「宇田川源流」 南太平洋パプアニューギニアで地域独立のための住民投票開始というニュースに手放しで喜べない中国の影
「宇田川源流」 南太平洋パプアニューギニアで地域独立のための住民投票開始というニュースに手放しで喜べない中国の影
少し前、戦後すぐから20世紀の終わりくらいまでは、「グローバリズム」と「ナショナリズム」の戦いがあった。いや、その前は、イデオロギー対立があり、「民主主義」と「社会主義」の対立があって、東西冷戦であったのだが、90年代に旧ソ連が崩壊したことによって、上記のような戦いになってきていたというように考えるのが普通である。
古い考えの人は「社会主義=グローバリズム」と「民主主義=ナショナリズム」というような短絡的な考え方をするのが普通であるかのよう感じなのであるが、実際のところはそうではない。民主主義・資本主義経済の場合、自由に経済活動が行えることが発展の重要条件になってしまい、その重要条件のために、資本主義が徐々にグローバリズム化してゆくことになる。
これは、一つにはそれまでの内容が経済が中心になっていたのではなくイデオロギーが中心に物事が進められえていたということにほかならず、そのことから経済などは副産物的にしか考えられていなかった。そのために「イデオロギーを守るための軍隊」と「軍隊を動かすための情報」が重要なものであり、その情報のやり取りが数々のスパイ映画やあるいは物語を生んでいたということになる。しかし、長きにわたり大きな戦争がないという状態になってくると、その内容は経済によって変わられることになる。経済に政治が介入しない民主主義自由主義経済の中では、政治と経済は別物になり、その経済の発展こそが国民の重要な発展の根拠となりうることになる。そのために、経済の発展のための邪魔な障害、つまり国境と関税という二つのものが徐々に邪魔になり、そして、資本主義社会こそが、グローバリズム化してゆくことになるのである。
一方ソ連崩壊後の社会主義は、イデオロギーを捨ててしまったので経済しかない。しかし、一気に社会主義を捨ててしまえば、それまでの独裁者に対する不満が爆発し、革命が起きるか国家が分裂する。ルーマニアやユーゴスラビア、チェコスロバキアなどがよい例だ。そうならないように社会主義が積極的に市場経済を取り入れるが、しかし、他の資本主義とは異なることから、徐々に「経済のガラパゴス化」してしまい、そのことから、共産主義の国家だけでブロック経済化する「共産主義ナショナリズム」が始まるのである。
要するに「自由経済グローバリズム」と「共産主義ナショナリズム」の対立が21世紀の対立であり、それは経済活動を政治が管理するかどうかということにほかならない。
そしてその内容に発展途上国が徐々に巻き込まれてゆくことになる。
新国家誕生なるか? パプアニューギニア・ブーゲンビル自治州で住民投票開始
【11月23日 AFP】(更新、写真追加)オーストラリア北東の太平洋に浮かぶ島しょ国パプアニューギニアのブーゲンビル(Bougainville)自治州で23日、独立の是非を問う住民投票が始まった。投票が始まった午前8時(日本時間同7時)には、各投票所で列をつくる有権者の姿が見られた。
ブーゲンビルの有権者約20万7000人は、23日から2週間にわたって実施される住民投票で、完全な独立か、人口800万人を有するパプアニューギニア下での自治拡大かのいずれかを選択する。ブーゲンビルでは、同島の反政府勢力やパプアニューギニアの治安部隊、外国人の傭兵らによる内戦が10年以上にわたって続き、約2万人が死亡、大勢が避難を余儀なくされたが、2001年に和平協定が結ばれ、同協定に今回の住民投票が盛り込まれていた。
完全独立派の圧勝とみられているが、信頼できる世論調査が少ないため、自治拡大の賛成派が多いという予想外の投票結果が出る可能性もある。開票結果は12月15日ごろに発表される予定。
住民投票で独立派が勝利した場合、パプアニューギニア議会での承認が必要となる。議会が承認すればブーゲンビルの独立が前例となり、多数の部族が存在する同国で新たな独立運動に拍車をかけるのではないかとの懸念が生じている。しかし承認を拒否すれば、紛争が再燃し、和平交渉は決裂する恐れがある。
資源が豊富なブーゲンビルが独立すれば、中国や米国、オーストラリアが南太平洋で繰り広げる覇権争いで即座に新たな戦線になる可能性もある。
オーストラリア・シドニーのシンクタンク、ローウィー研究所(Lowy Institute)のジョナサン・プライク(Jonathan Pryke)氏は、ブーゲンビルは南半球で最も貧しい地域の一つで、インフラの整備や制度の構築、国家予算収支の均衡を図るために資金を必要としていることが「中国などに関与の機会を与えている」と指摘している。
■数十億ドル分の鉱物資源を誰が管理するのかが鍵に
