「宇田川源流」【宇田川教育論】 国家試験合格率を優先した大学が合格できない人を退学させる?

「宇田川源流」【宇田川教育論】 国家試験合格率を優先した大学が合格できない人を退学させる?

 この記事を読んでいると、「本当の合格率が高いところはどこなのか」ということになる。そもそも統計の出し方がおかしくて「入学者」から「合格者」を出して割合を出せばよいのあって「受験者」から出すからこのようになる。基本的に「合格率を高く出そうとする仕組み」があるので、このような悲劇が出てくることになるのだ。

そもそもこのようなことがあれば「学校側」は「マスコミが悪い」ということを主張する。たしかに、それでも問題はないということになる話をなぜかことさらに大きく書き立てるのは、マスコミが悪いのかもしれない。

しかし、「マスコミさえ書かなければ問題はなかった」というのは間違いであり、そもそも「留年させられた本人」は学校を恨んでいるのであり、またその家族は何年間か学費を多く払わされている。その問題は全く解決していない。

そしてこのように書くと、「本人が勉強しないのが悪い」ということを言い始める。しかし、一方で学生側の言い分としては、「わかるように教えてくれない」「研究ばかりしていて国家試験のことがわからない」など様々な話になってしまい、責任のなすり合いになっているのではないか。

そのように考えれば、双方ともん「人間性」特に大学側が「自分の合格率という内容だけで、他人(学生)の一生を左右させている」ということが問題なのではないか。

そもそも、「合格率」で大学を判断すること自体がおかしい。いや、高確率で判断するのはおかしな話ではないが、しかし、では「合格しなかった人は、人間として価値がいないのか」と言えば、そうではないのである。合格しなかった人、受けることができなかった人の一生をしっかりと考えた対応はできているのであろうか。


半数近くが卒業できず…大学歯学部の大量留年なぜ? 国家試験の合格率巡る「暗黙ルール」とは<ニュースあなた発>

 日本大学松戸歯学部(千葉県松戸市)の関係者から「卒業試験に合格できず、6年生の半分近くが留年になった」と、本紙「ニュースあなた発」に情報が寄せられた。卒業試験に受からなければ、歯科医師の国家試験(国試)を受験できない。大量留年のワケを探ると、歯学部の抱える悩ましい事情が見えてきた。(鈴木みのり、中沢誠)

◆合格率が評価に直結「生き残りのため」

 日大松戸によると、今春卒業予定だった6年生122人のうち、留年は56人に上ったという。29人だった昨春の倍近く。過去8年間でも留年が50人を超えたことはない。

 「学部の生き残りのためだ」。大学関係者によると、大量留年について大学側は、こう説明したという。

 この関係者は「国試の合格率を上げようと卒業判定を厳しくしたからでは」と勘繰る。というのも昨春の国試で、日大松戸の新卒合格率が、全国の歯学部の中で下から2番目の55.6%に急落していたからだ。

 「学生は1%でも合格率の高い大学に入りたいし、各大学も進学説明会で強調するのは合格率」(大学関係者)と言うほど、歯学部にとって国試の新卒合格率は大学の評価に直結する。

◆半分留年の結果、合格率24.2ポイント増

 昨春の合格率55%に、日大松戸の谷龍樹事務局長も「入学志願者が減らないか危惧していた」と明かす。

 結果的に、6年生の半分近くが受験できなかった今春、新卒合格率は74.2%にまで回復した。

 大学側は「合格率を上げるために卒業判定の基準を変えたことはない」と反論。留年の増加は、「特別再試験」という卒業試験の追試を実施しなかった影響だと推測している。

 追試に受かっても国試は受験できないが、卒業は認められる。昨春は追試で15人が留年を免れていた。追試を取りやめたのは、新型コロナによる学業への影響が薄れたことや留年を免れた学生が国試に合格しづらいからだという。

 留年する学生にすれば、経済的負担はつらい。ある学生は「追試を受けて卒業し、予備校に通ったほうが学費は安くすむのに」とこぼす。日大松戸の学費は年間400万円を超える。日大松戸によると、今回留年となった学生の中には、学費が払えず退学したものもいるという。

