「宇田川源流」 ノーエル平和賞で問われる「平和」の価値観の共有

「宇田川源流」 ノーエル平和賞で問われる「平和」の価値観の共有

 先月9月のオンラインサロン「陰謀渦巻く世界情勢の中であなたが生き残る方法」(https://lounge.dmm.com/detail/2838/)では、日本の「平和教育」について一緒に学んできました。その中で「平和」という概念は「戦いがないこと」なのですが、しかし、その平和が「戦いの種」になってしまう可能性があるということが学べたと思います。詳しくはオンラインサロンで読んでいただきたいのですが、しっかりと読んでいただければそもそも平和というのは「戦いがないこと」という定義そのものがおかしいということに気づく人は少なくないのではないかと思います。これ以上はオンラインサロンに譲ることにしましょう。

さて、そのオンラインサロンが終わったばかりであるのに、その「平和」に関する問題が出てきたという感じになります。単純に「平和のための闘争」という言葉は自己矛盾なのかどうかということがあげられるということになります。では何と戦ったのか。そこが大きな問題なのではないでしょうか。

今までのノーベル平和賞というのは、少なくとも昔は日本の佐藤栄作をはじめ「争いを終わらせた人」に対して贈られていた。それは創設者のノーベルは遺言で、平和賞を「国家間の友好関係、軍備の削減・廃止、及び平和会議の開催・推進のために最大・最善の貢献をした人物・団体」に授与すべしとしていたことに由来する。

1901年の国際赤十字の創設者であるアンリ・デュナン、国際平和会議の創設者であるフレデリック・パシーなどに関しては異論はないのではないか。しかし、2020年のニューヨークタイムズでは、過去30年、つまり1990年以降の平和亜賞の受賞者の中で、後から考えると欠陥があったり、効果のないものと判明したりした6人の「疑わしい」受賞者として、エチオピアのアビィ・アハメド首相(2019年受賞)、ミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問(1991年受賞)、イスラエルのシモン・ペレス元首相、同イツハク・ラビン元首相、パレスチナ解放機構のヤーセル・アラファト議長(1994年受賞)、韓国の金大中・元大統領(2000年受賞)、アメリカ合衆国のバラク・オバマ元大統領(2009年受賞)の名を挙げている。

このように政治的な観点から「どちらかを応援してしまった」とか、または「まだ終わっていない紛争に対して姿勢だけで平和賞を授与してしまった」ような例は少なくない。

平和賞にモハンマディさん

 【オスロ=蒔田一彦】ノルウェーのノーベル賞委員会は6日、2023年のノーベル平和賞をイラン人ジャーナリストで人権活動家のナルゲス・モハンマディ氏(51)に授与すると発表した。何度も逮捕・投獄されながら、一貫して女性の人権尊重や死刑制度の廃止を訴えたことが評価された。現在も首都テヘランの刑務所に収監されている。

 イランでは昨年、女性の髪を隠すスカーフ「ヘジャブ」のかぶり方が不適切として警察に逮捕された女性が死亡したことをきっかけに大規模な抗議デモが起きた。ノーベル賞委員会のベリット・ライスアンデシェン委員長はオスロで開いた記者会見で「今年の平和賞は、女性を差別し、抑圧する独裁政権の政策に反対して昨年デモを行った数十万人の人々を評価するものでもある」と強調した。

イラン人の平和賞受賞は、03年の弁護士シリン・エバディ氏に続き2人目となる。モハンマディ氏は、エバディ氏が設立した民間活動団体(NGO)「人権擁護センター」の副代表も務める。

 ライスアンデシェン委員長は「イランの女性に対する抑圧に反対し、全ての人の人権と自由を促進するために闘っている」と授賞理由を説明した。

 イラン北西部のザンジャン州出身。学生時代から女性・人権問題に取り組み、学生の権利や社会正義に関する記事を書いて2度逮捕された。専攻は物理学で、卒業後はエンジニア関連の職に就いたが、改革派の雑誌などに記事も書いた。

 女性向け雑誌記者となった後も政府批判の記事が問題視された。ライスアンデシェン委員長が「彼女の勇敢な闘いは多大な個人的犠牲を伴ってきた」と指摘した通り、1998年以降は逮捕と投獄の繰り返しで、刑期は累計31年に及ぶ。

