小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第三章 動乱 22

小説 No Exist Man 2 (影の存在)

第三章 動乱 22


「孔洋信もなかなかしぶといねえ」

 胡英華は総意って司令部の受話器を取った。

「王瑞環はそこにいるかな」

「胡同志ですか」

「ああ、そろそろ空爆しましょう。そのあと、厦門に軍を勧めます」

「ああ、人民に解放軍の威光を示さないとならないということですからね。なるべく派手に反乱軍を鎮圧し、華々しく軍を出さないとならないということになりますね」

 常務委員の王瑞環は、元軍人ではなく官僚である。このように自分の命令で何万主軍隊が動くような経験は当然にない。しかし、単なる空軍という状況であり、自分の命令で遠く厦門の空で軍が動いている。そのうえ、一度厦門のため動いた援軍たちも、皆厦門を責める側に回った。まさに厦門の駐屯地は「四面楚歌」の状態である。

「さて仕上げをしないと」

 謝思文は、別な電話で王瑞環の秘書である劉俊嬰に連絡を取った。

「うまくいきそうか」

「ああ、総攻撃の前に何とかしますよ」

 劉俊嬰は、そういうとスマーフォンを操っていた。

「だいたい、暴徒の指揮官は見えてきましたね」

 何華は、近衛戦区に来ている常務委員である張延に話をした。

「ほう」

「ウイグルやチベット、そして内モンゴルの連中に民主派。まあ、民主派に関してはすでに何回か逮捕されているものもいるようですし、チベットについては最近動きが活発化していたのでわかりやすかったですね。」

 何華将軍は、数多くの無線やSNSを操作しながらそのような報告を行った。

「要するに、今回の反乱の首謀者はそいつらか」

「はい」

「しかし、チベットや内モンゴルが民主派と手を結んで一つにまとまって、やったという事か」

 張延には信じられなかった。今まで共産党はそのように反乱するものが一つの勢力にならないように、その分裂工作にかなり力を入れていたのである。その工作がすべて打ち破られているとは思えない。

「そうなります」

「そんなはずはない、間違いなく、そのう後ろに黒幕がいるはずだ。それに、上海のマフィアに、厦門の病原菌も含めれば・・・」

「同志」

 何華は、落ち着いていった。

「同志は、今の状態を見て、その黒幕が見つかるまで何もするなとおっしゃるのか。それとも、とりあえず彼ら指揮官を逮捕するか殺すかして鎮圧をするというのか。命令ですから、鎮圧するなというならば放置します。その代わり中南海も人民大会堂もすべて暴徒に占領される可能性があります。それでよいならばそのように・・・」

「いや、わかった。まずは鎮圧してくれ。そしてその後ろの黒幕も探ってくれ」

「うまくゆくかどうかはわかりませんが、やってみましょう。

 何将軍は、そういうとまたSNSなどを操作した。SNSでスパイと暗号でやり取りしていた。指揮官を暗殺して鎮圧せよ、それが命令である。何将軍にしてみれば、まずは鎮圧することが先であり、操作は別、特に今の暴徒の指揮をしている人物を拷問するなどということをするつもりはない。現場の指揮官を拷問しても本部の総指揮官まで知っているとは思えない。軍とはそのような組織である。

「何将軍」

「どうした」

 その時に、指令所の中で声が上がった。

「西方からミサイル」

「何本だ」

「1本です」

「撃墜せよ」

「はい」

 暫くして外の遠くで音がした。

「撃墜完了です」

 顔が青くなっている張は、なにに質問した。

「西が、反乱軍に占領されてこちらを攻めているのか」

 なに将軍は、とぼけた表情しかしていない。

「一本しか飛んでこないならばわからないでしょう。単なる流れ弾が飛んできただけかもしれないし、また、何か別な意図があるのかもしれない」

「別な意図」

「そりゃそうでしょう。西で反乱を起こしている連中は、今北京で反乱を起こしている暴徒と味方同士という事でしょう。その味方がいるのに、ミサイルを撃つとは思えない。つまり、今のは何かの印か何かでしょう」

「印」

 張延は、何のことを言っているのかわからない。

「そうです、印とか、狼煙という感じ。つまり何かの合図。多分、西の方の占領を終えたという意味だと思います」

「終えた。」

「はい、つまり、西の人民解放軍や官僚など反乱軍に敵対する勢力はすべて死んだか、または、降伏したという事でしょう。」

 何将軍は、普通の事であるかのように言った。しかし、それは西部方面で共産党の勢力が失われたということにほかならず、もしかしたらそのまま独立を言い始める可能性もあるのだ。そのようなことになれば、内戦は避けられない。

「張同志、早く鎮圧しないと、西の連中も合流して大変なことになりますよ」

「ああ、すぐに」

 そうしている間に、何将軍のSNSにはリーダーを殺した、暴徒の中心人物を暗殺したというような投稿が来ていた。

「劉さん、ハッキング成功しました。何時でも発射できます」

 劉はスマホに書かれたメッセージを見て、「もう一人がまだだ」というように書き込んだ。目の前で王瑞環は劉の合図を待っているが、まだ劉は納得できていなかった。

「まだか」

 王瑞環のいらいらした声があった。

「もう少し」

 劉はスマホとにらめっこするように見た。しかし、まだかなどの最速のメッセージは出さなかった。その時、スマホのメッセージが入った。

「準備完了、脱出するので2分後より」

 というメッセージが来た。

 劉は腕時計を見て、きっちり2分後、スマホの中のアプリを起動させた。その時、厦門の基地からミサイルが複数、いや20発以上のミサイルが空に飛び出した。

「何将軍」

「どうした、ミサイルならばまた撃ち落とせ」

「それが、西からではなく厦門から」

「厦門」

 何華将軍の頭の中は混乱した。厦門の73軍にはまだ蔡文苑と孔洋信が残っているはずである。この二人は、周毅頼国家主席の派閥であり、今回は運悪く悪者にされて切り捨てられただけであり、北京を攻撃する必要はない。それも流れ弾ではなく20発以上というのは完全に北京を攻撃に来ているのだ。

「おかしい」

 何華は、一言そういうと、部下に命じた。

「あるものすべてを使って落とせ」

「はい。」

 何発かは撃ち落とすことができたが、半分の10発くらいは北京のいたるところに、ミサイルが着弾した。そのミサイルは、爆発と同時に、大量の水をバラまいたのである。

宇田川源流

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