◆助成金減らされたくない 合格できる学生「絞り込み」

 日大松戸に限らず、歯学部の留年の多さは際立つ。特に顕著なのは私大だ。

 3年前の文部科学省の調査で、全国29の歯学部のうち11が「留年生が多くなっている」と回答。最近では全国の6年生のうち3分の1が留年・休学者で、私大では半分以上を占める大学も散見される。

 既卒も含めた国試全体の合格率は、90%前後から今や60%台にまで落ち込んでいる。私大の場合、新卒合格率が70%に満たないと、助成金の一部が交付されない。日本歯科医師会の柳川忠広副会長は「合格率を下げたくない大学の思惑が、留年の多さにつながっている」と解説する。

 国試対策の予備校関係者によると、秋にある国試の模擬試験で、各大学は何人ぐらい合格できそうか感触をつかむという。「模試の結果から逆算し、合格率が70%ほどになるよう卒業試験で国試の受験生を絞り込むのが、暗黙のルールとなっている」と明かす。

 ただし、留年生が増えるのも大学は嫌がる。国試に受かりにくい学生を抱えることになるからだ。そのため留年を繰り返すと強制退学させる大学も多い。

 文科省は「合格率の低迷や留年の多さは、歯科医師の質の低下を招きかねない」と危機感を抱く。文科省は過去3年間で2年以上、新卒合格率が全国平均未満だった大学には、入学定員の見直しを促している。昨春は29大学のうち9大学が指摘された。

 大学側は、受験生の評判だけでなく、定員削減を迫る文科省の圧力からも合格率を意識せざるを得ない。歯学教育に関する文科省の有識者会議元委員の山口育子氏は「定員削減は収入に響くので大学としては避けたい。合格見込みのない学生を受験させないようにして、合格率を高く見せているのが現状だ」と話す。

2023年4月22日 06時00分 東京新聞


 そもそも、現在の国家試験というのは、そのほとんどが「記憶」だけの問題になってしまっている。つまり、「暗記をして、その暗記通りに選択肢から正解を見つければよい」というような試験になっている。しかし、この試験方法が「暗記バカ」を作り出してしまっていて、未知の問題や、新しい分野での発明などを妨げてしまっているということになる。

歴史的に言えば、「科挙」という、膨大な記憶分野の内容を過去には試験をしていたわけで、その受験の内容を模範としているのであるから仕方がないのかもしれないが、しかし、現代になったのであれば、もう少しやりようはあろう。

そもそも科挙制度そのものが不満であり、それで合格することができなかった朱元璋が、元という帝国を滅ぼしてしまったのであるから、科挙試験による記憶力というのは、科挙試験に落ちた朱元璋一人に劣るということになる。

イギリスのオックスフォード大学において、日本の東京大学を出たエリートの官僚が学んでいた。その官僚は論文試験の時に「解答」を探してて図書館に二週間も籠り、結局論文を出すことができなかったという。

この朱元璋と日本の官僚、いずれも「記憶」というのは「正解があるから記憶することができる」のであって、社会に出てからの問題というのは、「正解のない問題の方が多い」のである。その「正解」のない問題に、記憶に頼る人々はついてくることができない。

科挙試験というのは、論語などを暗記する試験である。論語などは「人の道」を、つまり「上司に対して忠誠を誓う事を是とする」世の中の道を説いている。しかし、そのようなときに、社会全体が腐敗して、「忠誠を誓う人がいなくなった」場合というのは想定されていない。

そのことから朱元璋による反乱を防ぐことができなかったということになる。完了の方はもっと直接的で、「解答がない問題の解答を探して、結局論文そのものも出せない」ということになる。

いずれも「回答のない問題に対処できなくなり、本来の目的、元であれば国家を維持すること、官僚の話であれば、論文を出して単位をもらうことという、大目的も失ってしまう」ということになる。それが今の日本の教育なのである。

そもそも「大学」と言えども、最高学府であって、「国家試験の予備校」ではない。合格率を示すよりも、「合格した後の人間性」を計って、人間としての教育ができているかどうかを見るべきではないのか。国家試験合格後の事件の発生率などを大学別に出した方がよほど役人立つのではないか。

このように「そもそも教育とは何か」ということを忘れてしまうと、今回のような事件になる。そのことをよく考えておくべきではないか。

宇田川源流

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