「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 何事も「雨降って地固まる」をうまく合わせた作品

「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 何事も「雨降って地固まる」をうまく合わせた作品


 今秋も水曜日は、大河ドラマ「光る君へ」について、本当に好き勝手、私の憶測推測その他個人的感想を含めて書かせていただいている。今回の第30回の作品で、非常に象徴的に書かれていたのが「雨」でしょう。これは冒頭の部分(下記記事)にある日照りと雨ごいという事だけではなく、「人間関係の崩れと塊」ということが非常に印象深く書かれているのが印象的であると思う。大石静先生は、そのようなことを意識してこの会を作ったに違いないと、勝手に推測し、また、勝手に感心している。

「雨降って地固まる」というのは、当然に、人間関係に関する内容を言っていること技であるが、しかし、それは当然に自然現象でもある。その二つをうまく組み合わせて、見てゆくということになるのではないか。

さてまずは雨ごい。平安時代は気象学や科学などはあまりないので、当然に、経験学上わかっていない内容に関しては、すべて「神の技」ということになる。つまり「日照りが続き干ばつになる」ということは、当然に「神が何らかの形で雨を降らさなかった」ということになり、それを陰陽師が祈って雨を降らせるということにつながるのである。当時は陰陽寮という役所(現代で官僚という僚であって、役所のことを言う)があり、おまじないや祈祷が病気平癒から気象、作付けの豊穣や不作までを司っており、かなり重要な内容であった。これは、実は江戸時代から明治時代の初めまでそうで、宗教に関しては明治維新後憲法発布まで太政官制に戻した時に神祇省という役所が存在して、天皇陛下の公務を最重要として取り仕切っていたのである。要するに、この陰陽師を重視していたのは、1000年の昔の話ではなく、150年位前に普通に考えられていたことだ。

その描写がしっかりとしていて、安倍晴明(ユースケ・サンタマリアさん)の活躍で徐々に雲が沸き、そして雨が降るという描写になる。

そしてこれが、「枕草子」や「藤原宣孝(佐々木蔵之介さん)と女院藤原詮子(吉田羊さん)の死」という豪雨による、藤原道長(柄本佑さん)と一条天皇(塩野瑛久さん)の関係や、まひろ(吉高由里子さん)と娘賢子(福元愛悠さん)の関係が一度崩れてしまうという物語になっている。自然現象の象徴性と、そしてそれを一度崩す藤原道長という感覚だ。

「光る君へ」晴明、一夜にして異変…命がけの雨乞いが凄すぎた

 吉高由里子が紫式部(まひろ)役で主演を務める大河ドラマ「光る君へ」(NHK総合・日曜午後8時~ほか)の4日放送・第30回ではユースケ・サンタマリア演じる安倍晴明に異変が起こり、SNSでは驚きと安堵の声が寄せられている(※一部ネタバレあり)。

 第30回「つながる言の葉」は、まひろの夫・宣孝(佐々木蔵之介)が亡くなってから3年後の設定。干ばつが都を襲い、200年ぶりに帝がみずから雨乞いするほどになったが成果はなく、追い詰められた左大臣・道長(柄本佑)はすでに隠居していた安倍晴明に助けを乞う。晴明は加齢もあり「雨乞いなど体がもちませぬ」と一度は断るも、道長は陰陽寮には力のある者がいないと譲らず、晴明は道長のあるモノを差し出すことを条件に祈祷を引き受けた。

 晴明が「竜神、広く厚く雲を……」と夜通しで祈祷を続けた結果、翌朝には雷鳴がとどろき恵みの雨が。民が歓喜する一方で、それは晴明の命を削るものだったのか、従者の須麻流(DAIKI)が取り乱しながら見つめた目線の先には、一夜にして白髪となった晴明が倒れていた。

