「宇田川源流」【日本万歳】 150年以上たって井伊直弼の名誉回復条例ができる日本文化

「宇田川源流」【日本万歳】 150年以上たって井伊直弼の名誉回復条例ができる日本文化


 毎週月曜日は「日本万歳!」をお届けしている。日本の素晴らしいところや日本が世界で活躍している姿をご紹介し、その内容をこの中で分析し、そして日本の文化のすばらしさや、日本の生活慣習、日本の国民性の素晴らしい所を感じようという連載である。そのうえで、我々日本人一人一人が同じような気質を持ち、そしてその日本人としての誇りをもって仕事をしていただきたいと思っているのである。

さて、日本文化のすばらしさに関して言えば、日本の場合歴史が深くそのためにどんな地域であっても「地元の自慢の英雄」がいるということである。そしてその人々は、必ず地元に愛され、いくつかの伝説を持っているという特徴がある。そして、それらの特性は、他の地域に人が英雄ではないと思っていても、また何も感じない状態であっても、その地域だけは「熱狂的に」その状況になっているのである。

私が小説に書いた「山田方谷」などもそうである。岡山県の一部、岡山市と高梁市辺りでは、かなり熱狂的な「山田方谷ファン」がいる。しかし、一般的に他の地域において「山田方谷」などと言っても、全く誰の事だかわからないといった形で、ほとんど無名であるといって過言ではなかった。しかし、その「ほとんど無名」が、その二つの地域に行けば「多くの人がしっている」という感じなのである。そして尊敬していて、小学校や中学校でその上席を習ったり、英会話の題材になっていたりするのである。

京都や愛知県の名古屋辺りになると、「英雄」が多すぎて、誰が素晴らしいのか全く分からない状態になってしまっている。しかし、その他の地域では、だいたいの場合誰か一人か二人があって、その人々の英雄度が高くなっているのである。上記に挙げた山田方谷もそうであるし、また、京都の亀岡における明智光秀、千葉県大多喜市の本多忠勝など、そのようなことを言う人は少なくない。

さて、これ等の人々の心理こそ、日本人の特性をしっかりと持っている内容ではないか。

井伊直弼の名誉回復条例成立

 幕末の大老で彦根藩主の井伊直弼(なおすけ)(1815~60年)の功績を見つめ直す条例案が24日、滋賀県の彦根市議会で全会一致で可決、成立した。志士を弾圧した負のイメージで語られることの多い直弼だが、実は江戸期を代表する茶人で「一期一会」を世に示した人物。彦根市では条例を通じ、茶の湯文化の継承や普及に努めていく。

 「井伊直弼公の功績を尊び茶の湯・一期一会の文化を広める条例」で、4月1日に施行される。

 直弼は幼少期から茶の湯に親しみ、青年期には千利休ら多くの先人の思想を学んだ。大老就任前の1857年(安政4年)には「茶湯一会集(ちゃのゆいちえしゅう)」を著し、「出会いは一生に一度限り。だからこそ誠心誠意向き合うことが大切」という利休の教えを初めて「一期一会」の4文字で世に示した。

 だが「安政の大獄」で尊王攘夷派の志士らを弾圧し、1860年(安政7年)に桜田門外の変で暗殺され、茶人としての功績はいつしか忘れ去られた。

 このため茶道関係者や市民らが2021年、「直弼公の不運を断ち切り、彦根から茶の湯の精神を世界に発信したい」と請願書を市議会に提出し、市が条例案を作成するに至った。今回の条例は「理念型」と呼ばれ、義務や罰則はない。茶の湯文化の普及を目指す条例では堺市、松江市に続き全国で3市目となる。

 条例に詳しい関東学院大の出石稔教授(地域政策論)は「名誉回復条例は聞いたことがない」とし、「掛け声倒れでは意味がない。予算をつけて施策を実行し、効果を検証することが重要だ」と指摘する。

 請願に動いた茶道家の川嶌順次郎さん(87)は「市民ぐるみで直弼公の生き方を学び、一期一会の精神でもてなす文化を醸成したい」と語る。(西堂路綾子)

2023年03月25日 17時14分読売新聞

https://news.nifty.com/article/domestic/society/12213-2248651/

 井伊直弼は、歴史に興味のない人は少なくないのでその意味ではあまり知らないとか、何をした人がわからないということもあるのかもしれないが、しかし、一応は、小学校の教科書でも出てくるような人である。ちなみに、NHKの大河ドラマの第一回「花の生涯」(1963年放映)は、井伊直弼の物語であるから、大河ドラマファンはなんとなく知っているかもしれない。

その井伊直弼のイメージであるが、基本的には「安政の大獄」を行って弾圧した政治家というようなイメージがある。ついでに言えば、幕末で人気があり、明治政府の礎を作った人々の『師』と仰がれている吉田松陰もこの時に処刑された人物であり、この事から、明治維新が遅れたとか、日本の近代化が遅れたというようなことが言われている。つまり井伊直弼が弾圧した政治を行い、なおかつ、吉田松陰などの開明派を処刑し、そのことによって日本の近代化を遅らせた張本人であるということになる。ついでに言えば、日本の少なくとも戦後のドラマにおいては、間違いなく幕末の志士を中心に書かれている者が少なくなく、同時に、明治政府以降、天皇に近しい人を優秀であったり、あるいは素晴らしい人物とする風潮があることから、まさに、「ヒール役」として書かれているのである。

しかし、日本人のすばらしさというのは、そのような人物でも当然に「地域の人々の研究が進み、見直しがされる」ということである。アメリカやロシアのように「突然銅像が倒される」というようなことはなく、「人間には良いところもあれば悪いところもある」というような感覚があり、「一つの特性があって、その特性が悪い方にも良い方にもある」「人を害する力があれば、人を助ける力がある」というような考え方になる。このような考え方は「一元論」と言われ、何事も一つの物事から発生するというような感覚で物事が考えられているということになるのである。

これに対してアメリカやロシアなどキリスト教やイスラム教は「天国と地獄」「天使と悪魔」のように、基本的には「二元論」であって、悪い人は永久に悪く、善い人は常に良いというようなことになっているのである。全く何かが循環するというのではなくそのような全てが二元になっており、そのことから、終末思想的に「救われるか救われないか」というような選択を迫られることになrのである。

さて、「ヒール役」出会った井伊直弼も、徐々に見直されている。その見直しの一環が大河ドラマの第一回ということになるのかもしれない。しかし、それが「地域の条例」となると、世界的にも珍しい。バレンタインのように、その習慣が残っていたり儀式になったりということは少なくなく存在するが、その内容が一つの法律になっているということはないのではないか。

このような法律ができるのは「善悪二元論」出は絶対に不可能であり、一元論であり、日本人であるからできるということではないかと考えられるのである。まさに日本人の「人を見る目」というのが全てこのようになっているということが見えてくるのではないか。日本人だから、「やり直し」も「見直し」もあるし、また失敗を恐れずに活躍することができる。それが日本の発展につながっているのではないか。そのように考えるのである。

宇田川源流

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