 ノーベル賞委員会によると、平和賞が女性に贈られるのはモハンマディ氏が19人目。獄中の人に対する授賞は、ミャンマーの民主活動家アウン・サン・スー・チー氏(1991年)や、中国の民主活動家の劉暁波(リウシャオボー)氏(2010年)ら過去に4人いた。

2023年10月06日 18時15分読売新聞

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12213-2592414/

ノーベル平和賞にイラン反発

 【イスタンブール時事】イラン外務省のカナニ報道官は6日、同国で収監中の女性人権活動家ナルゲス・モハンマディ氏のノーベル平和賞受賞が決まったことについて「政治的な行動だ」と反発し、授与を決定したノルウェー・ノーベル賞委員会を強く非難した。

 カナニ氏は声明で、モハンマディ氏は「法律違反、犯罪行為を繰り返した人物」であり、女性の人権保護活動を評価されての受賞は「偏見に基づく」と指摘。ノーベル委の判断を「一部の欧州政府による介入主義、反イラン政策に沿うもの」と断じた。

 イランでは昨年9月、頭部を覆うスカーフの「不適切な着用」を理由に警察に拘束された女性が不審死を遂げた事件を受けて大規模な抗議行動が発生。度重なるデモに対する当局の強硬対応で、500人を超える死者が出たとみられている。モハンマディ氏は獄中から「当局による弾圧」を糾弾する発信を続け、これが今回の受賞につながった。 【時事通信社】

2023年10月07日 09時39分時事通信

https://news.nifty.com/article/world/worldall/12145-2593143/

 まずは、大前提として「ノーベル平和賞の受賞が新たな戦争や争いのきっかけとなってはならない」ということがある。これは大原則で「誰かが受賞することでほかの人が納得できないというような受賞はよくない」ということがありもう一つは「紛争中のどちらかの陣営に属している人物を受賞させてはならない」ということである。そのようにしなければ、もしもその時に争いが終わっていたとしても、実際にそこに「次の争いの種」である「妬み」が出てきてしまい、そのことから、新たな戦争が起きてしまう。つまり、「平和が実現しない状態が出てきてしまう」ということになるのである。

例えば2010年の中国の民主派運動のリーダー的存在である劉暁波に関して、「中国の基本的人権確立のための長期にわたる非暴力的の闘いを継続した」という理由が付された。しかし、それから13年たった現在オ中国の民主化は行われていないし、また、中国政府は、ノーベル賞が目標とする「国際友好、軍縮、平和会議」を劉は促進しなかったと主張した。このことによって中国と民主化の対立は一層激化し、例えば香港の民主派の革命などは逆に弾圧される結果になり、また、台湾に関しても大きな危機に瀕している。しかし、中国共産党政府は全くそことは関係なく、中国の団体は、ノーベル平和賞に対抗して「孔子平和賞」を創設し、同年のノーベル平和賞授賞式の前日に第1回の受賞者発表と授賞式を行っている。

このように平和賞の受賞がかえって平和をなくしてしまっているということがあるのではないか。

同様のことが2014年のパキスタンの女性人権活動家であるマララ・ユスフザイの受賞についてあり、人権活動といってもそもそも学校に通っていて襲撃されただけでありまた、そのように学校に通っているイスラム教の女性は少なくない状態であるのになぜマララさんだけが受賞するのかというような意見も出てくる。そして、イスラム教による女性への締め付けは大きくなり、そのことで2022年のイランの女性でもにつながってくるのではないか。

そして、

その問題はイスラム教という「平和」と「信教の問題」があり、その信教の自由という人権があるにもかかわらず、その戒律を否定する内容を「平和賞」として選出している。つまり、ノーベル平和賞がイスラム教の戒律そのものを「人権」という名のもとに否定したというような形になるのではないかそれはある意味で「宗教対立」そして「宗教戦争」を起こしかねない状態であり、とても平和な状況にはならないということになる。

まさに「平和賞」が政治的な意味を考えられない状態になる。そもそも「平和賞」は、ノーベル賞に限らず「平和」ということの意味をしっかりとわかっているのであろうか。平和そのものは、「そこの中に誰の不満もないユートピア論のような平和はあり得ない」という前提を考えなければならず、そのためには「結果」に対してのみ、つまり「継続中の内容」には受賞させることがかえって問題を起こす結果になる。そして平和賞が平和を当座けてしまう結果になるのではないか。

もう一度、日本人もすべて含めて「平和」をかんがえるきっかけとなればよいのであるが。

宇田川源流

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