「宇田川源流」 「昔はよかった」という声が若者から出るようになった中国の衰退
「宇田川源流」 「昔はよかった」という声が若者から出るようになった中国の衰退
中国は滅びるというようなことを、私も本に書いたが、それから10年たってもいまだに滅びるということがしない。しかし、徐々にそのほころびが出ていることは間違いがないという気がする。
中国という国は、まずは政府が中国そのものをすべてをしっかりと統治しているということは全くなく、そのまま、なんとなく上層部を抑えている。そのことから、上層部の独裁が一定以上に圧力が高まり、下層民衆に不満がたまってゆくことになる。その不満は、基本的には強力な軍事力によって押さえつけているが、実際には、その軍事力も実は仮想民衆の集合体ということになる。つまり下層民衆の集合体を作り、そのその集合体の外にいる民衆を押さえつけているということになる。初めのうちは、うまくその構図を見せないようにしているが、最後にはその構図が見え、そしてその時に不満がたまっていると、その内容がいつ爆発してもおかしくないという状態になるのである。そのような時に「国に従っていても死んでしまう」等、何かが変わってしまうと、その時に反乱がおきるということになる。
秦の始皇帝の死後、秦帝国を滅ぼした陳勝呉広の乱も、また後漢末期の黄巾の乱も、いずれも「同じ死ぬならば一矢報いて」というような小ことがあり、その内容がそのまま帝国を揺るがす大規模なモノに代わってくるということになる。このように古代ばかりあげているが、実際に辛亥革命も同じであろう。清帝国末期、そもそも漢民族ではない満州人が作った帝国に対して、漢民族の不満があったが、太平天国の乱など満州人排斥というようなことがあってもそれを弾圧してきた。しかし、清帝国の政治も硬直化しているだけではなく欧米列強が徐々に清国の内に入ってくるようになり、1895年には日本にも敗戦する(日清戦争)というようなことになる。このことから義和団の乱などが行われ、清帝国の信用が失墜する。その帝国の内容が失墜したのちに、各地で革命の火の手が上がったということになるのである。
いずれにせよ「国民の不満」「政治不信」ということが、強くなってくると、中国の民衆は放棄する可能性がある。それが歴史である。
「昔の中国は自由だった」再生15億回、改革開放時代のドラマが人気…社会統制強化で閉塞感広がる
【上海=田村美穂】中国で今年大ヒットした1980~90年代の上海を描いたドラマ「繁花」が、終了から3か月たった今も話題を集めている。習近平(シージンピン)政権による社会統制の強化で閉塞(へいそく)感が広がる中、トウ小平の「改革開放」で経済が急成長した時代を懐かしむ人が多い。
全30話のドラマは、昨年12月から今年1月まで中国中央テレビなどで放送された。中国語の標準語である「普通話」のドラマがほとんどの中で、上海語で作成された点が珍しい。上海出身で、香港映画界の巨匠とされるウォン・カーウァイ氏が監督を務め、上海出身の有名俳優らが演じた。
ドラマはトウ小平が92年に改革開放の加速を促す「南巡講話」を行い、株取引が盛んになった上海から始まる。普通の暮らしを送っていた主人公の青年は知り合いの老人から株取引を学んで成功し、上海の外灘(バンド)を代表する老舗ホテル・和平飯店に拠点を構え、実業家として成り上がっていく。
事件に巻き込まれ、ライバルに事業を脅かされるなどのスリリングな展開が続く。90年代に撮影された映像もはさみ、当時の上海を視聴者に懐古させる工夫が施されている。中国のサイト「猫眼」によると、動画サイトでの再生回数は延べ約15億回となった。
今月下旬、和平飯店から西に約2キロ・メートル離れた飲食店「苔聖園」周辺には、同店がドラマに登場する飲食店のモデルとなったことから、多くの観光客が訪れていた。友人と昼食を食べに来た上海市の主婦(75)は「ドラマは活気があった90年代の上海を思い出させ、親しみを感じた」と話す。
ドラマについて、政府系のドラマ制作協会のSNSは「監督の独特なスタイルと美学が発揮され、90年代を忠実に再現している」と評価した。作品で登場する上海語や緻密(ちみつ)に表現された上海独特の文化も視聴者を魅了していると説明した。
ただ、ドラマの人気は、映像の美しさや単純な懐かしさからだけではないようだ。
「以前のトップは経済を重視し、人々のことを考えてくれた。今は違う」。ドラマで登場する上海名物の豚の唐揚げと餅のセットを販売する店で、約40年の常連客という上海出身の男性(62)は、こう語った。
男性の友人はSNS上で当局の不満を漏らしただけで公安の取り調べを受けたといい、「いまは自由がない。思考が統一され、閉塞感しかない」と漏らす。ドラマは自由だった時代を思い起こさせるという。別の上海出身の自営業男性(66)も「今とは違い、以前は自由で挑戦できる雰囲気があった」と語った。
停滞する経済への不安感に加え、以前と比べて不自由さを感じる社会への不満もドラマの人気の一因となったようだ。
4/30(火) 7読売新聞オンライン
https://news.yahoo.co.jp/articles/c23acefd4273b1ab48bcffee0a635727f96d189a
そのようなことから現代の中国に関して「民衆の不満」がどの様になっているのかということを知らなければならない。様々なところに端緒があり、また、政府はその端緒を消そうと必死になる。何しろその端緒が広まり、不満が共有されれば、当然に反乱が起きる可能性が大きくなるということになるのである。
特に現代の世の中ではインターネットなどの道具による民衆の不満が非常に多く出てくることになる。その民衆の不満や、政府に不都合な真実を消すことが、今の政府の問題になる。
しかし、当然に民衆の方もそのことはよくわかっており、その意味で違う手段を考えるということになるのである。例えば「天安門事件」という言葉はすぐに検索不能になる。人民解放軍が一般の武装していないん民衆を殺したという不都合な真実だからだ。そうすると、この天安門事件が6月4日に起きたということで「六四」というように略される。そしてその後「5月末から四日後」などというような数字などで検索が出てくる。政府もそfれに気づくとすぐにそれをまた削除するという「いたちごっこ」である。
さて、一方でもう少し頭の良い話になると「政府が否定できないような内容で政府批判をする」ということになる。一つ今注目しているのは「ほめ殺し」といわれる方法であろう。この内容に関してはあえて書かないが、そのような内容が様々に出てきていることは事実であろう。そしてもう一つは「過去の偉人や過去の良かった時代を回顧する」ということである。
今回はその事例が一つ記事になっていた。1980~90年代の上海を描いたドラマ「繁花」は、鄧小平の時代を懐かしむということになる。「昔はよかった」というのは、当然に、「今は昔よりも悪くなった」ということを意味している。まさに「昔よりも悪くしたのは、習近平政権である」というメッセージが大きい。何よりも「発展する」「経済がよくなってゆく」という感覚があり、その希望で人々が沸き立っていたがあ、今は経済的には当時よりも裕福かもしれないが、希望もなく閉塞感だけが漂っているということを示唆している。
まさに、今の中国人の不満の表れということになるのではないか。
「以前のトップは経済を重視し、人々のことを考えてくれた。今は違う」。ドラマで登場する上海名物の豚の唐揚げと餅のセットを販売する店で、約40年の常連客という上海出身の男性(62)は、こう語った。<上記より抜粋>
まさに、鄧小平の時代のドラマであるから、政権も否定はできないものの、それを見る人は「今のままではよくない」という共通認識を持つことになる。そのような不満が積み重なると何かが起きるのではないか。それが今の中国であろう。
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