小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第三章 動乱 20
小説 No Exist Man 2 (影の存在)
第三章 動乱 20
「何、ウイグルが反乱を起こしただと」
「はい、ウイグルだけではなく内モンゴルやチベットも…」
周毅頼国家主席のオフィスには、次々と良くない報告が入ってきていた。今までの間に、厦門の駐屯地との内戦状態になったことまでは自分の頭でも理解していた。もちろん、その内容に納得が言っていたわけではない。盟友の孔洋信を失うということであるしまた戸外の指令である蔡文苑も一緒にいなくなってしまうということになる。自分の軍に対する影響力が失われるということになってしまうのであるから、あまり望んだ結果ではない。
しかし、そもそも李剣勝勝利が日本で事故死した。いや正確に言えば事故死というよりは、こちらで仕掛けた動乱に巻き込まれてしまったということになる。しかし、それでも日本はまった動揺をしなかった。日本が最も動揺するように天皇を狙ったにもかかわらず、陳文敏などが失敗したのである。この原因は陳文敏が自分で手を下さなかったことにあると判断したので、今回は『死の双子』という新種のウイルスを日本にばらまくことを考えた。陳文敏荷はそのバラまく係を行わせる予定であったが、それを拒否、本来ならば敵前逃亡であるが、そのようなことを射ていられないので、林青に直接指揮を執らせた。しかし、その林青も、自分ですべてを行うのではなく、香港マフィアとつながっている津島組と組むということを行ったのである。
このあたりからおかしな話になってきた。津島組と組んでいる香港マフィアの王獏会と、上海マフィアの間の戦いになり、そして王獏会が完全に敗北してしまったのである。場所を上海で戦ったのもよくなかった。そして『死の双子』が外部に流出し、厦門での作戦に対して、『死の双子』が使われてしまい、そして民間を軍が虐殺しているというような形で見られてしまったのである。運もよくなかったのだが、しかし、結局は孔洋信もそして蔡文苑も、科学者であるはずの毛永漢まで、失う決断をしなければならなかったのである。
周毅頼も北京から一歩も出ていないが、その内容はすべて把握していた。
しかし、その「泣いて馬謖を斬る」という苦渋の決断は、そこですべてを止めるためであったっはずだ。しかし、この機を好機と見て、ウイグルなどが反乱を起こすなどとは思わなかった。
「誰か、今常務委員は誰がいる」
「徐平同志と張延同志です」
徐平、張延、いずれも自分の子飼いである。徐平は経済畑の官僚であり、ずっと自分の近くで経済や財政のことを行っていた。李剣勝が首相にならなければ、間違いなく首相にした実務派であろう。実際にこの混乱が終わった後、首相にする予定であった人物である。しかし、軍の指揮などはできない。一方張延は、本当に腰巾着でしかなく、太鼓持ち的に何かを言う以外には何の役にも立たない。しかし、緊急事態の場合、北京首都防衛戦区の軍を動かすには、常務委員を政治局員として連れてゆかなければならない。軍の司令は中央軍事委員会からゆくとしても政治局員でうまく回せるところはない。
「西部戦区からの報告はないのか」
秘書は端末を操作しながら、静かに首を振った。
「すぐに西部戦区に連絡をとれ」
「はい」
ウイグルやチベットの反乱に備えて、そしてそこにインドやトルコなどの介入がないように、西部戦区が存在している。成都に司令部を置き、重慶・昆明・宝鶏・
臨潼だけでなく、チベットとウイグルに集団軍の司令部を持っている。同時にウイグルの基地にある核ミサイルの管理を管轄している。もちろん発射の権限は北京である。そのうえ空軍基地も多く保有しているので西部戦区が反乱軍に負けるはずはない。
周毅頼はそのように考えながら、一抹の不安を持っていた。何がというのではない。なんとなく漠然とした不安が頭の中をよぎっているのである。
「周同志。西部方面軍の趙司令です」
趙杜琳少将、以前の成都の司令官をそのまま格上げして西部戦区の司令官にした。誰よりもチベットやウイグルをよく知っている軍司令官である。
「申し上げます。ウイグル集団軍、チベット集団軍、共に反乱軍よって占拠され、現在連絡が取れません。また、成都航空工廠、蘭州の空軍基地もやられています」
「なに、ほとんどやられているではないか」
「はい、成都市内も市民の反乱が大きく、市民を鎮圧するだけで、ウイグルやチベットに手が回りません。」
趙少将の声は、あまり余裕が感じられなかった。
「ウイグルにミサイルの発射を許可する」
「核ですか」
「一回目は核は使うな」
「はい。では大型弾道ミサイルを準備します。」
ウイグルも、自分たちの街がミサイルで攻撃されれば、動きを止めるはずだ。周毅頼はそう考えていた。
「徐平を呼べ」
秘書にそういうと、水を一口飲んだ。
「お呼びでしょうか」
「北京周辺に民衆の反乱は」
周毅頼は徐平に聞いた。
「はい、起きているようですがまだ小規模で」
「まだとは」
「鎮圧しているのですが、徐々に膨れ上がっている状態です。」
「何故だ」
周毅頼は叫ぶように言った。
「共産党・人民解放軍は、中国人民を守るもの、生活を支える存在であったはずが、今回、人民解放軍が積極的に人民を殺したということになります。人民の不満が大きく・・・」
「もうよい」
「何とか収集できるように」
「苦労かけるな」
周毅頼は少し沈んだ口調で言った。北京で反乱がおきているということは中国全土で反乱が始まっているということになる。
「西部戦区からです」
電話に出ると先ほどの趙少将からの電話であった。
「弾道ミサイル12発がすべて撃ち落とされました」
「全て」
「はい、そして蘭州に、逆に敵のミサイルが着弾被害が出ております。蘭州などでは・・・」
「趙君」
「はい、何でしょうか」
「まさかとは思うが、チベットとウイグルの集団軍は反乱軍に負けたのではなく、反乱軍に寝返ったのではないか」
「・・・・・・。」
西部戦区では、最も最前線に橋頭保としている二つの集団軍である。成都の本部司令部軍に次いで強い軍のはずだ。その二つの軍が、反乱軍程度に負けるはずがない。つまり、彼らは寝返ったのである。当然に弾道ミサイルも対空砲で撃ち落とされたのに違いない。そのうえ、核ミサイルも反乱軍が抑えているということなのであろう。
「わかった。」
「いや何とか今・・・・・・」
そこで爆発音が電話の中でっ響いた。
「おい、どうした」
「・・・・・・」
爆発音の後、通信が途切れた。成都の司令部がミサイルで攻撃されたのである。電話線が斬れたのか、あるいは、趙ほか西部戦区の司令部が壊滅したかどちらかでしかない。
周毅頼は、決断した。
「張延に、首都防衛軍を指揮させよ」
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