「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 NHKの情熱的な展開と「直秀」の影

「宇田川源流」【大河ドラマ 光る君へ】 NHKの情熱的な展開と「直秀」の影


 毎週水曜日は、大河ドラマ「光る君へ」について、本当に適当なことを書いている。今回は書きたいことがたくさん出てくるくらい大きな物語になったのではないか。そう言ことで、今回はいつもの能書きはやめてさっそく。

今回書かれたのは「月夜の陰謀」とあるが、歴史的には「寛和の変」と言われる花山天皇(本郷奏太さん)交代劇である。

寛和元年7月18日(985年8月7日)、寵愛していた女御・藤原よし子(よし=りっしんべんに氏・井上咲楽さん)の急死とともに出家を考えるようになった。『栄花物語』『大鏡』などは寵愛した女御藤原よし子が妊娠中に死亡した。そのことでショックを受けた天皇は、僧・厳久の説教を聞いているうちに「出家してよし子の供養をしたい」と言い始めた。花山天皇は花山天皇の外叔父藤原義懐(高橋光臣さん)と乳母子藤原惟成(吉田亮さん)が実権を握っており、荘園整理令の発布、貨幣流通の活性化、武装禁止令、物価統制令、地方の行政改革など革新的な政治を行った。しかし、これ等の改革は関白の藤原頼忠や右大臣の藤原兼家と確執ができることになる。この事から藤原兼家は、自分の孫にあたる一条天皇を即位させるために、花山天皇を対させる必要が出てきた。

そのことから、寛和2年6月23日(西暦986年7月31日)、花山天皇は、蔵人にいた藤原兼家の息子藤原道兼の進めに従い、深夜、内裏を出て山科の元慶寺に向かった。このとき邪魔が入らぬように鴨川の堤から警護したのは兼家の命を受けた清和源氏の源満仲とその郎党たちである。天皇は「月が明るく出家するのが恥ずかしい」と言って出発を躊躇うが、その時に雲が月を隠し、天皇は「やはり今日出家する運命であったのだ」と自身を諭した。しかし内裏を出る直前に、かつて妻から貰った手紙が自室に残ったままであることを思いだし、取りに帰ろうとするが、出家を急いで極秘に行いたかった道兼が嘘泣きをし、結局そのまま天皇は内裏から出た。一行が陰陽師の安倍晴明の屋敷の前を通ったとき、中から「帝が退位なさるとの天変があった。もうすでに…式神一人、内裏へ参れ」という声が聞こえ、目に見えないものが晴明の家の戸を開けて出てきて「たったいま当の天皇が家の前を通り過ぎていきました」と答えたと伝わる。天皇一行が寺へ向かったのを見届けた兼家は、子の藤原道隆や藤原道綱らに命じ三種の神器を皇太子の居所であった凝華舎に移したのち、内裏諸門を封鎖した。

今回はこの前後の話である。

月岡芳年「花山寺の月」(明治23年)

元慶寺へ着き、天皇が落飾したのを見届けたのち、道兼は親の兼家に事情を説明してくるという理由で寺を抜け出し、そのまま逃げて出家はせず、ここで天皇は欺かれたことを知った。内裏から行方不明になった天皇を捜し回った義懐と惟成は元慶寺で天皇を見つけ、そこで政治的な敗北を知り、共々に出家した。

【光る君へ】「まひろ」吉高由里子と「道長」柄本佑、初キスから一気の情熱展開に「NHK、攻め過ぎ」の声

 女優・吉高由里子主演のNHK大河ドラマ「光る君へ」(日曜・後8時)の第10話「月夜の陰謀」が10日、放送された。

 今回、兼家(段田安則)が道長(柄本佑)たち一族を巻き込んで、秘密裏に花山天皇(本郷奏多)を退位させ、孫の懐仁親王(高木波瑠)を擁立する計画を進め始める。

 その頃、まひろ(吉高由里子)は家に帰ってこない為時(岸谷五朗)を案じ、妾の家を訪ねてみる。

 そこには身寄りもなく最期を迎えようとしている妾の看病をする為時の姿があった。帰宅したまひろのもとに道長からの恋文が届く。まひろは道長への文をしたため始めるが…というストーリーだった。