ブーゲンビルでの紛争の発端は、現在閉鎖されている同島のパングナ(Panguna)銅山の収益をめぐる抗争だった。一時は、この銅山の鉱物資源がパプアニューギニアの輸出高の40%以上を占めていた。パングナ銅山の銅と金の現在の推定埋蔵量は、それぞれ最低でも約500万トンと約54万キロとされ、現在の市場価格で数十億ドルになる。
誰がこの資産を管理するのかが、新生ブーゲンビルの成功を決定付ける上で非常に重要な鍵を握るとみられている。
(c)AFP 2019年11月23日 12:50
https://www.afpbb.com/articles/-/3256285
アフリカやアセアン、南太平洋諸国というのは、共産主義にもなれず、また、資本主義にしてもこれといった産業がなく最貧国にならざるを得ないという状態になってしまう。それでも中東のアラビア半島などは、宗教的なグローバリズム(イスラム教による国家共通性)と、地下資源による経済の安定性があったことから国民が最貧国になることはなかった。しかし、長く植民地生活を送っていたアフリカなどは、そのような状況にはならない。
ブーゲンビルの有権者約20万7000人は、23日から2週間にわたって実施される住民投票で、完全な独立か、人口800万人を有するパプアニューギニア下での自治拡大かのいずれかを選択する。<上記より抜粋>
まさに、このような状況になっている。
話はそれるが、ブーゲンビル島といえば、戦中、連合艦隊司令長官の山本五十六の戦死(殉職)の地であり、日本人にとっては特に様々な感傷のある土地であることは間違いがない。実際に、南太平洋の多くは日本軍の多くの遺跡や遺骨が残っており、また航空機などの残骸も少なくないのが現状である。
日本軍が統治し、その後、日本軍が撤退した土地というのは、なぜか内戦や戦争が多く存在する、そもそも、日本軍は「八紘一宇」の名のもとに、欧米列強からの植民地支配からの解放をうたった。日本国の軍部政治の幹部が本気でそうであったか、あるいは、何らかの言い訳で表面的にそのように考えていただけなのかは別にして、少なくとも現地で戦っていた兵士一人一人は、そのような考え方が少なくなかったに違いない。もちろん不心得者が一人もいなかったなどというつもりはないが、多くの人は、そのようなことを考えていた。そのことから、日本軍と現地の住民の親和性は少なくなく、様々なところで現地の人々と、日本兵の心温まるエピソードを聞くことができるし、また、そのような縁を感じて現地に戦後も残った人は少なくない。
しかし、もともと自分たちの植民地と思っている欧米列強は再度占領をするために軍をまわし、これに対して、現地の人々は日本軍の残した兵器などを使って撃退するということが多くあったのである。これは南太平洋の国々でも同じことである。
この場合、「欧米列強の植民地支配に近い考え方の人」「旧日本軍を支持する人」「撃退した英雄たち」の三つの勢力が同じ地域内に出てくることになる。そしてこの三つの勢力に、外部的な要因、例えば経済支援などが入って、内戦などが起きるようになってきてしまうのである。特に、部族が異なるような状況の場合、もともとの王族などと、撃退した新規の英雄の調整ができずに、独立問題を抱えることが少なくなかったということになる。
この問題が近年まであったのがブーゲンビル島であるといえる。ある意味でそれだけ日本の統治が良かったということが言えるのであるが、一方で「外部的要因」つまり、「中国やアメリカといった21世紀の覇権国」による経済的支援や、地下資源(海底資源を含む)などの問題が発生することになる。
資源が豊富なブーゲンビルが独立すれば、中国や米国、オーストラリアが南太平洋で繰り広げる覇権争いで即座に新たな戦線になる可能性もある。<上記より抜粋>
つまり、現在はそれらの「植民地解放」というような話ではなく、地下資源の経済的問題に国家のインフラの問題、そしてパプアニューギニアの全体の問題などに大きく左右されることになる。当然に、中国などは「地下資源」だけではなく「軍港」としての感覚も少なくなく、このあたりの南太平洋に、航空基地と潜水艦基地を作ることを目指しているということになる。旧日本軍が、ガダルカナル島に航空基地を作り、アメリカの空母を食い止めようとしたのと同じように、中国はこの地にアメリカ攻撃の拠点を作ることを狙っているのである。当然にその中には「共産主義ナショナリズム」と「資本主義グローバリズム」という経済中心の国境の考え方が大きく左右し、そしてその経済の中心にるものが覇権国となるということになるのではなかろうか。
まさに、米中貿易戦争を行っている最中にこのような問題がある。ブーゲンビルは、独立が見込まれているが、どのような最終的な選択を取るのかはかなり大きな問題である。
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