「宇田川源流」【日本報道検証】 台湾統一をめぐる習近平政権の野望と日本

「宇田川源流」【日本報道検証】 台湾統一をめぐる習近平政権の野望と日本


 毎週火曜日と木曜日は、「日本報道検証」として、まあニュース解説というか、またはそれに関連するトリビアの披露とか、報道に関する内容を言ってみたり、または、報道に関する感想や社会的な問題点、日本人の文化性から見た内容を書き込んでいる。実際に、宇田川が何を感じているかということが共有できれば良いと思っているので、よろしくお願いいたします。

 さて、今回は「台湾統一をめぐる習近平政権の野望と日本」と題して、今まで「台湾有事は日本の有事」としてきた内容を中国は公然と批判してきているのに対し、アメリカのトランプ政権は、日本に防衛費の増強を求めてきているということ、一方で台湾の独立に関してはそれを認めるというような形になっており、徐々に日本を取り巻く東アジアの環境が大きく変化するというような状況になっているのですが、なぜか日本の報道に関しては、「憲法9条」とか「国会での政局」というようなことばかりを中心に報じているような気がしてなりません。本来我々が見なければならないのは、永田町の国会の中の政局ではなく、世界規模の大きな政治の変化、または分断の社会ということを考えなければならないのですが、日本の報道空間はそのような危機感は全くないということが大きな問題なのではないでしょうか。

さて、まずは台湾というのがどのような存在なのかを考えてみましょう。

そもそも台湾は、少なくとも大陸の王朝が「明」と言っている時代までは「化外の地」つまり「お化けの世界(要するに人知の及ばない世界)のもっと外側の地」というような場所であったのです。それが清代になり、アヘン戦争など海からの外国勢力の進出があったことからにわかに、台湾が重要視されるようになる。そして暫くは深刻の支配にあったが日清戦争時の下関講和条約において、日本の支配になった。この日本の支配になるにあたっての台湾での日本軍との戦いは、私が上梓した「我、台湾島民に捧ぐ 日台関係秘話」という本に書いている。そして大戦後、日本はサンフランシスコ講和条約で台湾と朝鮮の支配権を放棄することになった。

ちなみに、この支配権の放棄は、中国に支配権を渡すというものではない。その頃中国に国共内戦があり敗北した国民党がそのまま台湾を占領した。はっきり言ってしまえば、中国共産党の支配に服したわけではない。しかし、中国の一部として内戦状態に巻き込まれたような形になっているのである。そもそも国民党と共産党を「内戦」とすれば「一つの中国」ということになり、「まったくの別政権で国家として分離する」というように考えれば台湾は国民党が支配した瞬間に台湾は独立しているということになる。

<参考記事>

中国、台湾との「統一」断固として推進へ=首相

3/5(水)ロイター

https://news.yahoo.co.jp/articles/514322f29eac3570549c13f18e6cae64ca66d122

米国防次官候補 台湾に防衛費「10%」を要求 GDP比で 日本にも更なる増額を求める「脅威に見合うレベルの支出」

3/5(水) TBS NEWS DIG Powered by JNN

https://news.yahoo.co.jp/articles/620e4da86e134a40754966485568e765e78a4098

<以上参考記事>

 歴史的に、中国との対立を避けるというか、実際にはマリ中国と戦うことに意味を持たなかったアメリカは、いわゆるニクソンショックで米中間で国交を回復し、いわゆる「一つの中国」を認めた。田中角栄も同様に一つの中国を認め、台湾と中国を一つの中国とした解釈を認めるとしている。しかし、アメリカはなかなか巧妙で、その公式文書の中には「中華人民共和国が台湾を含めた一つの中国という概念を持っていることを認める」と記載されている。

トランプ大統領はその公式文書のまま解釈をしており、台湾の独立を認めるということを暗に示している。いや、正確に言えば台湾の独立を支持しないという単語を公式文書から消したのである。

トランプ大統領は就任以降、「習近平は良い男だ。話せばわかる」ということを発言している。あまり頭のよくない日本やアメリカのマスコミたちは、この発言を「言葉通り」に受け取って「トランプ大統領は、アメリカワーストとカネのために民主主義を裏切って中国やロシアに近づいている」などということを言う。もちろんそのような解釈もできるのであるが、実際にトランプ大統領が行っている内容は、対中包囲網と経済的な封じ込めということになる。もちろん戦争をするというようなことではなく中国を経済的に封じ込めるということが大きな目標になっている。

しかし、その様に経済的に封じ込める場合は、当然に、「暴発」する場合がある。特に中国などは国際法を守らない国の代表格である。民主主義とお言うよりは資本主義経済においてルールを守らない・信用を得ない、ということは経済的な継続性を得ることができないということになり、そのことは、そのままそのような無法的な存在をのさばらせることがそのまま全体の崩壊を招いてしまう。資本主義、自由主義経済の崩壊はそのまま秩序の崩壊であり、その崩壊を食い止めることが民主主義、資本主義陣営の大きな目標になる。

つまり、「同じ民主主義・自由主義経済の君であれば、中国を封じ込めることが必要」ということになる。

アメリカは日本にGDP比3%の防衛費を作るように要求している。もちろん、その防衛費が打倒であるかどうかは日本政府が判断することである。しかし、同時にその防衛費を得ることはある意味で「中国の覇権主義から日本は日本自身で守る」ということを意味している。日米安全保障条約はそのまま「日米同盟」というたいとう関係なのか、または「アメリカが日本を庇護する関係」なのかということになる。中曽根内閣の時に「日米同盟」という単語を使い「不沈空母」という単語を使ったことが話題になった。あれから40年。今は中国という現実的な脅威が目の前にある状態で、日本は何をすべきか。

安倍内閣の時は「集団的自衛権」ということを発動可能にした。このことで台湾有事ということを現実の問題として把握し、そのうえで防衛計画を立てることを行った。しかし岸田内閣でその言葉はかなりトーンダウンし、石破内閣になったら「アメリカが一方的に日本を庇護する安全保障条約」になってしまっており、具体的な世界戦略を出さないでいる。インド太平洋戦略を打ち出した安倍内閣とはくらべものにならないほどひどい内容である。

そのような状況を見越して、つまり「アメリカだけが敵」というようになったために中国は台湾統一を徐々に現実的なものとして動き出している。そのことが今回の全人代で明らかになっているのではないか。

日本の危機はすぐそこに迫っている。

宇田川源流

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