「宇田川源流」【大河ドラマ 豊臣兄弟】 本物と偽物とは何かを問うドラマ

「宇田川源流」【大河ドラマ 豊臣兄弟】 本物と偽物とは何かを問うドラマ


 毎週水曜日は、NHK大河ドラマ「豊臣兄弟」について、一人の戦国好きのオジサンとして、一応そのうえで戦国時代の本も少し書いているということから、好き勝手なっことを書かせていただいています。もちろん、単なる感想の域を出るものではありません。

そのうえで、今回は、松永久秀の、多分戦国一番の「ロックな死に方」である「爆死」について、まずは一応の史実とされているモノを見てみようと思います。

 戦国時代の人物の中でも、松永久秀ほど後世のイメージと史実の間に大きな隔たりを持つ人物は少ないです。特に近年では、爆薬を抱えて城ごと自爆した「爆死の武将」として知られ、その最期と名物茶器「平蜘蛛」が結びつけられて語られることが多いです。しかし、実際の史料を丹念に見ると、そこには戦国政治の複雑な権力構造と、織田政権成立期の人間関係が浮かび上がってきます。そしてその中には、後に天下人となる羽柴秀吉と、その補佐役として名高い羽柴秀長の存在も見えてきます。

 まず松永久秀という人物は、単なる「梟雄」や「悪人」ではありませんでした。久秀は大和を中心に勢力を持ち、三好長慶政権の中核として活動した武将です。戦国時代の畿内政治は、将軍家、公家、寺社、商人、国人勢力などが複雑に絡み合う世界であり、久秀はその中で極めて高い政治能力を発揮しました。彼は軍事だけではなく財政や都市支配にも優れており、奈良や堺との関係も深かったです。東大寺大仏殿焼失などから「極悪人」として語られることが多いですが、近年ではその責任について再検討も進んでいます。

 久秀と織田信長の関係は、単純な敵味方ではありません。むしろ両者は非常によく似た部分を持っていました。旧秩序を破壊し、新たな権力構造を作ろうとした点で、久秀は信長に先行する存在でもありました。信長が上洛して畿内へ勢力を広げると、久秀は当初これに従い、織田政権の有力大名として遇されます。信長は久秀の能力を高く評価していた節があり、何度も赦免を与えています。

 実際、久秀は一度ならず反乱を起こしています。それにもかかわらず、信長は完全には見捨てませんでした。これは信長が畿内統治において久秀を必要としていたことを示しています。当時の大和は寺社勢力や国人が入り乱れる難しい地域であり、現地事情に通じた久秀の価値は非常に高かったのです。

 しかし天正五年、久秀は再び信長に反旗を翻します。この時の籠城戦が、後世「平蜘蛛爆死伝説」と結びついていきます。久秀が立て籠もったのは信貴山城であり、織田軍による包囲を受けました。ここで重要なのが、信長が久秀に対して「平蜘蛛」を差し出せば命を助けるという条件を示したとされる点です。

 平蜘蛛とは、正式には「古天明平蜘蛛」と呼ばれる名物茶釜で、天下に名高い茶器でした。茶の湯が単なる趣味ではなく政治文化そのものだった戦国時代において、名物茶器は権威の象徴でした。信長は名物狩りを行い、天下統一の過程で権威を自らへ集中させようとしていました。その意味で平蜘蛛は単なる道具ではなく、文化的権力の象徴だったのです。

 久秀がこの平蜘蛛を拒否したことは、単なる意地ではありません。戦国武将にとって名物とは権威そのものであり、それを差し出すことは自己の歴史と格式を明け渡すことに等しかったのです。久秀は最後まで自らの象徴を手放しませんでした。

 ここから有名な「爆死」の話になります。一般には、久秀は平蜘蛛に火薬を詰め込み、自らもろとも爆破したと広く語られています。しかし、この話を同時代史料で確認すると、実はかなり曖昧です。信頼性の高い史料では、久秀が自害し、城が炎上したことは確認できますが、「火薬で爆発した」という描写は後世の軍記物で強調された可能性が高いです。

 戦国時代の城には火薬が存在していたため、炎上時に爆発が起きた可能性自体は否定できません。しかし、現代的な意味での「自爆テロ」のような壮絶な爆死が史実として確定しているわけではありません。むしろ後世の人々が、久秀という異端的な人物像にふさわしい劇的最期として物語化した面が強いです。

 また、「平蜘蛛もろとも粉砕した」という話も、完全に事実と断定はできません。信長がその破片を探させたという逸話も含め、戦国ロマンとして広まった可能性が高いです。ただし、信長が名物茶器への執着を持っていたこと自体は史実であり、だからこそこの逸話は強い説得力を持って後世に残ったのです。

