「宇田川源流」 台湾総統選挙で蔡英文総統が史上最高得票で再選ということの東アジア的意味

「宇田川源流」 台湾総統選挙で蔡英文総統が史上最高得票で再選ということの東アジア的意味

 1月11日、台湾の総統選挙が行われ、大方の予想通りに再英文総統が再選された。

総統選挙には、国民党の党首であるの韓国瑜氏と、親民党の宋楚瑜氏も立候補した。

結果は蔡英文候補(頼清徳副総統候補) 8,170,231

韓国瑜候補(張善政副総統候補) 5,522,119

宋楚候補(余湘副総統候補) 608,590

無効票・白票 163,631

という結果で得票率57.13%で蔡英文総統が圧勝したということになる。

さて、今回と前回2016年、ともにその争点は中華人民共和国との関係になってた。もちろん蔡英文総統側が、中国からの独立を掲げていたのに対して、中国共産党との融和ということをか投げて戦ったのが、国民党であった。本来、中国共産党との関係を考えれば、「国共内戦」ということで敗北していた台湾に逃げてきたのが中国国民党ということになり、その戦争を「内戦」というように規定することによって「一つの台湾」ということを行ってきていたのである。本来ならば共産主義を最も禁止していたのが国民党であり、蒋経国の時代まで「反共産主義」で戒厳令を出していたほどである。しかし、馬英九総統の時には、中国共産党との連携を模索し、貿易協定などを行う法案を立法院に出し、学生たちに「向日葵革命」を起させた経緯がある。

その後、台湾の中では「独立派」「現状維持派」と「中国融和派」に分かれることになる。中国融和派は、当然に中国共産党との共通の敵を模索するために「反日」を主張するのに対して、現状維持派は、現状維持のまま、独立派は日本とアメリカとの友好関係を維持し、台湾の独立を目指すということを主張するに至ったのである。そのことから「親日派=独立派」というイメージがあり、日本の保守派の中には蔡英文総統やその支持者に親近感を持つ人は少なくない。

一方で、「官僚」「教職員」「高級軍人」は、いずれも国民党エリートが多く、中国大陸に由来している人が少なくない。そのために国民党支持が多いとされている。

台湾総統選、蔡英文氏が再選 最多の得票で野党候補破る

 台湾総統選は11日投開票され、中国との統一を拒否する与党民進党の現職、蔡英文(ツァイインウェン)総統(63)が史上最多の得票で、対中融和路線の野党国民党の韓国瑜(ハンクオユイ)氏(62)らに圧勝し再選を果たした。抗議デモが続く香港情勢を追い風に、蔡氏は「一国二制度を拒否する」と訴え支持を集め、中国側に台湾の民意を突き付けた。

 蔡氏は同日夜に記者会見し、「民主的な台湾、選挙で選ばれた政府は脅しに屈服することはないと北京当局が理解することを望む」と述べた。蔡氏の得票は800万票を超え、総統選の最多得票を記録。韓氏と小政党・親民党の宋楚瑜(ソンチューユイ)主席(77)の2人の候補を大きく引き離した。投票率は前回の66・27%を上回る74・90%だった。

 蔡政権が発足した2016年以降、中国は台湾を国際会議から排除したり、台湾と外交関係を結んでいた国々を取り込んで断交に追い込んだりした。こうした圧力に対し、台湾側は米国との関係強化を背景に抵抗してきた。選挙結果は中国の対台湾政策が裏目に出たものといえるが、5月からの蔡政権2期目の4年間も、中国側の姿勢が変わらなければ中台間の緊張が続くことになりそうだ。

 選挙戦は、台湾を中国の一部と見なす「一つの中国」原則を主張して台湾統一を迫る中国との距離感が争点となった。

朝日新聞2020年01月12日01時19分

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/asahi/world/ASN197RQ6N19UHBI037?fm=topics

【台湾・総統選】「価値観共有」の日本、協力深化へ

 台湾総統選で蔡英文政権の継続が確実になったことで日本政府は引き続き「基本的な価値観を共有する重要なパートナー」として台湾と連携していく方針だ。

 安倍晋三首相は、中国の台湾統一策「一国二制度」を拒否する蔡氏とツイッター上でたびたび交流してきた。台湾を「友人」と呼び、「自由、民主主義、人権、法の支配といった普遍的価値を共有」していると述べたこともある。

