小説 No Exist Man 2 (影の存在) 第三章 動乱 4

小説 No Exist Man 2 (影の存在)

第三章 動乱 4


「他の薬屋も襲え。死の双子を向こうさんに使われちゃたまんねえ」

 太田寅正は、ワンや他の中国のマフィアに言い放った。

「そうだな。あいつを使われては、この上海の人々がおかしくなっちまう。それじゃあ上りもなくなってしまう。」

 ワンもそういい始めた。他の者も何か話しているが、中国語だから何もわからない。それも中国語の隠語で話しているのであるから、多少中国語がわかっても、理解ができない状態なのである。。

「まあ、太田さん、西園寺さん、そういうことで我々は、多少犠牲が出ても死の双子を取りに行くことになった。ただし……」

「ただし、なんだ」

「それは我々上海のマフィアだけで行う。暫く日本人はホテルに監禁する。」

「監禁」

「そうだ。出てこられると邪魔だ。」

「じゃまか」

 太田寅正は、苦笑いをした。

「ああ、目立ちすぎる。そもそも、そんな和服で動いていては、日本人ですと宣伝して標的になっているようなもんだ。それならば太田さんあんた一人に8人くらい護衛を着けなきゃなんない。西園寺やヤスや荒川や安斎までいれば、一つの組がすべて護衛に回んなきゃなんない。それじゃあ、死の双子の回収が遅れる。」

「ワンは、死の双子の回収を急げや。わかったからおとなしくホテルにいてやる」

 太田はそう言ってホテルに向かった。

 それから四日間。上海は平穏のまま存在した。しかし、裏社会は戦争が起きていた。上海は、毎日どこかで火事があったり盾もが壊れたりしていた。表向きはそうであったが、しかし、香港マフィアや人民解放軍とワンの上海マフィアが戦て散る状態であった。

「やってんなあ」

 ホテルの窓から火事で煙が上がるたびに、太田はそう言っていた。暇だろうからと言って、日本語のできる若い女がつけられていた。この女が毎日様子を教えてくれた。

「ワンの組は何人死んだ」

「はい、今日は6名死にました。死者の双子を敵が使ったようで、前身から血を流して死んだということです。」

「6人も失ったのか」

 太田は外の火事の煙を見ながら言った。

「明日は、ホテルを丸ごと攻めるようです。」

「ホテルを」

「ホテルがそのまま薬屋になっているようなので」

「いまさら驚かないよ。ワンは銀行も持ってるからね」

 女は、笑った。そのままそこに立っていれば、そのまま日本人の女性であるといっても全くわからない。日本企業の出張で中国に来た女性というような感じでしかない。

「おい、女」

「はい」

「名前を教えろ」

「私の名前ですか。」

「そうだ」

「馬に紅と書いてマーホンといいます」

「べに・・・か」

「べに(紅)とおよびください」

 馬紅は、笑った。

「おい、俺と寝るか」

「その役目はワンさんから何も言われていませんが、太田さんが望むならば、それでもかまいませんよ」

 太田は笑った。

「いいや。紅、お前は美人だし、よさそうだが、お前みたいな女と寝たら、こっちが食われちまいそうだ」

「まあ、こわい。女と遊ぶなら、そのような女性を用意しますよ」

 馬紅も、そう言って笑った。

「明日次第です。明日が最も大きな戦いになると思います」

「そうだな」

 翌日、ホテルが丸ごと燃えた。上海の消防局がホテルを消火していた。上海銃の大きな事件であった。消防局だけではなく、人民解放軍もすべてが消火に回っていた。

「おい、紅、軍は香港マフィアの味方じゃなかったか」

「はい、軍の中にも様々な派閥があります。そもそも中国共産党という中にも様々な派閥がありますので、その派閥の中に様々な内容があるということになります。そのうえで、下の方はあまりそのような派閥とは関係ないということになります。ですから、軍の中間管理職の命令に従って、消火の任に当たったのでしょう。」

 紅は、燃え盛り黒い煙を上げるホテルを見ながら言った。

「まだ報告はないのか」

「はい、まだ。ただ、ホテルが燃えているということは、うまくいったという事でしょう。」

 馬紅は、冷静に言った。

「荒川、安斎、どうだ」

「中国にいては、どうにも監視されているようで。でも紅さんの言ったように、確かに共産党の中にも派閥はある。あの、死の双子も使うべきという人と使うべきではないという人がいる。それは知っている。」

 馬紅は何も言わずににっこりと笑った。この女は何かを知っている。

「西園寺、そろそろな出番が出てきそうだな」

 西園寺もわらった。

「綾子がいたら喜んでいるな」

 太田は笑った。

宇田川源流

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