「宇田川源流」【日本報道検証】 ニューヨークの市長に急進左派イスラム教徒のマムダニ氏
「宇田川源流」【日本報道検証】 ニューヨークの市長に急進左派イスラム教徒のマムダニ氏
毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたます。
さて今回は、先週の報道にあったニューヨークの市長選挙に関するニュースを見てみよう。
ゾーラン・マムダニは1991年生まれ、ウガンダの首都カンパラで生まれ、幼少期に家族とともにニューヨーク市に移住した経歴を持つ。母は映画監督、父は文化人類学者という学術・文化の背景の下で育ち、高校・大学時代から地域活動や学生運動に関わってきた。学歴としてはボウディン大学で学位を取得し、在学中からコミュニティの配給や学生団体の運営など公共性を意識した活動を続けてきた。政治の舞台へ本格的に出るきっかけは、若年層や移民コミュニティの生活実感に基づく政策課題への関与であり、2020年にニューヨーク州下院(州下院)選で初当選、その後再選を重ねながら市長選出馬に至ったことが報じられている。
マムダニは若年であること、移民出身であること、かつ南アジア系・イスラム教徒の宗教的バックグラウンドを持つ点が外形的特徴として注目される。本人は自らを「民主社会主義者(democratic socialist)」と位置づけ、既存の政党機構や既得権益に対する批判的な距離感を保ちながら、市民の日常的な困難に直結する課題を優先する現場密着型の政治家として振る舞う。語り口やメッセージは若者や移民コミュニティに刺さるように設計されており、SNSや短尺動画を含むデジタル世論形成の手法を積極的に活用する点も特徴である。
公的には民主党に所属するものの、思想的には進歩的左派、いわゆる民主的社会主義に近い立場を取ることを明言してきた。典型的なスローガンは「生活コストを下げること」「公共サービスの拡充」「富の再分配」であり、これらを短期的に示す具体的公約として家賃凍結や無料バス・保育など、生活に直結する政策提案を掲げた点が選挙戦で強調された。また、富裕層や企業に対する追加課税を財源に社会プログラムを拡充する考えを示しており、これは市内の所得格差や住居問題への直接対応を狙ったものである。
<参考記事>
NY市長に急進左派マムダニ氏 三つの首長選でトランプ氏に逆風
11/5(水) 毎日新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/44a461631384fd2c8547f0eb0575365940f731d2
<以上参考記事>
彼の公約群は「直接的効果」を重視する。家賃負担の増大に対する対応として家賃凍結や大量の手ごろな住宅の建設・確保を掲げ、これは家賃問題で困窮する都市住民への即効的な救済を意図する政策だと説明されてきた。交通政策ではバスの無料化を打ち出し、低所得の通勤者や移動弱者の負担軽減を目指す。子育て・保育に関しては無償化を訴え、育児コストの軽減を通じた労働参加の促進を政策目的に据えている。これらの政策は、財源を高所得者や大企業からの増税で賄うという再分配型の財政設計を前提にしている点が特徴である。
行政手腕については、選挙で示した「現場に寄り添う」「素早く効果を出す」姿勢がそのまま実務にも反映されるかが焦点になる。短期的には100日プランのようなスピード感ある施策提示が期待されるが、長期的には都市財政の持続可能性、住宅供給の恒常化、交通インフラの維持といった構造的課題にどう取り組むかで評価が左右されるだろう。マムダニは若さとデジタル世代の感性を武器に支持層を拡大したが、広い有権者層を納得させる合意形成力と行政的な実行力を示せるかが、彼の市政の成否を決める重要な試金石となる。
共和党はまずマムダニ氏のイデオロギーを問題視する。彼が「民主的社会主義」や強い再分配志向を公言し、高所得層や大企業への増税、家賃凍結、公営サービスの大幅拡充を掲げる点を「過度の財政負担」と断じる。こうした政策は市の歳出急増を招き、既存の契約義務や州・連邦の資金構造との整合性を損なう可能性があると指摘する。財源確保や支出優先順位の具体性が欠けているため、短期的な人気取りに終わり長期的な財政悪化を招くとの懸念を強調する。
治安と行政能力に関する批判も中心的だ。過去の警察改革論争や警察予算見直しに対する姿勢を持ち出し、急進的な削減や再編が治安対策の効果を弱め、市民の安全に悪影響を及ぼすと警告する。特に、危機対応や治安維持に必要な実務的経験や危機管理能力が不足していると見なし、有権者の不安につながると主張する。
選挙運動の方法と支持基盤に対する批判も多い。草の根運動や若年層動員、デジタル資金調達を評価しつつも、外部の過激団体や特定の利害集団との接近を示唆して支持固めを行った点を問題視する。さらに、党内の分断を露呈させ、中道派やビジネス界との協調が困難な人物が市政のトップに立つことは、政策実行の安定性を損なうと論じる。連邦や保守勢力による反発で市への補助や協力が減れば、市財政と住民サービスに直接的な悪影響をもたらす可能性があると警告する。
経済政策に関しては、家賃凍結や最低賃金の急激な引き上げ、企業課税の強化が供給側の歪みを生み、住宅開発や投資が停滞して雇用減少やコスト転嫁を招くという批判を繰り返す。過去の事例や市場の反応を引き合いに出し、意図しない逆効果が市民生活をさらに悪化させる恐れがあると訴える。
一方民主党は、民主党内の進歩派や若年層寄りの支持者は、マムダニ氏の当選を都市政治の刷新と捉え、生活密着課題への直接的対応を高く評価している。家賃凍結や保育・交通の無償化といった公約は、短期的に暮らしを救う即効性を持ち、生活費高騰や住宅危機に直面する住民の実感に応えるものである。こうした施策は格差是正の手段と見なされ、経済成長の果実をより広く分配することで市政の公平性を高め得ると論じられる。
また、彼の勝利は政治参加の拡大という副次効果を生んだ。若者や移民、労働者層を選挙・地域活動に引き込み、これまで声が届きにくかった層を政策決定に組み入れる契機になったことを歓迎する。多様な出自を持つ首長の誕生は代表性を強化し、政策立案に新たな視点と問題意識を持ち込むと期待されている。
政策の実効性については楽観的な見方が示される。支持派は公約を単なる支出拡大と見なさず、富裕層課税や税制改革との組み合わせで段階的かつ持続可能に実施可能だと主張する。若い世代の行政参加とデジタル動員力は、サービス提供の効率化や住民との双方向的な対話を促し、政策実装の質を高めるとされる。
さらに、マムダニ氏が従来の利益誘導的慣行から距離を取り、草の根の声を政策に反映させる姿勢は、透明性と倫理性の向上につながるとの期待がある。これにより都市ガバナンスの信頼回復や参加型民主主義の深化が進むと見る向きが強い。
さて、ではアメリカ国民はどう思うのであろうか。
政治や政策的なことではなく、例えばニューヨークにイスラムの施設ができたり、イスラム教のモスクが建ったり、というようなことになれば、かなり刺激的になるし、そのような内容を受け入れることができるのかは、かなり大きなハードルになるのであろう。同時に、ニューヨークは貿易センタービルがあった場所である。今はグラウンドゼロとなっている場所の、来年の式典は、イスラム教徒が行うということになる。単純に、イスラム原理主義者がテロを起こして、あれだけ多くの人の命が犠牲になった式典に、イスラム教徒の市長が挑むということになる。そのことを多くのアメリカ人やキリスト教徒は受け入れることができるのであろうか。
この政治は注目すべきであろう。
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