「宇田川源流」【日本報道検証】 台湾有事は存立危機事態にありうるという日中の解釈
「宇田川源流」【日本報道検証】 台湾有事は存立危機事態にありうるという日中の解釈
毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。
さて今回は、今回の臨時国会の中において、高市首相が「台湾有事(台湾に対する武力行使)が日本における存立危機事態になりうる」ということを発言したことにいて、中国が過剰に反応していることに関して見てみたいと思う。
そもそも中華人民共和国は「台湾は中国の内政問題であり、台湾は中国の不可分の領土である」という一国原則を外交の基軸としている。中華人民共和国側は「台湾独立」を容認せず、外国が台湾問題に軍事的・法律的に介入することを厳しく非難・抑止する。
1949年以降の中台分断以降、中華人民共和国は国際場裡で「一つの中国」宣明を繰り返し海外の政府・企業に対して同原則の承認を求めてきた。近年は軍事力整備、海空活動の常態化、外交圧力や経済的手段を通じて「台湾問題の解決」を強調する姿勢が強まっている。ついでに言えば台湾問題や尖閣諸島、南シナ海などを「核心的利益」という言い方をしており、そこに関する他国の干渉に対して武力で威圧するということで領有をしようとしているのである。なお、武力による威圧での現状変更は、国連憲章で禁じられていることであるが、中華人民共和国は兵器でそのような国連憲章や国際法を破るということをしているのである。
中華人民共和国の主張は、国際的な主権・領土の一貫性に基づき「台湾は中国の一部である」とする点にある。多くの国際文脈での公式表明は「一つの中国」原則に同調するが、各国の実務上の関与や安全保障の扱いは異なる余地を残す。
一方、「二つの中国化」とは、国際的に台湾の独立的地位を事実上・制度上強める方向(他国との軍事協力や事実上の国家承認につながる動き)を指す政治語で、中華人民共和国はこの流れを強く警戒する。日本や米国との安全協力の深化が進むと、中華人民共和国はそれを「一国の内政への干渉」や「台海の現状変更の助長」と見なす可能性がある。
<参考記事>
中国の大阪総領事、高市首相の答弁に「汚い首は斬ってやるしかない」投稿…外務省が抗議
2025年11月10日 11時5分 読売新聞オンライン
https://news.livedoor.com/article/detail/29952468/
中国外務省、大阪総領事の「汚い首を斬ってやる」発言を“擁護”か
2025年11月10日 19時35分 ABEMA TIMES
https://news.livedoor.com/article/detail/29956213/
<以上参考記事>
一方「台湾海峡で軍事的事態が発生し、他国(例:中国)が武力行使を含む介入を行えば、日本の安全・国益に直接的影響が及びうる。その場合は『存立危機事態』(集団的自衛権行使や自衛隊の対応を政府が法的に検討・行使できる枠)に当たり得る」という主張で、想定される事態の因果連鎖(中台衝突→米中の直接対峙→日本の周辺安定への影響→邦人・海上交通・領域安全への危機)を前提にしている点が特徴的である。
" 「存立危機事態」とは何か(制度的意義)
日本の安全保障法制上、「存立危機事態」は、他国からの武力攻撃が直接及んでいなくとも、日本の存立が脅かされる一定の状況を指し得る法的概念で、集団的自衛権の事例・海外での自衛隊行動の法的根拠として議論されてきた枠組みである。政府がその認定を行えば、集団的自衛権行使や、他国軍への支援行動の合法性評価が変わる。
" 政府・外務当局の実務的対応
ただし政府は一般論として、個別具体の事態で判断すること、軽々に状況を拡大解釈しないことを強調しており、首相個人の見解と政府の公式見解との間に温度差や説明責任の齟齬が生じている。今回も政府は(表現の扱い)について慎重に説明する動きを見せている。
中華人民共和国は「一つの中国」を核心利益と位置づけ、その維持は体制の正当性・国家主権の問題と結びつく。したがって、他国高官の「台湾有事」を巡る言辞は、対外的圧力や介入を正当化しかねないものとして即応的に強い外交反発を示す。実際に在外公館が過激な書き込みを行い、外務省報道官が撤回を要求するなど、短期的に強い対日メッセージが出るのは想定内の反応である。
戦略的には、外圧や経済制裁、軍事的プレゼンスの示威を通じて相手に思いとどまらせる「抑止」意図が含まれる。PRC内部では「外部が台湾問題に関与すること=内政干渉」との認識が強く、発言の波紋を抑えるための対抗措置を辞さない。
一方の高市氏の論理は、台湾海峡での大規模な軍事衝突は国際的にも地域安全の重大事であり、結果として日本の国民・経済・領域安全に実害が出る場合、「存立危機事態」として政府が必要な法的措置を検討・発動し得る、というものだ。ここには同盟国(米国)や近隣諸国の軍事的動向が介在する連鎖的シナリオが前提になっている。
しかし実務上は「存立危機事態」認定は極めて重大で政治的コストも高く、個別具体の事実関係(どの程度の介入、邦人被害、経済影響)が必要であるため、単発の憶測的発言が即座に政策転換を意味するわけではない。政府内部でも説明の整合や外交配慮が求められている。
中華自民共和国は「主権と領土の不可分性」から台湾問題を内政化し外国関与を阻止しようとするのに対し、日本側(高市氏の主張)は地域安定と日本の存立安全を中心に連鎖的リスクを説明している。前者は主権的正当性の主張、後者は安全保障上の被害連鎖を根拠にした予防的・法制度上の見解であり、二者の焦点(主権 vs 影響連鎖)が異なる。
政治指導者は発言の外交コストを勘案して慎重に表現する必要がある。法的枠組み(存立危機事態)の運用は具体事実に基づくため、言説が先行して制度運用に直結するわけではないが、相互の安全保障感覚を悪化させれば逆に危機を高める恐れがある。
さて、これらのリスクをもっても、対中強硬主張を変えないのが高市首相であろう。私からすれば、今まで適当なことを言ってごまかしていた歴代の内閣の方が問題であり、そろそろ、しっかりと台湾や中華人民共和国の関係についてしっかりとした主張をすべきではないかと考えられるのである。もちろんそのことはさまざまなリスクを作ることになるのであろう。しかし、トランプが政権を持ち、中国が安定していない今の時期鹿チャンスはないのかもしれない。
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