「宇田川源流」【日本報道検証】 中国が新型の攻撃型原子力潜水艦を建造
「宇田川源流」【日本報道検証】 中国が新型の攻撃型原子力潜水艦を建造
毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます
さて今回は中国が艦橋(セイル)を小さくした新型の攻撃型原子力潜水艦をけ塩蔵していることに関して、そのことの意味を見てみましょう。
まずはその軍事的な性能と日本の潜水艦を比較してみます。
艦橋(セイル)を極小化した原子力潜水艦は、従来の原潜と比較して「静粛性」と「運動性能」において決定的な違いを持ちます。一方で、運用面での大きな技術的課題を克服した最新の設計と言えます。
従来の通常の原子力潜水艦と比べた場合、最大の違いは流体力学上の特性です。潜水艦が水中を高速で進む際、船体から大きく突き出た艦橋は巨大な「突起物」となり、強い水の抵抗と複雑な乱流を生み出します。この乱流は大きな流体雑音を発生させるため、敵のパッシブソナー(音を聞き取る装置)に捕まる主要な原因となっていました。
艦橋を極限まで小さくすると、この流体抵抗と雑音が劇的に抑えられます。その結果、同じ原子炉出力でもより静かに、かつより高速で巡航できるようになり、水中の「気配」を限りなく消すことが可能になります。 ただし、これまで艦橋を小さくできなかったのには理由があります。艦橋の内部には、潜望鏡や各種通信アンテナ、レーダー、シュノーケルといった多種多様なマスト(伸縮柱)がぎっしり収納されているからです。また、浮上して港に入港する際、乗組員が上に登って見張りを立てるスペースでもありました。
艦橋を極小化するためには、物理的な潜望鏡を無くして光学カメラとケーブルで繋ぐ「光電マスト」へ移行したり、通信機器を船体側に埋め込んだりする高度なデジタル技術が不可欠となります。さらに、水上での操艦や視界確保が非常に難しくなるため、通常時は潜航し続ける原潜ならではの割り切った設計と言えます。
日本がこれに対抗できるかという点について言えば、一筋縄ではいきませんが、日本側にも強力なアドバンテージと対抗手段が存在します。
日本(海上自衛隊)は世界最高水準の対潜戦(ASW)能力を誇ります。潜水艦の音が静かになればなるほど、従来の「音を聞いて探す」パッシブソナーだけでは探知が困難になりますが、日本はすでに「音以外で探す技術」や「自ら音を当てて探すアプローチ」を強化しています。
例えば、潜水艦が水中を通過した際に生じる微小な水温の変化、水流の乱れ、地球磁場の歪みなどを多角的にセンサーで捉える非音響探知技術の開発が進んでいます。また、日本周辺の主要な海峡には海底聴音センサー群(SOSUS)が巡らされており、長年蓄積された膨大な海洋物理データと照合することで、わずかな異変を察知するシステムを構築しています。さらに、海上自衛隊が運用する「たいげい型」などの最新鋭ディーゼル潜水艦は、リチウムイオン電池を搭載することで原潜すら凌駕するほどの圧倒的な静音性を誇ります。原潜がいくら静かで足が速くても、潜伏して待ち伏せする日本の潜水艦にとってもターゲットになり得ます。
加えて、P-1対潜哨戒機や無人水上艇(USV)、無人水中艇(UUV)を組み合わせ、広大な海域を面で網羅する「日米連携の多層監視網」の自動化・AI化も加速しています。潜水艦の静音化と、それを見つけ出す探知技術は永遠の「いたちごっこ」です。中国の新型原潜の登場によって日本の探知の難易度が大きく跳躍したのは間違いありませんが、日本は海洋国家としての地理的優位性と最先端技術を結集し、十分に対向可能な防衛網の強化を進めています。
<参考記事>
中国、新型の攻撃型原潜を建造か 衛星写真を分析「艦橋が極小化」
7/23(木) 5:00配信 朝日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/426389cb310c8ddc48265444afbe7f27d5df357d
<以上参考記事>
中国が艦橋を極小化した新型の攻撃型原子力潜水艦(SSN)を建造しているというニュースは、軍事技術の面だけでなく、東アジアの安全保障環境に大きな一石を投じる動きです。
潜水艦の艦橋(セイル)を極限まで小さくする最大のねらいは、静粛性と航行性能の大幅な向上にあります。艦橋は水中を進む際に強い水の抵抗や乱流、そして雑音を生む大きな要因となります。これを削ぎ落とすことで、水流音を抑えて水中での静粛性を高め、最高速度や運動性能を引き上げることができます。
この技術革新が東アジアの軍事バランスや日本の安全保障にどのような影響を与えるのか、考えてみましょう。
まずは日本の安全保障です。
現在の日本の安全保障環境は、第二次世界大戦後の歴史の中で最も複雑かつ厳しさを増していると言われています。日本はその地理的条件から、急速に軍備を急拡大させる中国、核・ミサイル開発を加速させる北朝鮮、そして極東での軍事活動を継続するロシアという、強大な軍事力を備えた国家群に全方位を囲まれているためです。
