「宇田川源流」【現代陰謀説】 イランの暴動や国内的なデモと体制崩壊の可能性

「宇田川源流」【現代陰謀説】 イランの暴動や国内的なデモと体制崩壊の可能性


 毎週金曜日は「現代陰謀説」をお届けしている。今年もその内容を、現代のニュースから見てみることにしましょう。

権威主義体制は、表面的には強固に見えても、社会の不満が蓄積すると急速に崩壊する危険を孕んでいます。特に経済停滞や生活水準の低下、情報統制の限界が重なると、国民の不満は爆発しやすくなります。こうした不満が「デモ」や「暴動」という形で顕在化すると、体制は二重の圧力にさらされます。第一に、国内の正統性が失われること。第二に、外部からの干渉や情報戦に対して防御力が低下することです。

 1989年末、ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権は、東欧諸国で進行していた民主化の波の中で孤立を深めていました。経済は疲弊し、国民生活は困窮。にもかかわらず、政権は強権的な統制を続け、プロパガンダで「繁栄」を演出していました。この乖離が国民の怒りを増幅させ、ティミショアラでの反政府デモが全国に拡大します。

ここで重要なのは、政権が「暴力による鎮圧」を選択したことです。武力行使は恐怖を植え付けるどころか、国民の反感を決定的にし、軍や治安部隊の忠誠心を揺るがしました。結果として、政権は自らの基盤を崩し、クーデターの引き金を引いたのです。

 この時期、冷戦構造の終焉に伴い、ソ連や西側諸国は東欧の政変に強い関心を持っていました。ルーマニアの場合、ソ連は直接的な軍事介入を行わなかったものの、情報戦や外交圧力を通じて「政権交代を容認する空気」を醸成しました。さらに、西側メディアはデモの映像を世界に流し、政権の残虐性を強調。こうした国際世論の形成は、国内の反体制勢力に「外部の支持」を感じさせ、行動を加速させる心理的効果を生みました。

陰謀論的視点では、「外部勢力がデモを扇動した」と語られることがありますが、実態はより複雑です。外部は火種を作ったわけではなく、既存の不満を利用し、情報と外交で体制崩壊を後押ししたのです。つまり、国内の構造的脆弱性が前提であり、外部の関与は「触媒」に過ぎません。

 チャウシェスクは最後まで権力維持を試み、演説で国民を説得しようとしました。しかし、テレビ中継された演説が逆効果となり、群衆の怒号が全国に伝わることで、政権の「権威の象徴」が崩壊。軍はついにチャウシェスクを見限り、彼は逃亡を試みるも拘束され、即決裁判で処刑されます。この過程は、権威主義体制がいかに脆く、情報と心理戦に弱いかを示す典型例です。

 この事例から導かれる一般論は次の通りです:

・ 国内の不満が爆発すると、体制は急速に崩壊する。強権は短期的には秩序を保つが、長期的には逆効果。

・ 外部勢力は直接的な武力よりも、情報・外交・経済圧力で体制崩壊を促進する。これは現代のハイブリッド戦争にも通じる。

・ 「陰謀」はゼロから作られるのではなく、既存の不満を利用する形で成立する。したがって、国内の構造的問題こそ最大のリスク。

 この視点で見ると、現代でも同様のパターンが繰り返される可能性があります

<参考記事>

イラン・ハメネイ師が国外脱出計画 有事の際は家族や側近とロシアに…英タイムズ

1/5(月) テレビ朝日系(ANN)

https://news.yahoo.co.jp/articles/c216861120a23e64bb4b5f3130368308a39019e1

勢いを増すイランの抗議活動  暴力による死者は35人に上る

1/6(火) AP通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/f3429a73779fbe2267890194b255a85e67248852

<以上参考記事>

 この抗議運動は、2025年末から急速に拡大しました。当初のきっかけは、深刻な経済危機です。イランでは通貨リアルの歴史的な暴落が続き、2025年12月末には1ドル=145万リアルという過去最安値を記録しました。政府は為替レートを一時的に引き上げる措置を講じましたが、効果はなく、2026年1月初めには再び150万リアルに下落。これに伴い、食料品や生活必需品の価格が急騰し、インフレ率は40%を超える水準に達しました。水やエネルギーの供給不足も深刻化し、国民生活は極度に圧迫されています。

 最初の抗議は、首都テヘランの商業地区で商人たちが店を閉じる「ストライキ」から始まりました。しかし、SNSを通じて映像や情報が拡散されると、運動は急速に全国へ広がり、現在では31州のうち27州、285カ所以上でデモが行われています。参加者は商人だけでなく、大学生、労働者、退職者など多様な層に拡大しました。スローガンは「独裁者に死を」「我が命はイランのために」といった強い政治的メッセージに変化し、単なる物価高への抗議から、体制そのものの打倒を求める運動へと進化しています。

 政府は当初、デモを「暴徒による騒乱」と位置づけ、治安部隊を投入して鎮圧を試みました。催涙ガスやゴム弾、さらには実弾の使用も報告されており、これまでに少なくとも36人が死亡(うち4人は18歳未満)、数百人が負傷、2000人以上が拘束されています。治安部隊側にも死傷者が出ており、衝突は激化の一途をたどっています。

 この運動は、単なる経済的不満を超え、体制への拒絶という政治的怒りに転化しました。背景には、長年続く権威主義的統治、腐敗、そして国際制裁による経済疲弊があります。さらに、2025年に米国がベネズエラ政権への攻撃を強化したことが、イラン体制の国際的孤立を深め、国民の不満を増幅させたと指摘されています。

