「宇田川源流」 AI出使者を復活させるビジネスは何を生むのか
「宇田川源流」 AI出使者を復活させるビジネスは何を生むのか
AIの発展は、まさに日進月歩である。ジャーナリストや執筆業に関しても、徐々にAIにとってかわられることが恐怖に繋がり、アメリカでは昨年脚本家などによる大規模なデモやストライキが行われている。
基本的に「今までの経験則から、その延長線上の範囲内で何かを生み出したり、分析して物事を判断する」という仕事は基本的には必要が無くなる危機がある。AIの発展によって将来必要が無くなるという仕事は、実は今まで「過去の統計や資料を全て記憶しそれを分析して現在に適用できる能力を持つ仕事」であることが少なくなく、そのことは、基本的に刺客が必要で社会的にある程度ステータスを持った仕事であったり、「クリエイター」と言われて、多くの人々の羨望の的であった仕事が少なくない。医者・弁護士・薬剤師などは、もしかするとAIで十分なのかもしれないし、クリエイターもそれらの仕事が過去の内容をオマージュなどと言っている間にAIの方が優秀な物を作ってしまう。実際に、手塚治虫の漫画をAIが正確に模写して新たな物語を作るなどという作品は、物珍しくニュースになったことがあるし、また、星新一賞のノミネートは人間である必要はなくなってしまっているのである。
さて、その様に「徐々に人間にとって代わってくる」AIが、徐々に「AIによる人間の複製」ができるようなビジネスに使われることになってきている。
今回の内容は中国においてそのような「死んだ人を復活させるというビジネス」について、中国で物議をかもしているということのニュースである。
さて、そもそも「死」ということの意味は何を意味しているのかという哲学的な問題がここに出てくることになる。その死のいみのとらえかたで「AIが使者の代わりをする」ということを考えてみなければならないということになるのではないか。なお、AIは現在のところ「感情を再現する」ということと「気まぐれを再現する」ということはできない。AIはあくまで過去のデータで行うということが行われていることに過ぎないということを留意しながら、見てゆきたい。
「パパ、ママ、会いに来たよ」AIで死者を“復活” 中国で新ビジネスが論争に 「冒とく」か「心の救済」か
世界では今、インプットされたデータから文章や画像などを自動で作り出す「生成AI」の技術が急速に進化しています。こうした中、中国では「生成AI」を使って亡くなった人を「復活」させるビジネスが登場し、論争を呼んでいます。
■死者を“復活” 利用者は「ニーズを満足させてくれる」
「パパ、ママ、会いに来たよ」
中国のネット上にあふれるこれらの動画。実は、すべて生成AIで「復活」した死者たちです。
生前の写真や音声を元に、AIが動画を作成。
「僕はとっても会いたかったよ。元気なの?」
まるで本人がしゃべっているかのような動画ができあがります。AIが学習することで、本人そっくりの口調で会話をすることもできます。
事故で亡くなった叔父を「復活」させ、祖母と毎日、会話ができるようにした男性は「ニーズを満足させてくれるサービスだと思います」と話します。
張沢偉さん(33)は去年、生成AIで死者を復活させるビジネスを始め、これまでにおよそ1000人の「死者を復活」させてきました。
始めたきっかけは、友達から「お父さんを復活させてほしい」と依頼されたことでした。
張沢偉さん
「(AIで『復活』した父を見た)友達はとても感情的になり、涙を流しました。自分たちのやっていることは、人助けになるとわかったんです」
これは、張さん自身を再現した動画。およそ1週間で完成し、費用は4000元(約8万円)からです。事故で亡くなった子どもに、もう一度会いたい。古い写真からおじいさんを復活させてほしい。そんな願いが日々、張さんのもとには寄せられるといいます。
■コービー・ブライアントさんが流ちょうな「中国語」を・・・
一方で、こんな問題も…
「中国のファンのみなさん、こんにちは。コービー・ブライアントです」
2020年に事故で亡くなったアメリカのプロバスケットボール選手、コービー・ブライアントさん。なぜか流ちょうな中国語をしゃべっています。
このように、亡くなった有名人を生成AIで勝手に復活させてしまうケースも相次ぎ、「死者への冒とく」「肖像権の侵害」といった批判があがっているのです。
