小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第三章 動乱 9
小説 No Exist Man 2 (影の存在)
第三章 動乱 9
「なぜこのようなとことにウイグル人がいる」
ハミティが厦門の駐屯地の前に行くと門衛は、あからさまに嫌な顔をした。
「蔡文苑少将にお伝えしたいことがあります」
ハミティは、何か話が通っているものと思っていた。
ハミティからすれば、自分が日本人の存在について共産党の幹部にご注進し、そのことで、共産党が動いていた。そして、そのことから沖田進はいなくなったのである。ハミティからみれば、安斎は共産党の誰かとつながっていて、日本のスパイである沖田進を一緒に逮捕したのではないあ。そのように考えている。つまり、安斎が言っていることは当然い共産党から人民解放軍に話が伝わっていると考えいていたのだ。
実際に、ハミティの共産党への報告は、そのまま共産党の内部には入っていた。そのことから胡英華とその秘書の謝思文が沖田を名乗ていた荒川と安斎に接触したのである。ハミティの読み違いは、胡英華と周毅頼が対立関係にあり、ハミティが繋がっているのは、胡英華とは違う側であったということ、もっと詳しく言えば、ハミティは共産党が一枚岩であるという誤解があったのである。
要するに、当然に厦門の第73軍の軍長である蔡文苑少将と、安斎が繋がっているはずはないし、また、事前にそのようなことを知っているはずがない。
「で、どんな用事だ。アポイントはあるのか。」
「アポイントは入っているはずですが」
ハミティは、しかし、自分の思い込みを疑うようなことはなかった。
門衛は、そのようなアポイントが入っているということは全く聞いていなかった。しかし、中央から孔洋信常務委員が来ていることは、さすがに駐屯地のすべてが知っていた。孔洋信常務委員が来ていることから周辺までのテロの可能性を考えて警備を強化していたし、不審人物に気を付けるように通知が出ていたのである。そこに自信を持て「アポイントがあるはずだ」と言ってウイグル人が来たのである。何か事情があるのか、または孔洋信常務委員の客人かもしれないと考えた。
「一応、聞いてみますから、ここで待っていてください」
門衛の一人は、電話で蔡文苑少将の秘書室や総務室にアポイントの確認をしたが、そのようなことは確認できない。そのうえ、孔洋信常務委員の付き人もそのようなことは聞いていないかった。
「怪しい」
駐屯地の警備課がすぐに10名ほどで門のところにやってきた。通常であれば、ハミティは危ないと考えるのであろうが、逆に、ハミティは迎えが来たのであると安易に考えたのである。
「荷物を検査させてもらいます」
警備課の憲兵は、そう言ってハミティの持ってきたものを確認し始めた。
「これはなんだ」
「これは、蔡文苑少将にお渡しする・・・」
憲兵は、その試験管の蓋になっているコルクを取った。
「何をする」
ハミティは強引にその試験官を取り戻そうとした。その瞬間、試験官の液体が憲兵の顔に掛かった。
「うわっ」
憲兵は、そう叫ぶとその試験管を放り投げるように手放した。しかし、その試験管は前医にいる二人にあたり、液体をそこにいる全員に振りかけてしまったのである。
「緊急事態」
門の反対側にいて遠くから見ていた門衛の一人が緊急通報をした。すぐに多くの兵が来て門を閉めた。その横でハミティと憲兵10名と門衛3名、併せて14人が、折り重なるように倒れていた。中にはまだ息があるのかうめいて、動くものもあったが、自力で立てるようなものではない。顔や身体の孔から血が噴き出していた。一番初めに顔に掛かってしまった憲兵は、目や鼻、耳から地を噴き出して、既に絶命していた。周辺は血が飛び散り、また血溜まりになっていた。
先日の件があったので、その血溜まりに近付くものはなく、すぐにその周辺に規制線が張られた。通報を受けた司令部から防護服を来た兵士が多く来たが、それを取り囲むように多くの兵士が集まっていた。
「いまだ」
門の外側で、掃除をするように民間人に化けたワンの手下たちが集まった。
「近付くな」
門の内側から兵士が声をかけた。
「しかし、この前みたいに住宅地に全て流されては」
「その時は支持する」
「いや、手伝わせて下さい」
そう言って、水をバケツの水とモップを取り出した。
「いまだ」
ワンの手下たちは、一斉に持ってきたタンクの水を門の内側に向けて、まるで噴水のように放出した。風向きはちょうど待ちから門の内側に向けた内容になっていた。そしてその風に乗って、水が飛び散ったのである。
「おい、えっ」
水にはワンが手に入れた「死の双子」が混ぜられていた。そのうえ、吹き矢のようなもので防護服にも穴をあけた。
「なんだこれは」
そう言えた人々はまだよい方で、そこに集まった多くの兵士たちはみなしの双子の犠牲になった。その数は百人を超える数ではなかったか。
「逃げろ」
ワンの手下たちは、水を放水したまま立ち去った。放水したままにしたのは、一つには追っ手を避けるため、そしてもう一つには、証拠を隠滅するためである。
「被害はないか」
「服の下に防水のラップやビニールを撒くというのはいい手ですね。マスクや手袋は怪しまれませんしね」
5人くらいの男たちは、民家の中に入ると、服を脱ぎ、その服や身に着けていた衣類やビニールをドラム缶の中に入れ、そのままそこで火をつけた。あらかじめ用意していた服に着替えてそのまま逃げたのである。
「どういうことだ」
報告を受けた蔡文苑は、彼の怒った時のしぐさの特徴である、目を大きく見開いた。
「何かあったのか」
横にいた孔洋信は蔡に向かっていった。
「それが、外部のウイグル人が私を訪ねてきたようなのですが、その者が死の双子を持っていたというのです。」
「毛先生」
一時日本にいて、死の双子の研究をしていた毛永漢がそこにいた。
「はい、何でしょうか」
「死の双子はウイグル人が持っていたというが、何か心当たりがあるかな」
「そもそも、死の双子を作ているのは日本と、北京とここ、厦門の73軍だけでございましょう。そこから香港の王獏会に渡しましたが、それ以外は出回るはずはございません」
「要するに、毛先生の見解では、北京からか、汪獏会か、またはこの駐屯地から死の双子が・・・」
「孔同志、それだけではなく、その被害を掃除しに来たと思われる外部の者たちが、死の双子を混ぜた水をその場で撒き、そのことによって100名を超える被害が出たということです。」
蔡文苑は、孔洋信と毛永漢の会話を遮って、事態を報告した。
「要するに、ウイグル人の仲間が、死の双子を大量に持っていたということか。それは、かなりの量を持っているということではないか。」
「はい」
「日本で死の双子を撒いて混乱させるはずが、先にこちらで混乱が起きるとは、皮肉なものだな」
孔は鼻で笑った。
「要するに、ここの駐屯地から出たのであろう。それがウイグルのテロリストに伝わった。北京は実験程度しか作っていないし、日本から持ち込まれることはないということは、そう言うことではないか。」
「はい」
蔡文苑はその場でうなだれるしかなかった。
「そう言うことだすぐに調査しろ。それと、町の人々を近付けるな。それと毛先生、あなたの研究員も被害があるようです。すぐに100を超える遺体の検査をお願いします」
毛は、頷いて研究室の方に向かった。
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