 (以下、ネタバレがあります。ご注意下さい)

 今回、まひろへの思いが募った道長は「そなたが恋しくて死にそうだ。会えるなら命など惜しくはない」、「一目会いたい」などの情熱的な和歌を次々と届けるも、まひろは冷静な漢詩で返し続ける。

 このやり取りにネットも沸騰。「熱烈恋文もらいたい!」、「道長、情熱的」、「道長のラブがすごい!」などの声が。

 物語中盤には「我もまた君とあいまみえんと欲す」との情熱的な和歌を受け取った、まひろが廃屋に駆けつけ、道長との逢瀬が実現。道長が後ろから抱きつき「まひろ、会いたかった」とつぶやくや、熱いキスをかわす2人。約5秒のキスシーンに「ギャー、NHKにあるまじきシーン」、「バックハグからのいきなりキス、しびれる~」、「道長、情熱的過ぎる」の声が上がった。

 しかし、「一緒に都を出よう。海の見える遠くの国へ行こう。俺たちが寄り添って生きるには、それしかない。藤原を捨てる。おまえの母の仇である男の弟であることもやめる。だから、一緒に来てくれ」と“駆け落ち”を口にする道長に対し、まひろは「うれしゅうございます。前よりずっと、ずっと好きになった」と口にしながらも「あなたが偉くならなければ、直秀のような無残な死に方をする人は絶えない。世の中を変えるために偉くなって。一緒に遠くの国には行けないけど、死ぬまで愛おしい道長様を見つめ続けます」と同行を拒否する。

 そして、月が見つめる中、2人が尽きない思いのもと体を重ねる場面も描かれた。

 これには「まひろと道長、なんて美しい2人」、「ドキドキが止まらない」の称賛の声の一方、大河ドラマでは珍しいストレートな“濡れ場”に「エロかったなあ~」、「NHK、攻め過ぎでは?」、「マジでこのシーン、大河なの? 大丈夫なの?」、「今日は家族で見れない回」などの声も集まった。

 体を重ねた後、涙を流したまひろに「振ったのはおまえだぞ」と道長。「人は幸せでも泣くし、悲しくても泣くのよ。幸せで悲しい」と言う、まひろに道長が「これで会えなくなるのは嫌だ」と言うシーンで“美し過ぎる逢瀬シーン”は幕を閉じた。

 主人公2人の互いへの思いがクライマックスを迎えた今回の放送中にはX(旧ツイッター)のトレンドワードで「#光る君へ」が1位に急浮上した。

 大河ドラマ63作目となる同作。吉高は2014年に連続テレビ小説「花子とアン」のヒロインを演じており、朝ドラと大河の両作品の主演は4人目になる。

 脚本は2006年の大河ドラマ「功名が辻」やドラマ「セカンドバージン」「大恋愛~僕を忘れる君と」「星降る夜に」などを手掛けた大石静氏が担当。大河の中でも数少ない平安時代を舞台に、世界最古の女流作家とも呼ばれる紫式部/まひろ(吉高)の生涯を描く。音楽は冬野ユミ氏、語りはNHKの伊東敏恵アナウンサーが務める。