先ほどの張さんは、悪用されないよう本人や家族の同意をとっているとしたうえで、生成AIの可能性について次のように話します。
生成AIで死者を「復活」 張沢偉さん
「私は今、人々を救っていると感じます。人々に精神的な安らぎをもたらしているのです。私の夢は、普通の人がデジタルの力で『永遠に死なない』ことを実現することです」
急速に進むAI技術がもたらすのは心の救済か、それとも死者への冒とくか。重い問いを投げかけています。
4/18(木) TBS NEWS DIG Powered by JNN
https://news.yahoo.co.jp/articles/4f86413e7329182edd3b7da2d347e7cdc611eb9c
人間は必ず死ぬ。そして「死んだ人は成長しない」ということになる。なお、死んだ後に死後の世界で成長しないのかというような「死後の世界議論」は、あえてここではしないことにする。そこまですると、ちょっと今回の主題から離れてしまうので、あくまでも「現世」における内容だけで物事を判断することにしたい。
さて、では「死者をAIで復活させること」の意味は何か。「その人がいないことで深く傷ついている非音に対して癒しや安らぎを与える」ということは可能であろう。○○ロスということが大きく問題になるということは十分にありうることなのであるが、しかし、ではそれは「あくまでも過去の姿をその場で留めている」だけであって、死んだ人がそのAIの中で成長することはないし、また、その映像でとどまってしまっている人々は、その人もその場で時間が止まってしまうことになり、成長を止める作用が出てきてしまう。
そう言えば、上記に手塚治虫氏を出したが、その代表作の一つの「鉄腕アトム」も、たしか亡くなった子供を復活させたのでアトムという子供の形になっており、同時に、出来立てのアトムは、何もわからずに、徐々に様々なことを勉強するということになっていたはずである。
要するに「死者」は「死ぬことによって他の人々がその人の死を乗り越えることによって成長する」という作用があり、悲しみがあるが一方でその悲しみを乗り越える力と、思い出を頭の中にとどめる形で物事を記録するということになっているのである。
当然にAIが語っている死者の言葉は、死者そのものの過去に基づいているものでしかなく、その内容を承知のうえでAIを利用するのかどうかということが最も大きな内容になってくるということになるのではないだろうか。
上記の例は「家族」と「有名人」ということになるが、では、いま中国で「毛沢東のAIを作り、その毛沢東のAIが習近平の政治を完全否定した」ということを想定すればどのような事件が起きるであろうか。上記の例はバスケットボールの選手であり、その内容があくまでもえんたっめの事であるからよいが、このように政治に関する内容や経済に関する内容であれば、かなり大きな問題になる。旧Twitterの「X」は、Botが多すぎることによ酔ってその規制を行う方策に出ているが、実際に、過去の発言であっても、その発言というものは、その場や環境に従って出ている言葉であって、言葉だけが独り歩きをして成立するものではない。人間である以上、環境に従って正反対の事も言えば、現代では理解しがたい例を挙げることも十分にありうる。それを現代の人の感覚で現代の政治に当てはめた場合には、「現代の宛はまた人の考えで過去の人々の発言の意味を歪めて使うことが可能」ということになってしまうのである。そのようなことが可能になることが、次に大きな事件に発展することは間違いがないのであろう。
このように考えた場合、この「死者の復活」というのは、SNSを使っての影響力を考え、なおかつそのことで「もしかすると日本が中国によって工作される」というようなことも考えると、手放しで「癒しになるから賞賛に値する」とは言えないのではないか。
AIという新たな道具が、道具の域を超えて、人間にとって代わり、それを捜査する一部の人々が勝手に人々の認知を支配するような状況を作り出してよいのか。そのことはしっかりと考える必要があるのではないか。
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