「宇田川源流」【日本報道検証】 赤沢大臣の関税交渉は成功だったのか?

「宇田川源流」【日本報道検証】 赤沢大臣の関税交渉は成功だったのか?


 毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたします。

 さて、今回は、先週最も大きな政治的なトピックであったと思われる、「トランプ相互関税に関する赤沢大臣による関税交渉」について見てみたいと思う。なお、本件に関しては、石破総理及び政権は「一回目の交渉としては成功」ということを言っている。この「一回目としては」という微妙な言い方はいったい何なのであろうか。要するに二回目以降に進展がなければそのような評価にはならないということなのであろう。外交経験のない赤沢大臣の割には、うまくやったのではないか、というような印象でも取ることができる。

しかし、今回の交渉は「交渉を妥結して、結果が出るまでの期間は、日本は関税がかかったままである」というものであり、そのことから考えれば、緊急性を擁するということになるはずであるが、党もこの感想には「悠長に構えている」というような感覚になってしまうのではないか。

私のような感想を出す人はほとんどいないので、世論としてはあまり大きな意見ではないが、本来は「一回の(またはかなり短期間)交渉で全てを決する必要がある」ということであり、きほんてきには「戻って確認してから再度交渉をする」などというような話ではないはずだ。過去、日清戦争の下関条約における陸奥宗光も、また、日露戦争のポーツマス条約における小村寿太郎も、いずれも「交渉が決まるまでは日本に戻ることはできない(下関の場合は日本国内なのであるが、比ゆ的な表現で)」というような覚悟があったはずだ。慎重に交渉を進める場面と、短期間で結果を出す内容とは全く異なるはずであるが、残念ながら、その様な使い分けもできないのであろうか。

 石破内閣の内容は非常に残念な内容であるというような気がするのである。しかし、これは「交渉に臨む覚悟」ということで、もちろん私の感じる理想論とは異なるが様々な考え方があるということなのかもしれない。しかし、石破内閣の外交姿勢には、より大きな問題点があるということになる。「参考記事」のあとは、その内容を見てみることにしよう。

<参考記事>

石破首相、帰国の赤沢氏と会談 トランプ関税対策、検討加速を指示

4/18(金)毎日新聞

https://news.yahoo.co.jp/articles/84d0347f5b8b0b455f52ca3184b1318a67a3138d

岩屋外相「安保は別の話」 日米関税交渉巡り

4/19(土)共同通信

https://news.yahoo.co.jp/articles/769adef5e6c596fd9b4f2447b24141402cec1dd5

<以上参考記事>

 「外交とは情報戦争である。」誰が言ったかは忘れたが、どこかの政治家が言った言葉である。まさに、外交とは「情報の戦争」であり、外交を行うには、事前に敵の情報をしっかりと見出してその分析を行わなければならない。そのうえで、今度の名言は作家の塩野七生先生の言葉であるが、「外交とは、可能なかぎり少ない『ギブ』で可能なかぎり多く『テイク』する技能だ」ということを言っている。要するに交渉の中でどれだけ日本の国益になる内容を引き出すことができるかということでしかない。

では、今回の赤沢大臣の交渉に「テイク」を得たものは何かあるのであろうか。はっきり言って「ゼロ」である。残念ながら、「相手の出方を見た」だけのことであり「外交ではなく、本来は外交の前段階」で行うべき内容である。つまり、外務省が全く仕事をしていないか、または石破内閣が外務省の情報の使い方を知らないか、はたまた、外務省がアメリカ政府から全く信用されておらず情報を得ることができなかったかのいずれであろう。いずれにせよ石破外交が全て破綻しているということ、または情報を得ないで外交をしていることになる。

そのうえで、トランプ大統領は「日本を優先する」といい、事前に「貿易赤字」「農産品」「自動車」「非関税障壁」そして「日米安保の不均衡」ということを発言している。これらの発言は散発的に発言されているということを見れば、アメリカのホワイトハウス内部で何らかの打ち合わせを行い、その中で出てきたものが発言やSNSへの書き込みということで現れているということが強く予想される。トランプ大統領は、戦略的に多くのことをため込んで整理して発言するタイプではなく、何か情報が入った時に衝動的に過激な表現を行うということが発言の特徴であることを見れば、当然にそのようなことが強く推測されるのである。

その様に考えれば、トランプ大統領が相手ではなくても、これらの内容が関税校長の中心的議題になると考えていたし、このように情報を出しておけば、何らかの反応を持ってくるものと思っていたのの違いない。

当然にこれらをすべて受け入れろなどということはない。元首相安倍晋三の父で外務大臣をやっていた安倍晋太郎氏は「(外交は)将来に向けてスジを通すべきは通していかなければいけない」と発言している。このように考えれば日本の国益のために、「スジ」を通して話をすべきではないか。

石破首相は2月7日の首脳会談で1兆ドルの投資を行うことを約束してきている。そのうえで「貿易赤字解消」ということを言えば、何かを買うという事しかない。「農産品」「非関税障壁」に関しては、日本のことをよくわかっていなければならない。しかし、現在の経済政策を見てもわかるとおりに石破内閣は現状の日本を全く把握していない。残念ながら今までの内閣の中でも稀有なほど「日本国民を知らない」ということになる。全く何もわかっていないし、また、何もできていない。現場を知らないということでしかないのである。

そのうえ、「安保の不均衡」に関しては岩屋外務大臣は「仮に安全保障の問題が出てくれば、本当は別のトラックの話だろうと思う。事柄の性質が元々違う」などと言い、日曜には石破内閣も同様の発言をしている。経済と安全保障は別などというようなことが「国家と国家の関係」でそのようなことが言えるのであろうか。また日本だけがそのようなことを言っても、それで「では安全保障を解消する」といわれて日本はどのように対処をするのであろうか。「テイク」を引き出すはずの外交で、全く何もできていないということであり、また、そのようなことを交渉が終わってから言っても意味がなく、赤沢大臣は何も言えていないということが大きな問題ではないのか。

いずれにせよ、石破内閣は全く外交ができていない。同時に、このような要求が出てくるということは、2月7日の首脳会談で、1兆ドルの投資を約束したにもかかわらずその約束も果たしていないということでしかないのである。単純に「信頼を失った石破内閣の外交」が日本の国益を損ねているということに他ならないのである。

もう一度「信頼関係の構築」からしっかりと行うべきではないか。石破内閣は外交の基礎の基礎もできていない、そう見えてならない。

宇田川源流

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