 国際社会も注目しており、トランプ政権は介入を示唆、人権団体は「1979年の革命以来最大の騒乱」と評価しています。イラン政府は通信遮断や情報統制を強化していますが、SNSを通じた映像拡散は止められず、抗議はさらに広がる可能性があります。

 イランの体制は、最高指導者ハメネイを頂点とする宗教的権威と革命防衛隊による軍事・経済支配に依存しています。この構造は強固に見えますが、今回のデモは経済危機と政治不信が結びつき、体制の正統性を大きく揺るがしています。特に、抗議のスローガンが「独裁者に死を」から「王政復活」へと変化する兆しが一部で見られることは、国民の心理に「代替権力」を求める欲求が芽生えている証拠です。

 パーレビ王朝は1979年の革命で崩壊しましたが、亡命先で王族は存続しており、特にレザ・パーレビ皇太子は欧米で一定の支持を得ています。近年、SNSを通じて「世俗的で近代的なイラン」を象徴する存在として再評価される動きがあります。経済危機と宗教支配への嫌悪が強まる中、こうした象徴が「希望の代替案」として浮上するのは自然な流れです。

 陰謀論的な視点で見ると、以下の要素が「陰謀の成立条件」を満たしつつあります:

 国外勢力の関与余地:欧米諸国はイラン体制の弱体化を望んでおり、情報戦や資金援助を通じて「王政復活」を後押しする可能性があります。これは冷戦期の東欧政変と類似した構図です。

 国内の権力分裂:革命防衛隊と宗教指導層の間に亀裂が生じれば、クーデターの芽が生まれます。特に、経済利権を握る防衛隊が「体制維持より自己保身」を選ぶ場合、ハメネイ失脚のシナリオは現実味を帯びます。

 象徴の利用:パーレビ王朝の血統は、実際の政治力よりも「心理的な求心力」として利用される可能性が高い。つまり、王政復活は必ずしも完全な制度復帰ではなく、「暫定的な移行期の象徴」として機能するかもしれません。

 ただし、現実的な障害も大きいです。宗教体制の支持基盤は依然として強固であり、革命防衛隊は武力と経済を掌握しています。パーレビ王朝復活は、国内で広範な支持を得るには時間がかかり、外部からの強い後押しが不可欠です。したがって、このシナリオは「短期的には低いが、中長期的には不確定要素次第で急浮上する可能性がある」と言えます。

 今回のデモが長期化し、経済危機が深刻化すれば、体制内で権力闘争が激化し、ハメネイ失脚の可能性は高まります。その際、パーレビ王朝の血統は「外部勢力が利用するカード」として浮上し、陰謀的な構図が形成される可能性は否定できません。これは、情報戦・心理戦・外交圧力を組み合わせた「ハイブリッド型政変」として展開するでしょう。

 まず、体制崩壊の前提条件は、抗議運動が全国規模で長期化し、政権の統制力が機能不全に陥ることです。現在、デモは経済危機を背景に急速に拡大し、スローガンには「ハメネイ打倒」「パーレビ復活」が含まれています。この政治的要求が広範な層に浸透し、単なる経済不満から体制拒絶へと完全に転化することが不可欠です。

 次に重要なのは、革命防衛隊(IRGC)と宗教指導層の間に深刻な亀裂が生じることです。IRGCは軍事力と経済利権を握っており、体制維持の要ですが、抗議が激化し、国際的圧力が強まる中で「自己保身」を優先する可能性があります。もしIRGCがハメネイ支持を撤回し、政権交代を容認するなら、失脚シナリオは現実味を帯びます。

 報道によれば、ハメネイはすでに「政権が統制不能になった場合に備え、国外脱出を含む非常計画を策定している」とされています。これは、体制の中枢が崩壊の可能性を認識している証拠です。亡命先としてロシアが取り沙汰されており、過去にシリアのアサド政権がロシアに逃避した事例と重なります。

 パーレビ王朝復活の声は、国内だけでなく亡命王族や欧米の一部勢力によって支えられています。特に米国は「人権弾圧が続けば介入も辞さない」と警告しており、情報戦・資金援助・外交圧力を通じて政権交代を促す可能性があります。これは1979年革命や東欧政変と類似した構図です。

 パーレビ王朝の血統は、実際の政治力よりも「心理的な求心力」として機能します。現実的には、完全な王政復活よりも、暫定政権の象徴としてレザ・パーレビ皇太子が担ぎ出されるシナリオが有力です。これは、国際社会に「世俗的で近代的なイラン」を印象づけるための戦略的カードとなります。

 最後に、国際環境がこのシナリオを後押しする条件として、原油市場の変動や中東の地政学的緊張があります。イラン体制の崩壊は世界経済に大きな影響を与えるため、米国や欧州は「管理された政権交代」を望むでしょう。逆に、ロシアや中国は現体制維持を支持するため、代理戦争的な構図になる可能性もあります。

 このシナリオが現実化するためには、国内抗議の長期化+権力中枢の分裂+ハメネイ亡命計画の発動+外部勢力の積極的介入という複合条件が必要です。現時点では「短期的には低いが、中期的には不確定要素次第で急浮上する可能性がある」と言えます。

宇田川源流

「毎日同じニュースばかり…」「正しい情報はどうやって探すのか」「情報の分析方法を知りたい」と思ったことはありませんか? 本ブログでは法科卒で元国会新聞社副編集長、作家・ジャーナリストの宇田川敬介が国内外の要人、政治家から著名人まで、ありとあらゆる人脈からの世界情勢、すなわち「確実な情報」から分析し、「情報の正しい読み方」を解説します。 正しい判断をするために、正しい情報を見極めたい方は必読です!

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