「宇田川源流」【日本報道検証】 イスラエルのレバノン作戦拡大は中国の弱体化を示す

「宇田川源流」【日本報道検証】 イスラエルのレバノン作戦拡大は中国の弱体化を示す


 毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。

 さて今回は、アメリカとイランが停戦合意の交渉がもうじきできるというような報道がある中で、イスラエルによるレバノン攻撃が拡大しており、レバノンの首都にまで攻撃が及んでいるということについて、その内容と「意味」を見てみましょう。

内容は、今までとあまり変わりがないという感じがします。そもそもアメリカのイラン攻撃は、一説にはイスラエルに引きずられたというような話もあり、その話に尾ひれがついて、「エプスタインの児童買春の件でアメリカはイスラエルに逆らえない」などというような話も出てきているようです。もちろんその信ぴょう性については我々にはわからないことですが、少なくとも、今アメリカは和平に動いているのに対して、イスラエルは戦線を拡大しているというように、その方向性はまったく正反対の方向に向かっているということではないでしょうか。

さて、アメリカと流れが違うというだけではなく、5月14日にイスラエルは独自の作戦を行っているということにないます。一方、その様にイスラエルがヒズボラやハマスに攻撃を拡大しているのは、間違いなくイランからの支援がなくなっているということがあげられると思います。これは、イランがアメリカとの戦争で弱体化したというだけではなく、中国・ロシア・イラン・北朝鮮というような反米反欧州の連合体のハマスやヒズボラの支援が少なくなってきていることを示しているのではないかと考えます。

その内容はどのように見るべきなのでしょうか。イスラエルの快進撃に関して、その「敵対する勢力」に関して考えてみましょう。

<参考記事>

イスラエル軍、レバノン南部の地上作戦拡大 「停戦ライン」越え進軍

5/27(水) 1:07配信 ロイター

https://news.yahoo.co.jp/articles/714a3a418448ea385ed70367742b9d5086b82300

<以上参考記事>

 現在起きている中東情勢を見ると、アメリカとイスラエルの間に「戦略目的の差」が出始めていることは確かです。特に、アメリカがホルムズ海峡の安定化とイランとの限定的妥協を優先し始めている一方で、イスラエルは依然としてハマスやヒズボラを「存在そのものが脅威」と見なして軍事圧力を継続している点は重要です。

 5月14日の米中首脳会談では、ホルムズ海峡の自由航行維持と「イランの核武装阻止」が主要議題として扱われ、中国側も海峡の非軍事化と開放に強い関心を示しました。中国は中東原油への依存度が高いため、エネルギー動脈であるホルムズ海峡の安定は国家経済に直結しています。

 その結果として、中国はこれまでのように「反米陣営としてのイラン全面支持」ではなく、「エネルギー供給維持を最優先にした現実主義」に傾き始めています。実際、アメリカ側高官は、中国がイランへの軍事支援を抑制する方向で動くとの認識を示しています。

 これは非常に大きな変化です。

 なぜなら、中国はこれまでイランを「アメリカの中東支配を削るための戦略的パートナー」として利用してきました。しかし現在の中国経済は、不動産危機、輸出停滞、若年失業、地方財政悪化などを抱え、以前ほど地政学的冒険を行う余力がありません。中東で大規模戦争が続き、原油価格が高騰すれば、中国自身の経済が大打撃を受けます。そのため、中国は「反米共闘」より「海峡安定」を優先せざるを得なくなっているのです。

 これはイランにとっては極めて苦しい状況です。

 イランの最大の強みは、単独軍事力そのものよりも、「代理勢力ネットワーク」を通じて地域全体を不安定化できることでした。レバノンのヒズボラ、ガザのハマス、イラクやシリアのシーア派民兵、イエメンのフーシ派などを用い、「直接戦争ではなく多正面圧力」を行うことがイラン革命防衛隊の基本戦略でした。

 しかし、そのネットワーク維持には資金、武器輸送、情報支援、外交的後ろ盾が必要です。ところが現在、中国はエネルギー安定を優先し、ロシアはウクライナ戦争の長期化で余力を失い、さらにイラン自身も経済制裁と戦争消耗で疲弊しています。加えて、アメリカによる海上封鎖や制裁強化も続いています。

 その結果、ヒズボラやハマスへの継続的支援能力が低下している可能性は高いと言えます。

 イスラエルがレバノンやガザへの攻撃を拡大している背景には、「今なら相手の補給能力が弱っている」という判断があるでしょう。つまりイスラエルは、単に報復しているのではなく、「イラン包囲網の隙」を見ている可能性があります。

 特にヒズボラは、以前であればイスラエル北部に対して大規模飽和攻撃を継続できると考えられていました。しかし現在は、イラン側が長期支援を継続できるのか不透明になっています。中国が慎重化し、ロシアも中東への投入余力を減らしているなら、イスラエルにとっては「今のうちに削る」という戦略的誘惑が生まれます。

 ただし、ここで重要なのは、「中国・ロシア・イランが完全に衰退した」というより、「三国の連携に構造的限界が露呈した」と見る方が正確だということです。

 この三国は、しばしば“反米陣営”として一括りに語られますが、実際には目的が一致していません。

 中国は経済と海上物流が最優先であり、長期戦争を嫌います。ロシアは欧州正面が最重要で、中東は副戦域です。イランは革命輸出と地域覇権が最優先です。つまり、共通の敵としてアメリカを見てはいても、「何を守るか」がそれぞれ異なります。

 そのため、圧力が強まると足並みが崩れやすいのです。

 今回のホルムズ海峡問題では、中国は「イラン支持」より「海峡開放」に回りました。これはイランにとって心理的にも戦略的にも大きな痛手です。

 また、ロシアもウクライナ戦争によって弾薬、生産力、外交余力を大量消耗しています。かつてのようにシリアへ大規模介入し、中東秩序全体を左右するほどの余裕はありません。結果として、イスラエルに対する抑止力が弱くなっています。

 現在の中東情勢は、「アメリカ一極支配への挑戦」が限界にぶつかり始めている局面とも言えます。特に中国は、地政学的対立より経済安定を優先せざるを得なくなり、ロシアは戦争疲弊、イランは代理戦争ネットワーク維持能力の低下という問題を抱えています。

 そしてイスラエルは、その“力の空白”を非常に敏感に察知している可能性があります。

宇田川源流

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