2024年3月10日 20時45分スポーツ報知

https://hochi.news/articles/20240310-OHT1T51235.html?page=1

 この寛和の変は、以上に面白く書かれていた。藤原兼家(段田安則さん)の陰謀という形や藤原兼道(玉置玲央さん)の感情のない花山天皇のだまし方など、脚本もさることながらそれぞれの役者の皆さんの演技が非常に良かったのではなあいか。そのうえ、歴史には残らないことと思うが、三男(道綱を入れれば四男になるが)の藤原道長(柄本佑さん)に対して「この内容が露見したら、父の陰謀として訴えろ」というようなことを言い、藤原兼家が、家の存続ということを考えて役割分担をさせていたことまで全てうまく書かれている。このような陰謀は一切文書には残っていないので、当然に作者の大石静さんの創作であることはわかるが、しかし、「当然にそうあったであろう」というような「当時の人の考え方」に沿った書き方に、本当にそのようにあったのではないかというような物語になっている。

そして、その兼家の言葉に恐ろしさを感じた道長が、「権力争いの中枢」ということに嫌気がさして、脱出しようとするのである。私自身も政治ジャーナリストの世界にいたので、政治の中の中枢にある腹黒さや、本音と建前、そして権力に対する欲望と、本当に人間の嫌なところをすべて見ることができるのであり、はっきり言って嫌気がさす。多分、あのままジャーナリストを続けることも出来たと思うが、私自身も道長と一緒で政争の中枢というのは、あまり性に合わないし、好きではない。だから、この道長の行動は何か個人的には自分の気持ちに正直に生きたことでよくわかる。

その時に相手に選んだのが「まひろ(吉高由里子さん)」であったということになる。幼いころから知り合いで恋焦がれていた女性であり、なおかつ、父親同士が関係があるということになる。お互いに身分に差があり、道長が身分を捨てる以外には結ばれなということであり、そのことを道長が告白するのである。

ここからの描写は、私が描くと「土曜日のエロ」になってしまうので、上記の記事をそのまま引用しよう。

<道長が後ろから抱きつき「まひろ、会いたかった」とつぶやくや、熱いキスをかわす2人。約5秒のキスシーン><そして、月が見つめる中、2人が尽きない思いのもと体を重ねる場面も描かれた。これには「まひろと道長、なんて美しい2人」、「ドキドキが止まらない」の称賛の声の一方、大河ドラマでは珍しいストレートな“濡れ場”><上記より抜粋>

まあ、はっきり言ってしまって、私は吉高由里子さんというのは非常に男好きのする顔立ちであると思っているので、NHKなのにたしかにかなり踏み込んだ表現をした。しかし、そのような事よりもこの描写だ。

「人は幸せでも泣くし、悲しくても泣くのよ。幸せで悲しい」と言う、まひろに道長が「これで会えなくなるのは嫌だ」と言うシーンで“美し過ぎる逢瀬シーン”は幕を閉じた。<上記より抜粋>

まさに、この物語の中で、この逢瀬のシーンがなければ、多分道長が何故一生まひろの面倒を見続けたのか、まひろは、なぜ自分の父と同じような年齢の男性と結婚し、それ以降独身を貫いたのか。

そしてこのシーンの前に父為時(岸谷五朗さん)の妾である高倉の女が、病気で食事をするのも難しいというようなことになり、その援助を申し出るまひろの姿などが伏線にあり、そして、何よりも直秀の死が、「自分の幸せではなく、そのような不幸な人を助けるために、政治をしっかりとしなければならない」というような話になっていったのではないか。その「まひろの心の整理」のための「最愛の男性との逢瀬」という意味合いが、この中に表れている。

平和の時代が長いと、官能小説が出てくる。ある意味で「子孫繁栄」という意味ではない「心が求める」逢瀬が出てくる。戦乱の時代にはそのような余裕がないが、平和が長いと女性が感じるような「心のための逢瀬」が表現できるようになるからだ。平和が長かった平安時代の「日本初の官能小説」がある意味で「源氏物語」であろう。それは官能を煽るというのではなく、その相手を求める心を表現するということになる。そしてそのような経験をしたことが、紫式部が源氏物語を書いたという「伏線」がここにあるのではないか。このようなところが「光源氏」と「藤原道長」が重なる紫式部の心ということになるのである。

宇田川源流

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