 この信貴山城攻めには、羽柴秀吉や羽柴秀長も関わっていたと考えられています。秀吉は当時、織田家中で急速に台頭していた武将であり、中国方面だけではなく畿内でも活動していました。特に秀長は、大和経営との関係で極めて重要な位置にいました。

 後年、秀長は大和郡山城を本拠とし、大和統治を担うことになります。つまり、松永久秀が支配していた地域を、豊臣政権下では秀長が引き継ぐ形になったのです。この点は極めて象徴的です。久秀が戦国的な畿内支配者だったとすれば、秀長はそれをより安定的・官僚的に再編した存在だったといえます。

 秀吉自身もまた、信長の「天下統一」と「権威集中」の政治を受け継いだ人物であり、茶の湯を重視しました。千利休との関係に象徴されるように、秀吉は茶器を政治権力として利用しています。その意味で、久秀と平蜘蛛をめぐる物語は、単なる逸話ではなく、戦国時代における文化と権力の関係そのものを映しています。

 興味深いのは、久秀が単純な敗者として終わっていない点です。後世の創作では、むしろ信長や秀吉に匹敵する「異形の知将」として扱われることが多いです。これは、久秀が戦国時代の転換点を体現した人物だからでしょう。寺社勢力を抑え、都市経済を利用し、鉄砲や火薬を積極活用し、文化権威を政治に結びつける。その姿は、ある意味で信長や秀吉の先駆けでもありました。

 だからこそ、松永久秀の最期は単なる「悪人の滅亡」ではなく、一つの時代の終焉として語り継がれているのです。そして平蜘蛛伝説とは、武将が最後まで「権威」を手放さなかったという、戦国時代特有の美学を象徴する物語なのです。

<参考記事>

豊臣兄弟!:竹中直人の“怪演”光る! 「笑いながら爆死」「竹中直人劇場」 松永久秀の見事な散り様に視聴者“最敬礼”

2026年05月24日 20:45 MANTANWEB編集部

https://mantan-web.jp/article/20260524dog00m200026000a.html

<以上参考記事>

 今回の題名は「本物の平蜘蛛」となっていました。上記のように、史実かどうかわからないのですが、多くの人が知っている「平蜘蛛と共に爆死」という話が、「史実かどうかわからない」という点をうまく使ったドラマになっています。

前回の「北陸戦線からの離脱」から「処罰の話」になり、そのうえで織田信長(小栗旬さん)から、今回も謀反を起こした松永久秀(竹中直人さん)の説得をすれば許してやるという話になって、藤吉郎(池松壮亮さん)と小一郎(仲野太賀さん)が松永久秀を説得に行くということになります。

今回のテーマは「本物と偽物」という事でしょう。そして「人の在り方に本物や偽物があるのか」ということでhな愛でしょうか。ここで松永久秀役を演じた竹中直人さんの演技のすばらしさが響きます。まずは「大和国の領有」について話をしますが、それも真実を話しているのか、または財宝目当てなのかというような話をすることになります。この辺の真実なのか嘘なのかわからないというような「いい加減な話をさせる役」をさせたら、竹中直人さんの話は本当に素晴らしい。シリアスな状態なのに、なんとなく笑いを取る演技ができる。その笑いを得る演技がより一層シリアスな場面に見えるのです。大和国を欲しがる理由について、その後松永久秀は自分の生い立ちについて話をします。その話の中で、「自分は偽物」という話を松永久秀がするのです。それに対して小一郎は「人間に偽物などはない」ということを言います。そのあとの松永久秀役の竹中直人さんが、うっすらと涙を浮かべるのが非常に素晴らしいです。

ここからは私の推測というか、作家としてこうあってほしいという内容ですが、この時に、松永久秀は初めて自分が「本物」と言われて、かなりうれしかったのではないでしょうか。実際に、大和が自分の手に戻ることはないとわかっていて、なおかつ、その大和の国がなくても、自分を本物としてくれた小一郎に感謝を持っていたのではないでしょうか。その上で松永久秀は、わざと二つの平蜘蛛を出し、二人を試させるという「遊び」をしたのちに、爆死したのです。

なんと素晴らしい死に方でしょうか。

そしてその後のシーン。藤吉郎と小一郎が話しているシーンが印象的です。小一郎は信長は、松永久秀も藤吉郎も殺したくなかったということを言います。そのことが、わかっていることが藤吉郎は最後まで信長を裏切らなかったのに、同じように信長に仕えていた明智光秀(要潤さん)は、本能寺の変を起こすということになるのではないでしょうか。そのような違い、要するに信長に対する「理解」が、この世なところで次の伏線になるのではないでしょうか。

今回は史実が長くなったので少しがなくなってしまいましたが、そのような次の伏線まで入れた内容であったのが興味深いです。

宇田川源流

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