小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第三章 動乱 23

小説 No Exist Man 2 (影の存在)

第三章 動乱 23


北京市内少し手前の上空で数発のミサイルが爆発し、そして北京市内の軍の駐屯地にやはりミサイルが到達した。

「ミサイルが南から飛んでくるとは」

張延常務委員は、一連の爆発音が鳴り止んだあと、苦笑いを交えて言った。

「すぐに被害状況を報告せよ。それとミサイルがどこから発射されたかをすぐに解析せよ。」

何華将軍は、張延のように笑顔を作って余裕の表情を作ることなく、真剣な表情のまま言った。指揮所内は、緊迫した雰囲気が流れた。

一人苦笑いを浮かべた張延だけが完全な場違いの雰囲気を出していた。

「まずミサイルの発射場所ですが、厦門第73集団軍指揮所付近から発射された模様です。」

「なに」

何華の頭の中には、嫌な予感が広がった。そしてその同じ頭の中に、インターネットで流れた厦門の待ちの中の、ウイルスで感染した人々の映像が頭の中に浮かんだ。まるで夢遊病者のように歩き、そして目や鼻から血を流して、苦しんでいる姿は、まさに地獄絵図だ。もしかしたら、その状況が北京市内に降りかかるのではないか。

「すぐに、全員に化学防護服の着用をするように命じよ。反乱軍の鎮圧隊も、バリケードの中から応戦するだけにして化学防護を優先するように命令する。」

「何将軍、それは」

「張同志も、まずは防護服を。それと、すぐに中南海に防護服の着用を進言していただければありがたいです。」

「どういうことだ」

「あのミサイルに、ウイルスが仕込まれていた可能性があります。つまり、我々はミサイルを迎撃することで、頭の上からウイルスを被ってしまったということになるんのです。」

何将軍は、部下が持ってきた防護服を軍服の上から着込んだ。

「説明しますと、上空でミサイルを迎撃しました。本来迎撃すれば、ミサイルの爆発音が大きく響くはずです。流石に北京市の上空爆発すれば、かなり大きな爆発音になります。特に、今回のミサイルは巡航ミサイル型で地表スレスレで飛来したので、爆発音は近くなります。しかし、その割には音が小さく、またレーダーでその破片の広がりを見たところ、進行方向に大きく広がる飛び散り方をしておりました。ミサイルは内部で爆発すれば、同心円状に爆発するはずでそれでも加速が類ているので楕円形には変が広がりますが、今回のは直線上に拡散して広がっています。つまり、中に液体のようなものが入っており、爆発せずに広がったということになるのです。厦門の基地から飛来したミサイルであれば、当然にその中の液体は・・・」

「死の双子、ということか」

張の答えに、何将軍は何も言わずに頷いた。

「被害状況を知らせよ」

「はい、ミサイル14発確認。そのうち8発を迎撃。8発に関しては建物の被害などは今のところ確認できず。また残り6発については市街地に着弾。元tも近いところでは天壇公園南になります」

「中南海のトンネルのあるところか」

「その周辺は、建物が複数破壊されていますが、火災などは発生しておりません。現在市の消防局や公安警察が救助に・・・。」

「すぐに北京市に通知して、それらの救助をやめさせ、付近を隔離せよ。部隊を派遣して構わぬ」

「はい。」

何将軍の指揮は際立っていた。将軍は言わなかったが、一緒に科学班が同行し、すぐにその一帯を封鎖した。封鎖地域は外から見えないようにすぐに鉄板で壁を作りそして完全に閉鎖をしたのである。鉄板の壁の中からは、助けてくれという声がかなり大きく響いたが、科学版や封鎖班は、心を鬼にしてその声が聞こえないふりをした。中に入っても治療法はないしまた、下手に近づけば自分が感染してしまうのである。

「何将軍」

「どうした」

「大きな問題が発生しました。」

「何だ」

「陸軍病院、微生物研究所が被弾し、中から病原菌が拡散しております。」

何将軍も張延も、頭を抱えるしかなかった。

「張同志。国家主席などで北の瀋陽に避難をお願いします。我ら先駆は全力を上げて避難を誘導し護衛いたします。」

もうこれしかなかった。いや、陸軍病院の微生物研究所で事故があった場合のマニュアルに、そのように記載があったのを何将軍は覚えていたのだ。

「わかった。」

張延はすぐに中南海に戻った。

宇田川源流

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