 道長との“悪魔の取引き”のような会話が注目を浴びたほか、命がけで雨を降らせた晴明、演じるユースケの鬼気迫る熱演にSNSでは「まじで命がけの雨乞い」「さすがの晴明!」「晴明かっこよすぎんか…………」「何者なんだ」「命削ってるよな…」「雨乞いしてから晴明殿、老け込んだ」「すっかり老け込んでしまわれて」「燃え尽きてる」と圧倒される声が続々。また雨乞いののち場面転換したため、てっきり晴明が燃え尽きて亡くなったものと思う人も多く、「生きていて良かった」と安堵する声も多く見られた。

 のちの場面で道長と会話する際には晴明が明らかに弱った様子で、「闇の中にいる」道長に「お待ちなさい。いずれ必ずや光はさします」と言い、それがいつなのかわからねば心が持たないと弱音を吐く道長に「もたねばそれまで」と突き放しながらも、ある力強い助言を与えた。道長は相当追い詰められているのか「すべてがうまくまわれば私なぞどうでもよいのだが……」とまで漏らしていたが、その晴明の助言は確かに道長を光へと導くこととなる。

 8月11日はパリオリンピック放送のため休止。第31回「月の下で」は18日に放送される。(石川友里恵)

8/4(日) 21:10配信シネマトゥデイ

https://news.yahoo.co.jp/articles/4b99e5008092d11395dc2e67ad540f0b0ce9e263

 さて、まさに冒頭の日照りの部分、それは、まさに女院藤原詮子によって、「日照りの時の土」のように固まっていた人間関係、特に一条天皇と道長の関係が、女院藤原詮子の死によって動き出した。その動きは、道長と源倫子(黒木華さん)にとっては自分の娘である藤原彰子(見上愛さん)と一条天皇の関係が進むように、もっと言えば、この二人の間に後の天皇となるような御子(男の子)が生まれるようにということを考えていた。道長から見れば、女院の重圧に対抗するということが、そのまま道長の娘を遠ざけてしまい、本来は花山院に弓を射かけた藤原伊周(三浦翔平さん)隆家(竜星涼さん)兄弟の妹である皇后定子との関係に逃げているように見えていた。道長からすれば伊周も隆家も、本来ならば死罪になるところを助けたという自負がある。しかし、その恩にこたえるのではなく、伊周は逆に道長を恨むということになっていた。そのことが「雨」をそのまま「道長憎し」の方向に導いてしまう。同じように道長憎しに導くのが、清少納言(ファーストサマーウイカさん)の「枕草子」であろう。これが一つの大雨になり、一条天皇はより一層定子の方に心を傾けてゆく。

同じことは、まひろの親子にもあり、まひろは自分の様に学問で身を立ててもらいたい賢子に対して、父為時(岸谷五朗さん)は甘やかしてばかり、最後には作品に火をかけるような娘になってしまった。これも「賢子の父が死んだ」ということに由来するものであり、自分で稼ぎ出しながら子育てもしなければならないシングルマザーの悲哀が、現在社会の中でも同じ悩みを抱える人々に投影されているのかもしれない。

そして、そのことが、安倍晴明によって言い当てられる。この陰陽師は、正直言って見た目はかなり胡散臭いのであるが、歴史を知っている人からすれば、非常に「歴史の未来を正確に言い当てている人物」ということになる。道長が相談に行った時に「今は暗黒の中、光は今思い浮かべている人」とした。その後仲間との会食でまひろの話題が出て、このまひろを彰子の女房にするということを考え付く。特に、四条家に出入りしているまひろの作品が女性の間で話題になっているという話題は、そのまま、「彰子の周辺の女流文学者で固める」というようなことになる。そこでタイプの違う和泉式部(役名はあかね:泉里香さん)とうまく対立をするということになる。

まさに、この二人の登場が、藤原彰子のこれからの物語、雨降って地固まるにつながり、道長の「満月」になるのではないか。

ある意味で「この世をばわが世とぞ思ふ望月の欠けたることもなしと思へば」という道長を象徴する和歌に、うまくなぞらえて、気象で物語をつないだ手腕は、さすがである。

宇田川源流

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