。
トルコ兵含む27人死亡=アサド政権と反体制派が交戦―シリア北西部
【エルサレム時事】内戦が続くシリアの北西部イドリブ県で20日、ロシアを後ろ盾とするアサド政権部隊とトルコが支援するシリア反体制派が交戦し、在英のシリア人権監視団によると、トルコ兵2人を含む27人が死亡した。トルコとロシアの間で緊張が高まる恐れがある。
人権監視団の情報では、イドリブ県のナイラブ一帯にトルコ軍の支援を受ける反体制派が攻撃を仕掛け、政権側が応戦。衝突は数時間にわたって繰り広げられ、トルコ兵のほか反体制派武装組織の14人、政権側の11人がそれぞれ命を落とした。
トルコ国防省も声明で「トルコ側の要員に対する空爆」で兵士2人が死亡したと認め、アサド政権部隊に激しい反撃を加えたと強調した。空爆は政権側によるものとみられるが、ロシアが関与したかどうかは不明。 【時事通信社】
2020年02月21日 07時42分 時事通信
https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-570252/
内戦続くシリア 空爆を「ゲームだから笑って」と父、笑顔の娘 動画が世界中で反響
今も内戦が続くシリア北西部イドリブ県に住む父と娘の動画が世界中で反響を呼んでいる。娘が空爆による爆音を怖がらないよう、父親がゲームだと言い聞かせ、娘は音が聞こえるたびに大声で笑う。動画から伝わる切ない戦地の現実が見る人の胸につきささる。
中東カタールの放送局「アルジャジーラ」が運営する動画ニュースサイト「AJ+」によると、動画に登場するのは、イドリブ県に住むアブドラ・ムハンマドさんと3歳の娘。反体制派の一部が残っているとされる現地で、アサド政権側の空爆が続く中、アブドラさんは娘が怖がらないように「ゲーム」を考案し、爆音が聞こえたら笑うよう娘に教えた。
動画では、アブドラさんが娘に「今度は飛行機かな爆弾かな」と問いかけ、娘は「爆弾よ」と答える。まもなく爆発音がして、娘は大声で笑い転げ、「ああ、面白い」と笑顔が止まらない。「AJ+」は動画に解説を加え、「シリア北西部では2019年末以降、60万人が家を失い、紛争下で育つ子どもたちは精神面で問題を抱えるとみられる。アブドラさんは、これに対抗するためにこのゲームを思いついた。アブドラさんは3歳の娘に適切な教育を受けさせたいと願っている」としている。
他にも海外の多くのニュースサイトなどがこの動画を取り上げており、視聴者からは「女の子の笑顔に涙が出る」「胸がはりさけそうだ」「何て勇敢な父親なんだ。どうか2人が無事でいてほしい」などと書き込みが相次いでいる。
シリアでは11年以降、民主化運動「アラブの春」が起こり、これをアサド政権が弾圧。さらに過激派組織「イスラム国」(IS)も加わり、内戦が激化した。ISの勢力はほぼ掃討されたが、反体制派の最後の拠点イドリブ県で政権側との戦闘が続いている。【鵜塚健/統合デジタル取材センター】
毎日新聞2020年02月18日23時09分
https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/mainichi/world/mainichi-20200218k0000m030364000c
エルドアン大統領の独裁に近い政治が、かなり陰りを見せているのが現在の状況である。これは主に「経済問題」が大きな問題であると言える。
経済問題の一つは、ヨーロッパから受け入れているシリアや北アフリカの難民である。約450万人といわれる難民を受け入れており、その難民の生活費や経費などは、すべてトルコが負担している状況になっている。
EUは、ドイツのメルケル首相が難民受け入れを徐々に問題視する様になってしまってからその難民をすべてトルコに送っているのであり、トルコはその難民を引き受ける代わりに、Euとの間の外交関係を優位に進めていたということになる。
当然に、そのEUとの関係の優位というのはロシアがある程度関与し、経済的に支援していた形跡があるのだ。
つまりロシアがトルコを使って間接的にEUをコントロールしていたということになる。当然に、その関係が崩れてくるのはロシアがクリミア半島の奪取によって経済制裁を受け、トルコを支援しきれなくなった場合、つまり、トルコがロシアからの金で難民を賄いきれなくなったということを意味しているのであり、その内容がトルコとロシアの関係を大きく変えることになる。
もちろん、ギュレンを亡命させたのは、オバマ大統領でありトランプ大統領の時代ではない。そのことを考えると、エルドアンは民主党の支配しているアメリカを嫌っているというか、シリアの危機に何の対応もしなかったオバマ大統領が嫌いであったという解釈も成り立つが、さすがにこのことは推測の域を出ないし、トランプ大統領になって劇的に関係が良くなったというような感覚もない。
どちらかというとトランプ大統領とトルコの間においても、例えば、サウジアラビアの皇太子に批判的であったジャーナリストのカショギ氏の暗殺事件などであまり良い関係であったとは考えにくい状態になっているのである。
しかし、最近になって優位になってきたシリアのアサド政権とその内戦に関して、動きが変わってきている。実際に、シリアのアサド政権は「自分に反対する集団はすべて抹殺する」という方針になっており、またロシアにとってもその方が都合がよいのでロシアはそれを空爆という形で力を貸している。
ロシアは、シリアのタルトゥースの海軍補給基地やラタキアのフメイミム空軍基地が存在し、アサド政権との関係を深めている。アサド政権が「シーア派」でありイランとの関係が深いことを考えると、当然にシリアの攻撃している先は「スンニ派」ということになる。
つまり、その状況はロシアの空爆は単純に、「本来トルコが守るべき中東のスンニ派の人々を虐殺している」ということにすぎず、トルコは「スンニ派の盟主」という立場と「ロシアとの経済的な関係」ということの二つの板挟みにあうことになる。
そのうえで、それを守るトルコ兵とアサド軍との間での戦闘でトルコ兵が死亡するという事件が発生する。これはアメリカ軍が撤退したことによるものであり、トルコは一時クルド人を排撃していたが、それだけではなくトルコ軍も、つまりスンニ派も攻撃するようになってきたのである。これはロシアが、トルコを攻撃したと解釈もでき、今後の緊張が高まる結果になってきた。
もともと対立していたのがギュレンクーデターで一時的に蜜月になったという感じの両国。そのエルドアンが経済問題で徐々に支持率を失ってきた状況で、今後どのように両国家間が動くのかはかなり大きな問題になる。
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