今回話題に上った艦橋を極小化した中国の新型原子力潜水艦は、この安全保障環境の激変を象徴する極めて重要な一例です。中国は海軍力の「量」の拡大にとどまらず、「質」の面でも劇的な進歩を遂げています。空母打撃群の運用能力向上やステルス性を高めた新型潜水艦の投入により、東シナ海だけでなく太平洋側へも広範囲にアクセスする能力を高めています。これにより、かつてアメリカ海軍が圧倒的な優勢を保っていた東アジアの海洋秩序が揺らぎ、島国である日本にとって命綱であるシーレーン(海上交通路)の安全確保に対する圧力が格段に強まっています。
特に安全保障上の最重要課題となっているのが、台湾海峡を巡る緊張です。台湾海峡の平和と安定は日本の安全保障と直結しており、万が一台湾有事が発生した場合には、地理的に至近である与那国島や石垣島といった南西諸島が直接の作戦領域に巻き込まれるリスクが高まっています。中国軍が周辺での軍事演習を頻繁に行い圧力を強める中、日本は南西諸島における防衛体制の強化を急ピッチで進めています。
さらに、日本を取り巻く環境を一層複雑にしているのが複合的な脅威の存在です。中国との緊張関係に加え、北朝鮮による頻繁な弾道ミサイル発射や変則軌道ミサイルの開発は、従来のミサイル防衛網の能力向上を強く促しています。また、近年はロシアが極東地域で中国との合同軍事演習や共同飛行を繰り返すなど、両国の軍事的な連携強化も日本北方の警戒レベルを引き上げる要因となっています。
こうした厳しい情勢に対し、日本は防衛力の抜本的な強化に乗り出しています。相手の領域内にあるミサイル発射拠点などを攻撃できる反撃能力(スタンド・オフ・ミサイル)の保有を進めるほか、南西地域の自衛隊配備や物資補給体制の拡充を図っています。さらに、静音化が進む新型潜水艦などに対抗するため、無人機や人工知能を活用した最新の警戒監視ネットワークの構築と、日米同盟の抑止力・対処力のさらなる緊密化を進めています。中国の新型原潜の登場に見られる技術革新は、日本に対して従来の防衛構想のアップデートと、同志国と連携した包括的な海洋安全保障体制の確立を急ぎ求めています。
艦橋を極小化した新型攻撃型原子力潜水艦の建造は、東アジアの軍事バランスにおいて「中国による拒否能力の質的躍進」と「米軍の介入コストの劇的な増大」をもたらすという点で、決定的な転換点となり得ます。
これまでの東アジアの海洋秩序は、米海軍が圧倒的な水上能力と水中探知能力を持ち、太平洋から第一列島線(九州から台湾、フィリピンを結ぶライン)の内側へ自由にアクセスできることを前提に成り立っていました。中国側も対抗策として対艦弾道ミサイルや通常動力潜水艦を配備してきましたが、通常動力潜水艦は静粛性に優れるものの速度が出ず、行動半径も限られるため、基本的には沿岸や特定の海峡での「待ち伏せ」に用途が限られていました。
しかし、静粛性と高速巡航性能を兼ね備えた新型原潜の登場は、中国の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」戦略の舞台を、沿岸部から太平洋全域へと一気に押し広げます。
まず最大の変化は、米軍の象徴である空母打撃群の安全性が根本から脅かされる点です。潜水艦の艦橋を小さくして水流雑音を極限まで減らした原潜は、水中で存在を消したまま高速で追尾してきます。米海軍の空母や補給艦にとって、「どこにいるか分からないが、自艦と同じスピードで追いかけてくる原潜」は最悪の天敵です。もし台湾有事などでアメリカが介入しようとしても、米軍は空母や輸送船団を太平洋のかなり遠方に置かざるを得なくなり、即応性や作戦展開のスピードが大きく鈍ることになります。
次に、水中の軍事バランスにおける「攻守の逆転」です。これまで日米同盟は、高い対潜能力によって中国の潜水艦を海峡部で封じ込める自信を持っていました。しかし、静音化された新型原潜が深い太平洋へ気付かれずに抜け出せるようになると、日米は広大な海域全体を警戒し続けなければならなくなります。潜水艦を探す側(日米)のリソース消費量は跳躍的に増えるのに対し、隠れる側(中国)は圧倒的に有利になります。この「非対称な負担」が、軍事バランスを中国優位へと傾かせる大きな要因となります。
さらに、核抑止力の面でも大きな変化が生じます。中国は海南島などを拠点に、核ミサイルを積んだ戦略原子力潜水艦(SSBN)を運用していますが、これを米潜水艦の追跡から守る「護衛役」として、この新型攻撃型原潜が機能します。自国の核戦力を安全な深海に温存できる「聖域」を固めることで、中国はアメリカに対してより強固な二次攻撃能力(核攻撃を受けてもやり返す力)を確立できます。これにより、アメリカが自国への核リスクを恐れて、東アジアの同盟国への制約を強めてしまう「核の傘の揺らぎ」が生じる恐れもあります。
このように、今回の新型原潜は単なる兵器の更新にとどまらず、米軍が東アジアへ容易に近づけない環境を作り出し、中米間の軍事的な均衡を中国側に引き寄せる大きな力学として作用します。結果として、台湾有事などの危機において中国が強気の選択肢を取りやすくなり、東アジア全体の抑止力の再構築が急務となる状況を生み出しています。
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