 日米同盟の抑止力で中国の軍拡を牽制(けんせい)する上でも、中国と距離を置き日米との関係強化を志向する蔡氏が勝利を確実にした意義は大きい。超党派「日華議員懇談会」の古屋圭司会長(自民党)は11日、産経新聞に「喜ばしい。安全保障面でも台湾や米国との連携は重要だ。今後も議員外交を通じ日台の連携強化を進めたい」と述べた。

 首相は日中関係の改善も進めてきた。だが、一党独裁の下、少数民族弾圧を強める習近平指導部と価値観まで共有しているわけではない。中国公船の尖閣諸島(沖縄県石垣市)沖での挑発行為は増加し、日中関係の改善は安保分野には及んでいない。

 とはいえ、日台に正式な外交関係がないこともあり、日台の安保対話に向けた動きは日本側にはない。関係強化は今後も貿易など経済面が中心となりそうだ。台湾は福島など5県産の日本食品の禁輸措置を継続している。日本政府は日台の協力深化を図る上で、2期目の蔡氏が禁輸措置を解除するかにも注目している。(原川貴郎)

産経新聞2020年01月11日22時29分

https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/sankei/politics/sankei-plt2001110010?fm=ranking

 この総統選挙の9日前、1月2日、台湾軍のヘリコプターが墜落し、沈一鳴参謀総長を含む8人が死亡する事故が発生し、その中で陰謀論がネット上で展開されるような事態になった。上記のように国軍のトップといえども、アメリカ軍との関係と中国人民解放軍との関係をうまく行っているのが常である。その中で、アメリアk製ヘリコプター「ブラックホーク」が墜落した。その原因はまだ解明されていないが、昨今台湾軍機の事故が相次いでおり、そのほとんどが整備不良によるものとされている。

韓国瑜候補は、この事故に対して「国運に恵まれていない」「台湾は邪気に取りつかれたのか」などと述べ、炎上している。このようなこともあって、国民党の任期は最後まで復活することはなかった。

しかし、そもそも「軍人は国民党支持者が多い」という中であっても、その事故で国民党が責められるという事態をどのように解釈するのかということが出てくる。つまり、本来であれば、国民党に対する同情論が出てきてしかるべきであるのに、なぜか国民党に陰謀論や不謹慎論が出てきて、責められるという状況が出てきているのである。

これは、もともと、「現状維持派」が多いという状況の中で昨年6月以降の香港デモの過激化、そのうえでの中国共産党の主張やデモ鎮圧のやり方を見て「一国二制度などといっても、いつの間にか反故にされて香港のように同化させられてしまう」というような感覚になり、現状維持派、特に若者の多くが再英文支持に回ったということになる。

このように考えれば、「蔡英文候補の勝利」というよりは、ある意味で「中国共産党とそこにつながる人々の一方的な敗北」というような感じであり、勝利があるだけではなく「敵失」が重なっての票数であるというような感覚を持たざるを得ない。もちろんそのような状況であっても勝ちは勝ちであり、その勝利に問題があるわけではないが、実際に今後の政策の進め方に関しては、その点を考慮しなければならない。

一方、この台湾総統選挙の勝利に「祝意」を示したのは、「日本」「アメリカ」「イギリス」である。当然にこのことに中国はけん制し抗議を行っているが、そんなことはまあ、いつものことである。そのうえで、「イギリス」が加わったということの重要性を考えてみるべきではないか。

基本的にイギリスのジョンソン首相は、有名な「中国共産党嫌い」であり、エリザベス女王の習近平嫌いとともに、かなり今後のイギリスの政治に大きな影響を与えることになる。今回ジョンソン首相は、イランの件に関しては全くコメントを出していないのにかかわらず、台湾総統選挙に関してはいち早く祝意を示すというような感じになっており、中国共産党の講義は完全に無視している。

つまり台湾の独立に関しては、イギリスも強く支持するということが表れてきたということになるのではないか。

単純に「共産党の失策」をいうばかりではなく、このような外交的な感覚も身に着けて、どこがどのようなコメントを出すのかなどをしっかりと記録しておく必要があるのではないか。そのような感覚がなければ、今後の外交関係を読み解くことはできないのである。

宇田川源流

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